インプラント周囲炎

インプラントバブルが崩壊し、過去に入れたインプラントが度々問題になっているという報告が増えてきています。数年前にインプラントを埋入した方が時を経て、要介護者や寝たきりになってしまった場合、除去することもままならず、周辺歯肉に炎症を起こしたまま過ごさなくてはならなくなっているという介護現場の声を聞くこともあります。手指に麻痺が生じてそれまで通りにはインプラント部の清掃が行えなくなってしまった場合や、歩いて歯科医院へ検診に行かれなくなってしまうことも無いわけではありません。

インプラント周囲炎の説明

インプラントを行う歯科医師が訪問歯科に転職する率も低いため、対処に困ることなども原因となっているようです。入れ歯もままならず、また、天然歯との連結は禁忌症であるためにブリッジをすることも出来ないという状況では、穏やかな老後の生活を脅かしかねない問題となってしまいます。

高齢者が増えていく今後の社会状況も踏まえた上で、インプラントの診断はなされるようになってくるべきでありますし、チタン暴露回数の増加によるアレルギーなどの問題も噴出してきていることから、「何年もったか」を競い合っていた時代は終わりつつあり、しっかりと”出口”を見越した治療が行われる時代が訪れるのかもしれません。近年の歯科業界で出版される書籍においても、インプラントのトラブルシューティング関連のものが増えており、今後益々需要が増えてくることが予想されます。

患者さんはなかなか施術者に対して文句が言えないこともあるので、術者自身が主導となって倫理観を持った治療が行われるようにならなくてはいけないと思われます。

インプラントの失敗

高い成功率が謳われているインプラント治療ですが、その一方でトラブルも多く報告され、「失敗」といわれるようなものに遭遇することがあります。私自身も都心の法人で働いていた時に、一般的にいわれているインプラントの成功率を大きく下回る様子を見てきました。

アバットメントの固定位置の間違いを、上部構造に引っかかりをつけることでリカバリーしようとしているものや、脱離やインテグレートしなかったものをたくさん見ました。

早期におけるインプラントの失敗は埋入後に生じます。その原因は
・不適切なインプラント窩の形成による硬組織のダメージ
・創傷部の細菌感染や広範囲に及ぶ炎症
・初期固定が得られていない
・加重が早すぎる
などがいわれています。

一方、遅れて生じるインプラントの失敗には
・過重負担
・細菌感染
・上記両方
などが原因となり、オッセオインテグレーションが失われます。

「過重負担」に関しては、個体差や部位による差が大きいため定義付けが難しいといわれています。一般的にはインプラント周囲の骨喪失は荷重によるものとされていますが、これは実験的研究によるものであって荷重と骨喪失の間に関連があることは確認が取れないという報告も同じ数ほどあります。
”インプラントの大きさ””表面正常””骨質”などがこれらの要因となってくるだろうと思われていますが、実際のところは完全に解明された訳ではないものです。

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎とは、上記「インプラントの失敗」における「遅れて生じるインプラントの失敗」に属するものです。

インプラント周囲炎(peri-implantitis)は「機能時にオッセオインテグレーテッド・インプラント周囲組織に影響を与え」「支持骨の喪失を引き起こす炎症過程である」と定義付けられています。ヒトにおけるインプラント周囲炎の有病率は埋入された全てのインプラントのうち2〜10%程度といわれています。基本的にインプラント周囲炎を治す方法はないことから、特にリスクは大きく見積もるものなので10%という数値は高いのではないかと思われます。また、歯周病に感受性の高い患者へのインプラントの失敗率はおよそ8%というわれており、健全な患者へのインプラントは3.3%の失敗率であったという報告もあり、歯周病で歯を喪失した患者へのインプラント治療は計画的にプログラムされたメインテナンスケアを着実に実行する必要があると思われます。

健全の保たれているインプラントでのプロービングの値はおよそ2.0mmであり、プロービングはインプラント周囲粘膜の圧縮と側方への移動を起こします。これは天然歯の組織学的プロービング深さは0.7mmであったたのに対し、インプラント周囲のプロービング値が著しく深く計測されます。プローブの先端は結合組織とアバットメントの境界面に存在し、バリア上皮の尖端より深い位置まで挿入されます。