インプラント周囲炎の治療について

インプラントの治療について

歯周病の実験を行う際に、意図的に歯周病を作り出す方法がある程度確立しています。そして、その方法を同じくインプラントに用いると、同様にインプラント周囲炎を生じさせることが出来ることが分かっています。

これによって歯周病やインプラント周囲炎に関する治療方法の実験も行いやすくなりました。そのような背景を元に、抗生物質を全身的経路で投与した場合のインプラント周囲組織の炎症の改善傾向を観察した実験があります。その実験ではさらに、

・抗生物質投与のみ
・抗生物質投与と歯肉縁下デブライトメント

を比較しています。その結果、全身的な「抗生物質の投与のみ」ではインプラント周囲組織の改善は見られなかったのに対し、「抗生物質投与と歯肉縁下デブライトメント」の実験群では改善傾向がみられたことが明らかになっています。このことは、抗生物質の全身投与のみの治療にはインプラント周囲炎をコントロールする力はなく、インプラント表面のバイオフィルムの注意深い除去の併用が必要であることを明確に示しています。

これと同様なことは歯周病においては1983年に発表されていますが、インプラント周囲炎に関しても1990年代にいわれ始め、今のところエビデンスに近いのではないかと思われます。しかし、近年、口腔内科や漢方などの”最新”分野が出てきたおかげで、このことは覆るのかもしれません。今後の展開に注目したいところです。

骨の再生について

細かなことはわかっていないですけれども、インプラント周囲炎の組織破壊期において、インプラント表面に形成されるバイオフィルムがチタンの表面の性質を変えてしまうかもしれないといわれています。その結果、全身的および局所的な抗菌剤の併用投与療法は動物実験では炎症性病変の改善が達成されるものの、チタン表面への新生骨の形成はされないことがわかっています。

純チタンのインプラント体の表面には二酸化チタンの薄層で覆われていますが、この層は宿主細胞とインプラントとの間における相互作用を促進するといわれています。しかし、一度その表面が汚染されてしまうとその性質は変わり、表面エネルギーが低下してしまうといわれています

そのようになってしまうと、周囲の組織とはインテグレーションすることは出来なくなり、それどころか異物反応を引き起こすといわれています。二酸化チタン(IARC ranking Type2B)が露出していることも心配材料になるかもしれません。

現在、汚染されたインプラント表面の回復を目的として様々な方法が提唱されています。メカニカルブラッシング、エアブラストによる研磨、クエン酸・クロルヘキシジン・デルモピノールなどの化学薬品の応用などです。これらは汚染されたチタンの表面を効率的かつ十分に清掃するのに効果がありますけれども、しかしながら、これらであっても再オッセオインテグレーションの量は限られたものだけとなってしまいます。

抗生物質の全身投与と局所療法はインプラント周囲炎に対する治療方法としては明らかに有効であり臨床応用もされています。

インプラント周囲組織の感染について

インプラント周囲炎の治療のゴールは

・感染に関連する日和見病原体の抑制
・健康と調和する局所的な環境と細菌叢の確立

になります。これについて治療は、口腔衛生指導、メカニカルデブライトメント、抗菌剤の定期的応用または含嗽から開始されます。これらにより、インプラント周囲粘膜炎のほとんどでプラーク量の減少がみられ、健康な周囲組織と関連する細菌叢を確立するのに有効です。

この他に付加療法として抗生物質の全身投与あるいは局所投与といった補助療法が含まれてきます。これらのことは「CIST」のプロトコールに基づいて行われますが、インプラント周囲炎の治療でもお話ししましたように、確立された治療とは言い切れないものでもあります。

歯周治療において、それが歯であってもインプラントであっても抗生物質の単独投与には効果がありません。バイオフィルムの性質として、共存する生物を保護する能力があり、様々なメカニズムにより抗菌剤に抵抗力を示します。なので、メカニカルデブライトメントによるバイオフィルムの破壊と共に抗生物質は投与される方が有効のようです。

バイオフィルム内の微生物に対して抗生物質の局所応用が有効であるためには、活性作用因子がインプラント周囲ポケットに長時間かつ十分な濃度で到達していなければなりません。その基準となる具体的な数値は今のところ定かではありません。