インプラントのトラブル

インプラント周囲炎

インプラントトラブルの盲点

インプラントのトラブルには

1,インプラント手術に関わる合併症
2,インプラント周囲組織の炎症に関わる脱落や破折
3,審美的問題

があるといわれています。トラブルになる前段階でインプラントの長期的な使用を妨げる要因として、上部構造やアバットメントの取り扱いについてのお話をしてきました。今回は、一度インプラント自体のメカニクスの問題から離れて、生体である歯肉や歯槽骨などのトラブル(2,インプラント周囲組織の炎症に関わる脱落や破折)についてお話ししてゆこうと思います。他の分野でも同じことがいえるのですが、臨床的な印象だけで健康状態を判断してしまうことは危険です。インプラントの場合、臨床的にはインプラント周囲炎は起こりにくいという印象があります。その理由の一つとして、インプラントは骨吸収が進行しても動揺が起こらないということが考えられます。このことは、臨床的印象のみで判断してしまうことの危険性や、やはり科学的見地から考えていくことの必要性があることを意味しています。

臨床的な印象のみで判断するその他の例でいえば、同日に何本も虫歯の治療をすることです。患者様からご要望がある場合に私の場合は多くはお断りするのですけれども、それを来院回数の引き伸ばしであると不服を言われることもあります。そのプレッシャーに負けて言われるがままに治療する臨床家もいますし、知らずに自ら提案する者もいます。科学的見地が背景に見えなければこのようなことが繰り広げられてしまうのですけれども、治療をする側も受ける側も注意が必要だと思います。そもそもそのような場合には、回数減らしを考える必要があるほどに多数の虫歯がある自体も問題ですので、真剣に時間をかけて取り組む必要があると私は思います。

インプラント周囲組織のトラブル

インプラント周囲の炎症は生物学的問題と生体力学的問題で生じるといわれています。前者にはインプラント周囲の感染があり、後者にはオーバーロード(負担過重)などが挙げられます。これらに生じる生体的な反応は全くの別物ですが、現在出回る多くの情報では同じ括りになっているので注意が必要です。同一の括りである印象は拭えませんが、このトラブルについては、インプラント周囲の軟組織に限局されている炎症をインプラント周囲粘膜(組織)炎、進行性の骨吸収を伴ったものをインプラント周囲炎という分類にまで掘り下げることができます。

インプラント周囲粘膜炎

現在ではオッセオインテグレーテッドインプラントが広く導入されていますけれども、これが導入されはじめた1980年代にはインプラント周囲粘膜炎は20%以上の出現率といわれていたようです。近年ではインプラントに関する口腔衛生の概念が普及し、清掃指導の徹底や上部構造の形状の工夫や改善などによりインプラント周囲粘膜炎の頻度は減少しているといわれています。このことは、しっかりとケアをしメインテナンスをしなければ、かなりの確率でインプラント周囲粘膜炎を発症するという可能性を示唆しています。また、インプラント周囲粘膜炎はインプラントの粘膜貫通部の周囲に角化付着歯肉が少なく可動粘膜で取り囲まれている場合に生じやすいと一般的にはいわれているようです。この意見を支持するものの中には、これらの状況にあるとアバットメント付近に歯垢や歯石を確認することが多いとされ、一度清掃しても再発がみられることが多いとされています。