インプラント周囲炎について ~診断項目・前編~

今回はインプラント周囲の歯肉の健康について診査されている項目についてお話しします。天然歯と同じように考えられている部分も多々ありますけれども、当然異なる部分もあります。インプラント治療をされた方は、これらの違いを把握している術者に診査してもらうことで将来のリスクを大幅に減少させることができると思われます。

専門的な話も出てきますけれども、出来るだけ把握しておいて頂ければ、受診の際に信用に足る術者であるかを見分ける術にもなり得る内容です。長くなってしまうの今回は診査項目の前半部分をお伝えします。

動揺度

インプラント周囲の感染は歯肉溝から始まるため、感染の進行に伴う骨吸収もインプラント頚部から開始されます。そして、骨吸収が進行すると最終的には骨内欠損を生じます。インプラントの場合、根尖部付近に健全な骨結合が維持されていれば動揺することがありません。完全に骨結合を喪失すると、臨床的な安定性を失い、急激な動揺度の増加を示すようになります。ですので、インプラントの動揺度は特異的ではあるのですけれども、安定性を調べるための精度の高いパラメーターにはなり得ないです。そのため、インプラントに対する動揺度やモニタリングは必須ではなく、他の診査と組み合わせて評価する必要があります。

プロービング時の出血

歯肉溝内の深さを診査することをプロービングといいます。このプロービング時の出血をBleeding on probing(以下BOP)と呼び、為害性のない力でインプラント周囲の歯肉溝やポケット内にプローブという器具を挿入した後の出血と定義されています。当然、使用されるプローブのサイズやプロービング圧は規格化されていることが望ましいですが、厳密に取り決めて行われている場合は意外に少なく、また手技のレベルによっても差が生じてしまうこともしばしば見受けられます。

プロービングデプス

天然歯の場合、適切なプロービング圧は決められており、通常、健全な歯周組織に対しては0.25Nが用いられています。これは、歯周処置後の歯肉退縮がみられる健全な部位についても同様であり、インプラント周囲におけるBOPの診査にも同じ力を用いることは妥当であると考えられています。ですので、一定の力を加えることができる規格化プローブの使用が推奨されています。BOPは歯周組織にアタッチアメントロスが生じる前兆を示すものとして検討されてきました。繰り返しBOPがみられる部位で良好な予後を辿るのは30%以下といわれています。したがって、BOPが認められないということは歯周組織が安定していることを示す指標であると捉えられています。インプラントに関しては、現在までにはこのBOPについては確立されていません。あくまでも理論上のことではありますが、インプラント周囲の軟組織にも同様のことが当てはまると考えられていて、臨床的にインプラント周囲のBOPがないことは新プランと周囲組織が健康であることを示していると捉えられています。

改良型Gingival Index(以下mod GI)もインプラント周囲の評価の為に用いられます。mod GIはインプラント周囲組織の健康状態や炎症状態を評価する為に用いられ、臨床研究においても使用されますが、日常的な診査にはBOPを用いる方が望ましいです。ただ、術者がBOPに関する精度と再現性を身につけるためにGIと同じ訓練がされるべきです。

プロービングデプスと付着の喪失

歯周組織の診査において臨床上広く用いられるパラメーターとして、プロービングデプスと呼ばれる歯肉溝や歯周ポケットの深さを測るものがあります。また、セメント・エナメル境に対する付着レベルを測定するものもあり、付着の喪失をアタッチメントロス、付着の獲得をアタッチメントゲインなどと呼びます。インプラントの場合、セメント・エナメル境の代わりにインプラントショルダー部までのプロービングデプスに関連づけて測定されます。これを行うとインプラント周囲の付着が喪失するということで行わない所もあるのですが、それは誤解で、インプラントだけでなく天然歯でも付着の喪失が生じる上に、両者とも2~5日で再生することが明らかになっています。

臨床的なプロービングデプスは、天然歯に比べてインプラント周囲の方がわずかに大きい値を示すようです。また、インプラント周囲の頬舌側におけるプロービングデプスは一般に隣接部より0.5~1.0mm小さいといわれています。インプラント周囲のプロービングデプスはシステム毎に異なり、インプラント周囲の歯肉溝に対するプローブの到達度によって決まるといわれています。ですので、どのメーカーのインプラントを使用しているかの把握はとても重要なことになります。