インプラント周囲炎の治療


インプラント周囲炎の治療

角化粘膜

歯周病学で定着しつつある話の中に「歯周組織を健康に保つには角化歯肉幅が重要である」というものがあります。角化歯肉というのは歯肉辺縁から歯肉歯槽粘膜境という範囲までに位置する口腔粘膜上皮の一種であり、その多くは内部にある歯槽骨と骨膜によって強固に付着している組織です。この角化歯肉は刺激に強く、外圧を受けても動きにくい構造をしており、歯磨きのしやすさと関係があり、またプラークの停滞具合や炎症の波及具合に関与するといわれていました。

インプラント周囲組織についても同様の議論がされています。そして、歯周組織においてもインプラント周囲組織においても、ドグマティックに角化粘膜の重要性が今でも信じられている場合があります。この結果、双方において角化歯肉の幅を改善するために粘膜移植を含めた歯周外科手術が行われています。

角化粘膜がインプラント周囲組織や歯周組織の健康を維持するために重要であり、炎症の程度や骨吸収量を低くしてくれるということは明らかにはなっていません。1990年代に行われていた動物実験では角化歯肉幅がある方が有利であるとされる研究報告がありましたけれども、2000年代に入り多くの臨床研究から有意性がみられないとの報告が増えています。ですので、現在のところ角化歯肉を増やすために行われる歯周外科手術については、どのような場合に移植等を行うべきかということを再考せねばならない時期なのかもしれません。純粋にインプラント周囲組織の健康を維持するために、インプラント周囲炎を起こさせないためにという目的では、必ずしも移植が必要だとはいえません。もし行うのであれば、ごく僅かな歯肉退縮であっても問題となるような審美的要求の強い場合には選択されるということも考えられなくはないと思います。これらの手術のお話も大事ではありますけれども、手術の適用を判断するためのプロービングはインプラントには何gの圧力で行われ、それによる傷は回復にどれくらいの時間を要するのかという正しい判断がされているかも重要なことになります。

インプラント周囲炎の治療

インプラント周囲炎に罹患した場合は、どのように治療すればよいのでしょうか?現在用いられている治療指針に「CISTの分類」という基準が設けられています。この分類のある段階において再生治療が含まれています。けれども、再生療法自体が世に出てきた当初に期待された効果は望めず、現在では限局的な症状に対してわずかな効果しか期待出来ないということが明らかになってきている中で、この分類も十分な科学的根拠があるわけではないことがお分かり頂けるかと思います。事実、この治療方針には全く科学的根拠はありません。参考・マニュアルとして設定されているだけの基準です。

インプラント周囲炎の治療の長期経過を追える信頼性の高い研究は数が少ないのですが、その中でも参考になりそうな研究の結果では手術・滅菌・洗浄・抗菌薬の投与とフルコースを行なった実験があります。その結果、5年間で42%が脱落した、つまり成功率は58%であったと報告しています。残念ながらあらゆる手段を講じても良い成績は得られなかったようです。これらのことからも、インプラントは歯の代わりになるものではなく、歯が保存不可能な時になって初めて適用を考えるべきものだと認識を改める必要があるかもしれません。