インプラントと軟組織付着

インプラントと軟組織付着

歯の百科事典」ではインプラントと骨組織の結合について、オッセオインテグレーションの観点からいくつかご紹介しました。

インプラントが周りの組織構造と安定性を持って馴染んでいる状態は、骨との結合は非常に重要な事ではありますが、歯肉などの軟組織との付着についても考慮がなされなくてはいけません。それは、近年話題となっているインプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲組織炎との関係を考える上では欠かせないものとなります。

インプラント手術における切開された粘膜の閉鎖後の創傷治癒は、貫通粘膜付着を確立することになります。 この付着は口腔内の物質がインプラントを固定する骨組織に到達することを防ぐシールの役割を果たします。

正常なインプラント周囲粘膜の構造

臨床的に健康なインプラント周囲粘膜は引き締まっていてピンク色を呈しています。

歯肉の上皮は高度に角化していて、歯冠に面しています。そこからセメント・エナメル境付近の接合上皮に移行します。接合上皮は長さが約2mmで歯槽骨頂上結合組織部は約1mmの高さになります。歯槽骨頂上結合部付近では歯根セメント質より歯根膜周囲の軟組織および硬組織に向かって主繊維が扇状に伸びています。

これと似たように、インプラント周囲粘膜の外表面も高度に角化した上皮に覆われていて、辺縁の境界部でアバットメントに面するバリア上皮につながる構造を取ります。このバリア上皮は天然歯の接合上皮と似た性質を持ちます。バリア上皮はわずかな細胞層から成り、軟組織辺縁より2mm根尖側で終わります。インプラントに接する結合組織はバリア上皮の最根尖部と歯槽骨長の間の部分を示し、約1.5mmの高さになります。この部分はTiO2と直接結合しているように見える場所です。

コラーゲン繊維は歯槽骨頂の骨膜から生じ、軟組織辺縁に向かってアバットメント表面に平行に走行しています。2回法の2次手術では、歯槽粘膜を切開し、フィクスチャー辺縁を確認してアバットメントを連結します。この時、切開された粘膜の付近の結合組織はアバットメントと接した状態になります。治癒が始まるとアバットメントの最尖部では結合組織と金属部分のTiO2 層との間には相互作用は生じます。

歯肉とインプラント周囲粘膜

・どちらの上皮もヘミデスモゾームを介して天然歯またはインプラント表面に付着しています。
・主線維は天然歯では歯根のセメント質中に起始する
・主線維はインプラントでは隣接した歯槽骨頂の骨膜より発する

これらの特徴はインプラントシステムによる差異はなく、どのシステムであっても共通して上述同様の貫通粘膜性の付着様式が観察されます。また、これは1回法・2回法での違いはありません。

どのインプラントシステムにも共通してみられる点は

・隣接する組織にはインプラントの側面形状が反映される
・貫通粘膜はバリア上皮が約2mm、結合組織が1~1.5mmで構成される
 
というものでした。

また、アバットメントの素材による貫通粘膜で生じる付着状態を評価した研究によると

・アルミニウムを焼成したセラミック(Al2O3)はチタンと同様の粘膜付着を生じる
・金合金は結合組織の付着が行われないため、フィクスチャーレベルに粘膜付着が生じる

ということが明らかとなりました。

さらに、アバットメント連結に先立ち粘膜の厚みを2mm以下にした場合、創傷治癒は3mm以上の厚さを確立する為に、フィクスチャーの辺縁の骨吸収を伴うことが分かっています。これを貫通粘膜付着の生物学的高径と呼びます。