インプラント周囲炎について ~インプラント周囲歯肉の炎症~

インプラント周囲の炎症

動物実験モデル

プラークの形成とそれに惹起される宿主の反応は動物実験モデルによって組織学的に研究されています。そこには、細菌感染の結果生じた炎症性細胞の浸潤範囲は、天然歯でもインプラントでも同様だということが分かり、細菌叢に対する宿主の反応はほぼ等しいことが示されています。ただ、このことは大まかな反応の違いに注目していて、電子顕微鏡レベルではもちろん大きな違いがあります。また、組織学的ということは組織片を採取しているので血流や神経機構の断裂もしくは死亡後になるので、全身との関連性について最終的には分かり切らないことも十分に残っていると考えられます。

臨床研究

1965年に細菌性プラークの付着と進行した歯肉炎との因果関係が証明されています。インプラント周囲の軟組織付着部における局所的なメカニズムは、これをそのまま当てはめて考えてもよいとされています。1996年に出た論文に、インプラントのアバットメント装着後6ヶ月は綿密なプラークコントロールをし、その後3週間口腔清掃を中止したという臨床報告があります。それによると、口腔清掃を中止した3週間後の歯肉とインプラント周囲粘膜についてはパラメーターに有意差は認められなかったとあります。ただ、PdとGIの増加が生じていたため、これらのことから細菌性プラークとインプラント周囲歯肉の炎症との因果関係を証明したこととしています。

インプラント周囲炎

インプラント周囲の感染に関わる実験的研究は倫理的な観点から人体による実験は出来ません。ですので、収集される情報は動物実験に頼らざるを得ません。そのこともあり、これまでの研究結果ではインプラント周囲炎の波及範囲や進行速度に関する統一見解は得られていません。インプラント周囲炎の進行速度は天然歯に比べると遅いという報告もあります。また、動物実験では歯周炎は健康な結合組織繊維が歯槽骨上部に存在することが多いのに対し、インプラント周囲では歯槽骨に直接的に炎症が進展してゆく危険性があると警告しているものもあります。

結紮線を巻いたインプラント、結紮線を巻いた天然歯、結紮線を巻かない天然歯(control)、結紮線を巻かないインプラント(control)を比較して、プラーク・インデックス、ジンジバル・インデックス、ポケットデプス、ロス・オブ・アタッチメントなどの臨床パラメーターを計測した実験がありました。結紮線を巻くという行為は、人工的にプラークを形成する為に行われます。それによると、結紮線を巻いた天然歯とインプラントでは増加がみられたようです。しかし、結紮線を巻いた天然歯は8ヶ月後には約3.5mmのアタッチメントロスが生じたのに対し、結紮線を巻かないインプラントは0.5mm以上のアタッチメントロスは生じていません。細菌自体は結紮された天然歯もインプラントも一致していました。また、8ヶ月後の組織所見も同じ様相を示し、両者とも骨欠損が生じています。解析においても天然歯、インプラントの両方に骨密度の現象と、骨内病変がみられています。しかし、インプラントの方では骨の高さと密度の現象はみられませんでした。これらのことより、天然歯が歯肉炎から歯周炎へ移行する考えと同様のことがインプラントにおいても起こる可能性があると判断されています。また、歯肉炎が必ずしも歯周炎を惹起するわけではないことと同様に、インプラント周囲歯肉においても周囲歯肉がそのままインプラント周囲炎へ移行するわけではないことが示されています。