インプラント周囲炎について ~原因と病因~

唾液に触れる硬い表面には、それが何であってもバイオフィルムが形成されます。最初にグリコプロテインを含む獲得ペリクルが歯や人工物の表面に付着して、それから唾液に存在する細菌コロニーを形成します。細菌にとって生体内の小さな窪みが増殖・分裂しやすい環境なので、歯周ポケットや扁桃、舌の陰窩や襞で繁殖します。また、近年では歯の表面においてもプラーク形成されているという報告もあります。走査型電子顕微鏡によるプラーク形成の調査では、インプラントの表面で確認されたプラーク形成パターンは歯の表面での形成パターンと同一であることが示されました。

インプラント周囲の細菌叢

完全無歯顎者の場合

インプラント周囲歯肉溝内での細菌叢形成については、最初は無歯顎者を対象に嫌気的培養法を用いて調査されました。この研究では植立されたインプラントの歯肉溝のコロニー形成は他部位の歯肉溝や歯周ポケット内に存在する細菌叢の干渉は受けず、唾液中の細菌によって行われることが明らかとなっています。この実験では、インプラント植立後2週間で健康な歯肉に見られる細菌叢に極めて類似したグラム陽性嫌気性菌が優位の状態になったことが確認されています。また、インプラント周囲組織の感染が生じ、喪失にまで至った患者のインプラント周囲歯肉溝からは、植立後120日でグラム陰性嫌気性菌とスピロヘータが高率で検出されています。この場合は重度の炎症や初期感染と関連がみられ、抗微生物学的な治療が必要となります。

これらの研究の方法ではペパーポイントを使用しています。近年の歯周病学の見解では、歯肉溝内液をペーパーポイントで採取する方法は真の細菌叢を反映していない可能性があることから見直されており、今後の展開が期待されています。

部分無歯顎者の場合

部分無歯顎者を対象としたインプラント周囲歯肉溝のコロニー形成に関する前向き調査は、実はほとんどありません。隣在歯の歯周ポケット内の細菌の存在が影響してくることは効率で考えられます。インプラントの植立を一回法と二回法で分けて行なった場合であっても、隣在歯の歯周ポケット内に歯周病の病原菌が存在する場合には約3ヶ月後にはインプラント周囲歯肉溝からも同一の細菌によるコロニー形成が検出されるようです。ただし、これについてもペーパーポイントによる採取が行われています。

インプラント周囲の細菌

インプラント周囲の感染に関わる細菌

インプラント周囲の歯肉溝及び歯周ポケット内に存在する細菌はインプラントに隣接する粘膜組織で同定されたものに等しいといわれていて、隣在歯が健康であれば健康な、炎症があれば炎症に関与する細菌叢に類似するといわれています。これらの研究は電子顕微鏡や暗視野顕微鏡で行われていいましたが、その後に嫌気性菌の培養技術が導入されるようになりました。

しかし、インプラント周囲炎に関しては同定されるその細菌叢は、侵襲性歯周炎のポケット内に存在する細菌とほぼ一致しているといわれています。