インプラントの治療目標の変遷

従来の目標

これまでのインプラント治療は、いかにインプラントを上手く骨に埋入するかが重要な問題とされてきました。いわゆる義歯を装着しないで済むようにという目的で、特殊な歯科治療の手段の一つとして扱われてきました。これによって、全身的な疾患などがなく、骨に十分な量がありさえすればインプラントは適応されてきました。つまり、治療はインプラント埋入手術を中心に勧められ、骨とインプラントが結合することが最も重要な要因と考えられてきていました。そして、義歯の回避が治療のゴールであったため、噛む機能さえ発揮できればインプラント治療は成功とみなされていました。

しかし、このような基準によって闇雲にインプラント治療がされてきた結果、様々なトラブルが発生し、マスコミでも大きく取り上げられるようなことがしばしば起きました。他院で断られた方を勧誘する広告や、破格的な値段を宣伝しているものを見かけますが、これらはこの当時の流れを汲んでいることがお分かりいただけるかと思います。

このような考えでは、いかに最新の機器を備えていようとも、キャリアがいくらあろうとも、根本的に発想が間違っているためインプラント本来の機能を発揮できずに終わります。そもそも目標が違ってしまうので、適応症ではなくなるからです。そうすると、埋入本数しか権威付け出来ないという事態になり、それを見てまた患者様が通院し、やはり失敗に終わるという負の連鎖が生じます。

これらの結果、「インプラントは良くないと聞いたことがある」「インプラントで苦しんだ知り合いがいる」という噂も広まり、インプラントのイメージは落ちました。ある地域ではインプラントバブルは終わったということでリストラや倒産をする歯科医院も増えているようです。ちなみに、現在はマウスピース矯正が同じ流れになっています。

インプラント治療の目標

現在の目標

近年のインプラント治療は予知性が格段に向上しました。さらに、骨移植や造成が確立しつつあり、高度な軟組織の手術が可能になってきました。それに伴い、インプラントはその他の補綴治療と同列に位置するものと考えられるようになってきました。

以前は義歯の回避が大きな目的の一つでありましたけれども、現在は例えば中間歯欠損などの場合にブリッジの代わりとしてインプラントが適用されるようになりました。しかし、この場合でさえもインプラントはオプションのひとつ過ぎず、自家歯牙移植や矯正治療なども選択肢の一つになりました。さらには、引っ掛けるワイヤーさえ見えなければ義歯でも良いという手術回避の傾向もあります。

これらのように、インプラント治療は様々な治療手段の一つに過ぎなくなりました。それよりも、患者様個々人に有効な治療方法の選択が求められています。つまり、インプラント手術が上手くいっただけで満足であった昔とは違い、患者様の満足度やQOLの向上が前提となった上で、機能的にも審美的にも質の高いゴールが求められるようになりました。

そして、そのような質の高い目標を達成するには、あらゆる分野を統合した包括的な治療が必須となってきています。このことをインターディシプナリーアプローチと呼び、インプラントはそのオプションのうちの一つに過ぎなくなっています。