インプラント周囲組織とトラブル

インプラント周囲組織とは

自分自身の歯を天然歯と呼ぶことがあります。そして、歯を取り囲む骨や粘膜など各器官を総称して歯周組織などと呼ぶことがあります。この、天然歯と歯周組織のの関係は、それらが健康である場合、一定の関係であるという説があります。その説では、歯冠から根尖方向へ向かう順番に、歯肉上縁より歯肉溝・上皮性付着・結合組織性付着という関係で歯肉と歯は面しているとされています。それぞれは歯肉溝が0.69mm、上皮性付着が0.97mm、結合組織性付着が1.07mm、という1:1:1の比率に近い関係性を保っているといわれています。これを生物学的幅径といいます。そして、これらの関係を壊さないように治療を進めていくというお話のようです。実は、このことは天然歯の周囲組織の一部にしか該当しないものであり、様々なところで引用されてはいるものの、実際を表しているものではないことがわかっています。

しかし、今回はインプラント周囲組織の関係を説明するにあたり、天然歯との比較を用いた方がわかりやすいであろうと考えまして、あえて生物学的幅径のお話を先にあげさせて頂きました。インプラントの周囲組織、とくに歯槽骨より上方の部分でインプラントと軟組織が面する部分を粘膜貫通部と呼びますが、炎症がない場合では軟組織辺縁から上皮根尖側端までは平均2.14mm、その下の結合組織の幅は平均1.66mmとされています。天然歯の場合とは距離も関係も異なりますが、インプラントにおいても一定の生物学的幅径が確認されているといわれています。ただし、アバットメントとは結合されていません。

このインプラントにおける上皮組織と結合組織の幅についてはチタンだから実現出来るのであって、最近流行しているジルコニアにおいてはそんお結合は更に弱いのではないかと言われています。チタンなどのアレルギーがある場合を除いて、審美目的などでジルコニアのインプラントを用いる際はより注意して治療を受ける必要があるのかもしれません。

インプラント周囲組織

インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲粘膜炎は上述した生物学的幅径の及ぶ範囲における炎症であり、骨吸収を伴わないとされています。ただし、粘膜は固形物と一定以上の強さで触れていると、ブリッジのポンティック下に存在するような非吸収性の慢性炎症を生じるといわれています。粘膜貫通部の距離が大きくなってしまった場合や、エクスターナルジョイント型のアバットメントを使う場合、オーバーカントゥア気味の上部構造を使用する場合にもそれらは出現する可能性がありますので、それらの鑑別診断は慎重に行わなくてはいけません。

インプラント周囲炎

インプラント周囲粘膜炎が骨の吸収を伴わないのに対し、インプラント周囲炎は骨吸収がみられるのが特徴です。これらの関係を天然歯に似せて考えますと、前者が歯肉炎で後者が歯周炎のような関係になります。機能下でのインプラント周囲の骨吸収量は、通常では最初の1年で1~1.5mm程度生じるとされています。その後は毎年0.1mm程度ずつ吸収がみられるといわれていて、インプラント周囲炎の場合はこの生理的なスピードを超えて骨吸収がみられる場合をいいます。

ちなみに、骨吸収の量はインプラント体の表面性状が関係するとされていて、TPSコーティング・機械研磨・HAコーティング・リン酸カルシウムブラスト処理・について様々な報告があります。HAコーティングは機械研磨よりも骨吸収量は多いといわれていますし、TPSコーティングなどの表面積向上のために複雑に陥凹があるものはオッセオインテグレーションは向上するが細菌感染が生じると持続性の慢性感染状態となり骨救急が進行するといわれています。