なぜブラッシング指導が重要なのか?

歯周病の原因

歯周炎の原因がプラークであることは、既に科学的に証明されています。このプラークは、歯肉辺縁より歯冠側の歯面に付着しているものを歯肉縁上プラークと呼び、歯肉辺縁よりも根尖側の歯根面に付着しているものを歯肉炎下プラークと呼びます。一般的には、歯周炎によって引き起こされる様々な問題は歯肉炎下プラークの中に存在する細菌によって生じていると考えられています。

昔の治療

歯周病の原因が細菌性プラークであることが証明される以前では、歯周治療の主体は対症療法でした。証明されていなかったのですから当然なのかもしれませんが、誤った解釈によって歯周病の実態と治療方法がボヤけ、「歯周病は治らないものだ」と考えて早期に抜歯がされたり、いきなり歯周外科を行ったりするようなこともあったようです。反対に、原因が証明されていないのにもかかわらず、治療方針だけが先行してしまった上に、外科的な処置が主体となってしまったことは反省すべき点なのかもしれません。おおよそ細菌が関係しているのだろうと予測はされていた訳ですから、第一選択にする治療方法にこそ反省すべき点があるように思われます。ただし、時代背景としては、1970年代後半になっても歯間ブラシを見つけることが困難な状況であり、ブラッシング指導と言うと多くの歯科医師が笑っていたようなこともあったような時代でした。

ブラッシング指導

今の治療

確かに、激しい痛みを伴う疾患や急性症状がみられれば、一時的な症状の改善は意味のあることであり、その時対症療法は大変に有効です。しかし、多くの場合、歯周病というものはほとんど症状がありません。一時的な症状改善よりも長期的に歯を残して機能させるということを考える必要があります。また、中期的に見た場合に外科処置と非外科処置との差は数年後になくなることもあり、費用対効果の目線で見ればやはり対症療法を第一選択に持ってくることはないように思われます。さらに、歯周治療については現在はほぼ確立されたものになっているので、歯周治療のコンセプトを理解し、誤った選択を回避することが重要になってきています。

ブラッシング指導

以上のことを踏まえた上で、歯周治療の第一選択としては多くの場合、ブラッシング指導から始めることが望ましいと思われます。これは歯肉縁下の歯石を除去した場合に、その後にそれを維持するためにはブラッシング指導を行ったか方が予後がいいのか?行わなくてもよいのか?を比較した実験などの多くの研究結果からいわれていることです。つまり、プラークコントロールの質が歯周治療の結果を左右するということが示されています。また、ブラッシング指導はその後も継続して繰り返して行く方が予後がいいということも明らかになっています。そもそも、技術というものは繰り返すほど習熟するものです。学習そのものが回数が少ないほど自分の解釈のウェイトが大きくなりますが、その解釈には”それまでのもの”が色濃く残ります。そのようなことまで考えれば、一度で済むはずがないものです。これほど大事なブラッシング指導ですが、多くの歯科医院で徹底されないのは伝えることや教えることの難しさにあると思われます。それには面倒臭さも含まれますし、改善されない苛立ち、成果が見えない時の不安、「またかよ・・」という表情に対するプレッシャー、お金にならないなども含まれます。それらを含めて考慮し、対処出来るようになるという術者側の課題もあるかと思います。