インプラントバブル

インプラントバブル

インプラント治療にどれだけの価値があるのかはわかりませんが、保険診療報酬制度の枠組みに含まれず、自由診療の枠で扱われたために高額な治療の一つとなりました。

インプラントには価値がないということではなく、高額な理由は他にもあるのだということをお伝えしました。

高額であるから高度で信頼のある診療だと思う方もいらっしゃるかと思います。しかし、現在国内では10万円を切る価格で行われている場合もあります。その事実は、インプラントに価値があるということを表しているということだけではないのかもしれないということです。

インプラントの話になると、「恐い」「痛い」「危ない」ということで、また近年囁かれている「健康被害」なども懸念して拒否される方も少なくありません。そのこと自体を見ても、価値という物差しによって価格が設定された有り難いものではないのかもしれないことを示唆しています。

一方で、海外では根管治療は1本あたり20万円前後しますし、金属床の義歯は50万円以上しますし、虫歯の治療でも5万円前後する場合もあります。その中でのインプラント治療の35万円ですから、保険外診療であるならば妥当な金額設定と考えられるかもしれません。

とはいうものの、インプラントはもはや欠損補綴のスタンダードな治療と考えられます。インプラント治療による恩恵を大きく得られるように、インプラントについて理解されてから治療を受けて頂ければと思います。そこで、インプラントを考えるにあたり、その取り巻く環境の変化についてまずは触れておきます。

インプラントバブル

歯科医師の勤務先は大学病院や病院の歯科口腔外科などの大きな施設を除けば、殆どが個人経営かもしくは個人経営の医療法人などの比較的小規模な施設がほとんどになります。そのため、給与などは比較的に高いものの雇用制度に関しては昔のものを踏襲している場合が多く、終身勤務ということは滅多なことでは行われません。

そのため、生涯を勤務医で終わる者が少なく、多くは開業医になります。この仕組みのために歯科医院が乱立している昨今のような状況が招かれているともいわれています。

どの業界でも同じことが言えますけれども、独立・起業は並大抵のことではありません。しかしながら、歯科医療の場合はある程度見通しが立てやすいと思われていることから開業は当たり前のように行われます。その結果、「経営の素人」が普通競争に晒されて逼迫するという事態に陥っています。また、他業種と比べると3〜10倍ほどの初期投資が必要になるために撤退すらもままなりません。

そのような中、歯科医院の競争が激化していると煽られ、多くの歯科医院経営コンサルトが歯科業界に参入してきました。

参入当初の彼らの文句はとても耳障りの良いものでした。

「利益を出してクリニックを継続させることが患者さんの為であり社会貢献でもある」
「利益を出して、セミナーに出席して、患者さんに還元することが歯科医師の務めだ」

まるでスローガンのように何処に行ってもこの言葉を耳にするようになるほど「自由診療の獲得」が推奨された時期がありました。

そして、その言葉に則り、真面目な歯科医師は「自由診療の道」を歩みました。

その後、歯科業界の多く、特に都会においてはその方針が多く採用され大きな流れとなりました。

その代表として、インプラント治療がありました。

「インプラントバブル」と呼ばれるほど大きなブームとなり、長年培った診断基準さえも変えかねない事態にまでなるほどの勢いでした。

また、数多くのインプラントメーカーが乱立するなど、大きなマーケットとなり有名インプラントメーカーがM&Aされるほどに他業種からも関心を集め、非常に大きな流行となりました。

しかし、その後には、価格競争が生じます。そして、長い不景気とデフレによる影響などもあり「インプラントバブル」が崩壊します。

それと時期を同じくして、インプラントに対するネガティヴキャンペーンがひかれたことで、インプラント専門クリニックではリストラが行われたり倒産したりするようになりました。内部留保はどうなったのかわかりませんが、事実として患者さんのための存続は叶わなかった訳です。

この時分に、歯科医院経営コンサルタントが”時代の流れを組んで”という理由で「保険診療報酬7割、自由診療報酬3割で安定経営」と打ち出しました。これにより、自由診療のみで行なっていた歯科医院に保険診療部門が併設されるなど、舵取りを明け渡したような状態が続き右往左往が始まります。そして、この目的を果たすために注目されたのが「予防歯科」「自由診療内での根管治療」です。

彼らは上手いので、それらの診療が患者さんのためになると啓蒙すれば歯科医師は動くことを知っています。

しかし一方では、まだ少数ですけれどもインプラント治療の何割かは臨床的判断で行われていたものではなかったと気付く歯科医師が一部に出てきました。

昨今でもそれまでの慣習を受けて、インプラントの有効性が言われる前に、埋入本数や強引な算出方法での成功率を競うことがしばしば見られます。そのため、大まかに良さそうだというイメージが先行して治療が行われるようにもなり、生じる問題に対するリカバリーが大きなテーマとなってきています。また、近年では「酸化チタン」による健康への害についても少しずつ分かってきたことが報告され始めています。

本来、少なくとも、

義歯に起因する口内炎、カンジダ症、粘膜過形成、その他の粘膜疾患、残痕、歯周疾患、根尖病巣、顎骨の炎症や嚢胞、良性腫瘍、悪性腫瘍がインプラント埋入時に存在してはならないとされています。しかしながら、臨在歯に歯石がついたままインプラント治療が行われる場面を目にすることは少なくありませんでした。
「専門」は本当にインプラント体の埋入と上部構造の装着の専門になってしまっている場合もあります。これらの疾患は二次的な評価に移行する前に治癒に向かっている兆候がなければなりません。

人間の機能は素晴らしいので、「まあ大丈夫だろう」という感じで治療が行われても多くは大問題には至りません。CTや解析ソフトが発展してきたとはいえ、最終判断を下すのは歯科医師という人間になります。機械と人間の判断のどちらが状況に則しているかは今後のテーマであるとして、同じ人間でも判断が異なることは齲蝕の臨床判断のばらつき適切な歯科治療とは何か?でもお伝えしてきた通りです。

そこで歯の百科事典では、インプラントバブルが落ち着きをみせている今だからこそ、改めて禁忌症について再検討してゆきたいと思います。そして、それらを正しくご理解頂くことで不安なくインプラント治療を受けて頂き、快適なお食事を実現して頂ければと思います。