なぜインプラントは骨につくのか? ~創傷治癒について~

傷が治るのと同じ仕組みを利用

生体というものは組織の連続性より成り立っています。その連続性が途切れると病態が発生します。しかし、インプラントは完全に異物ですし、有機体でもありません。ましてや治療を受ける人と遺伝子的に同じであることもありません。つまり、インプラントは積極的に生体の連続性を断裂させてゆくことを行う治療です。なぜこのような状況でインプラントが成立するのかはインプラント-組織界面の状況が重要になってきます。インプラント-組織界面は傷(正確には手術によって意図的に形成したインプラント用の穴)が治癒してゆく過程で生じる生体細胞組織との反応の結果生じます。この際に重要になってくる治癒機転というものは

1,生活反応期
2,創内浄化期
3,修復期
4,再構築期

という経過を辿ります。この流れをいかにスムーズに行わせることが出来るかというところがインプラント治療において非常に重要になってきます。反対に、インプラントは生体に対して非自己でありますので、生体の連続性は断裂しています。このことは、外部との交通があるということを意味していますので、常に炎症のリスクを抱えているともいえます。

インプラントの治癒

生活反応期

インプラントを埋入する際に、骨にドリルを使って穴を開ける作業をします。この時に出来上がる穴のことを骨窩洞といいます。この骨窩洞を形成しますと、それは骨にとっては傷(創傷)と同一のものですから、まもなく創傷治癒の反応が生じます。この反応はまず、出血が生じ窩洞内に血液が充満します。それと同時に細胞成分、フィブリノーゲンなどの血漿成分が滲出します。数分の後、血液が固まってきて血餅が作られてきます。この時期には毛細血管の拡張・透過性亢進・新生血管の増殖・限局性の浮腫がみられるようになります。

窩洞形成によって破壊された血管の流入口では血小板によって血栓形成が行われています。そして、同時にコラーゲンなどにも付着して内包する顆粒を放出します。この顆粒には血管内皮細胞増殖因子・細胞増殖因子・繊維芽細増殖因子が含まれていて、治癒の次の段階への準備を行います。このころの傷口はフィブリンにより覆われます。

創内浄化期

いわゆる炎症が生じる時期です。炎症なので好中球などが主に出現します。破壊された細胞からは炎症性サイトカイン(ヒスタミン・セロトニン・キニン・プロスタグランジン)が放出されます。炎症が進むとマクロファージが出現し貪食を開始します。このマクロファージは血小板やリンパ球、血管内皮細胞などにより活性化され、周囲の基質を刺激するようになると線維芽細胞の増殖を促進します。

また、血漿中にあるフィブロネクチンという非コラーゲン性のタンパク質はコラーゲン・フィブリン・ヒアルロン酸等と反応して血小板の増殖・拡散、好中球・単球・線維芽細胞の肉芽組織内への移動に関係してきます。この時に感染があればリンパ球が出現し、免疫応答の初期段階へ移行する準備をします。

修復期

この時期は肉芽組織の形成がみられ、この肉芽組織が収縮を開始して創傷治癒を促進します。この肉芽組織とともに未分化間葉細胞が粗なコラーゲン繊維、フィブロネクチン、ヒアルロン酸も形成されます。アクチンやミオシンと呼ばれるマイクラフィラメントを持ち、線維芽細胞と平滑筋細胞の両方の特性を持つ細胞があり、その関与によって皮膚の伸展する部位は非常に創傷の治癒が早くなります。

再構築期

この時期は線維芽細胞が中心となってゆきます。筋繊維芽細胞はⅢ型コラーゲンを、線維芽細胞は1型
コラーゲンを産生します。特に創傷部にはⅢ型コラーゲンが蓄積されて1型コラーゲンに置き換わってゆきます。1型コラーゲンは徐々に成熟し太く密になります。次第に共有結合の架橋が形成され、分子内に分子間架橋が生じて安定、コラーゲンの不溶化が生じ、強固な結合となります。