インプラントの生体力学的原則

インプラントの生体力学的特異性

インプラントは機械的性質の向上、表面性状の改善、埋入システムの確立などによって骨接触の獲得は信頼足り得るものとなっています。予知性が向上したことで、適応症の拡大もされ、高い5年生存率が報告されています。しかし、その一方では長期使用の弊害としてスクリューの緩みや破折、周囲骨の吸収などが増加傾向にあります。インプラントの3大合併症として

1,感染
2,治癒不全
3,負担過重

がいわれています。これらは単独または重複して関与しているといわれていますが、今回は生体力学の観点から負担過重を中心にお話しそてゆきます。

インプラントが骨に接触して安定している状態をオッセオインテグレーションといいます。インプラントが光学顕微鏡下で骨と直接接触し、持続的に結合している状態を定義とし、オッセオインテグレーションが維持されているべきであるとされています。このオッセオインテグレーションというものは、天然歯と比較した場合に大きな2点の相違点があります。ひとつは、インプラントには歯根膜が存在しないので荷重を負荷された時の変位量が非常に小さいということです。これにより、インプラントに曲げる力が生じると、過大な応力が発生しやすくなります。もうひとつは、歯根膜がないので自己受容器もなく、インプラント周囲からの咬合接触の情報が下顎運動調節へのフィードバックを起こさせないということです。咀嚼筋や顎関節によって情報が代替されているのではないかといわれていますが、過大な噛みしめや側方力が生じやすくなり、損傷を与える可能性があります。

埋入予定の部位により条件は異なりますが、インプラントは長くて太いものの方がその後の経過を考えると有利になります。一例を挙げますと、大臼歯部では直径4.0~4.5mm以上、長さ10~12mm以上のインプラントが埋入出来ることが望ましいとされています。これは、インプラント自体の機械的強度(太くなればそれだけ丈夫になりますし、長くなればそれだけ横方向からの力に抵抗しやすくなります)や機能的な面(骨との接触面積など)を考慮に入れたガイドラインとして設定されています。インプラントへの負荷が周囲骨の支持能力を超えた場合、骨の吸収やインプラントの破折、上部構造を繋ぐスクリューの緩みなどを生じてしまいます。これらを引き起こす過度な力のことを負担過重といいます。この負担過重は骨の量や密度によって個人差が生じますが、総じて大きな力が加わったときに発生することはほぼ間違いのないことであると考えられています。

インプラントの力学的原則

咬合圧の方向

骨に埋入されたインプラントが咬合圧を負担する場合には、インプラントの長軸方向に負荷がかかるようにすることが望ましいといわれています。そうすることでインプラントにかかる力は周囲骨に分散されるといわれています。しかし、側方力が加わった場合にはインプラントに曲げる力が生じます。この時の側方力は、たとえわずかであってもインプラント・スクリュー・周囲骨に影響を与えるといわれています。よって、インプラントに対する咬合力は長軸方向に向かうようにインプラントの埋入をするか咬合接触を調整する必要があります。

傾斜埋入

残存する骨の状況によっては、咬合圧のかかる方向に対して真っ直ぐにインプラントが埋入できるとは限りません。そのため、インプラントの傾斜埋入を余儀なくされることがしばしばあります。傾斜埋入された場合、咬合面に垂直方向へ荷重しても、インプラントの長軸方向からみるといくらかは側方成分は含まれてしまいます。傾斜角度が大きくなればなるほど側方成分は大きくなり、結果的に応力は大きくなってしまいます。スクリューの緩みは負担過重の兆候ですので、締め直しのみでの対処では骨吸収やインプラントの破折につながることも多いので、事前に対処しておくか傾斜埋入を避ける治療計画を考えておく必要があります。

オフセット埋入

3本連続でインプラントを打つ場合、真ん中のインプラントを頬側もしくは舌側に2~3mmズラして埋入することをオフセット埋入といいます。このオフセット埋入により、曲げ応力を50%に現象する働きがあるとされています。オフセットという用語は矯正治療では頬側に平行に移動することを指しますので、(もしくは舌側に)の部分は誤りかもしれません。舌側への移動はインセットといいます。インプラントのち直径が4mmの場合、3mmのオフセット埋入をしてしまうと、上部構造の中央で咬合しようと思ったときに、そこは既にインプラントの直上ではなくなってしまいます。これでは傾斜埋入と同様に側方成分が発生してしまいます。単独であればダメですが、3連続のインプラントにおいては可能ということのようです。

インプラントブリッジのデザイン

インプラントを利用して3本分の欠損を治療しようとした場合、次のような方法が考えられます。

1,3本のインプラントを埋入する
2,欠損の両端にインプラントを埋入し、間のところにダミーをつかいブリッジとして治療
3,連続する2本にインプラントを埋入し、延長ブリッジとして治療

これらの中では3,延長ブリッジとして治療することが一番予後が悪く、これはインプラントに限らず天然歯であっても同様のことがいえます。

インプラントと天然歯との連結 

天然歯は歯根膜の厚みのぶんだけ動く事が出来るのに対し、インプラントは動きません。このことが原因になって

1,インプラントの破折
2,周囲骨の吸収
3,セメントの脱離
4,フレームワークの破折

などの報告が多かったです。

上部構造の不具合

インプラントの上部構造が緩むなどのことが生じた場合、上部構造とインプラント体を連結するスクリューが折れてしまったり周囲骨が吸収してしまうなどの報告があります。また、噛み合わせも動いてしまいますから、インプラントの長軸方向への力の負担が出来ないと思われます。