インプラント手術後の治癒について

創傷治癒に関係する因子について

なぜインプラントは骨につくのか?ではインプラントが骨に結合する際に重要な話として、創傷治癒についてお話ししました。創傷治癒というのはいわゆる傷が治ることを指します。インプラント治療とは人工的に作られた骨の傷の中に、異物であるインプラント体を置いてくることになりますので、生体の本来の治癒機転を損なわないようにしなくてはいけません。ですから、この治癒について把握しておくことが重要になってきます。そして、さらにこの創傷治癒について早さや回復の程度を左右する因子について把握してゆくことが大事になります。

インプラントの骨癒着

治癒を左右する因子

創傷治癒は様々な因子の影響を受けます。その中の一部を挙げると

1,酸素
2,低タンパク血症・低栄養状態
3,各種疾患をもつ者
4,局所因子

などが考えられます。以下では、これらについてご説明させて頂きます。

1,酸素について

創傷治癒に関して酸素の役割は大きく、コラーゲンの合成と架橋・血管新生・上皮形成などに関与します。また、創傷治癒部位では通常量の3~4倍の酸素量を必要とするといわれています。これらのことから、酸素を運搬する際に必要なミネラルとしての鉄やヘモグロビンの元になるタンパク質、細胞分裂を正常化させる亜鉛、などの栄養補給も必要になってくるかと思います。また、手術の際に歯肉弁を鋭角で作らない、または小さくしすぎない、何度もメスを入れないなどの工夫も必要になってきますし、歯肉弁に血液供給をさせるために骨膜から剥離するなどのスキルの高さも必要になります。

2,低タンパク血症・低栄養状態について

各種免疫細胞、コラーゲン生成に関与する線維芽細胞などは大元を辿ればタンパク質になります。このタンパク質に様々な酵素が働きかけて代謝が行われる訳ですが、酵素もタンパク質で出来ています。これらのタンパク質にビタミンやミネラルが関与してコラーゲン等が生成されます。低タンパクや低栄養状態では繊維が細部の増殖が阻害されてしまい、コラーゲンの合成も低下して治癒は遅くなってしまいます。

3,各種疾患を持つ者

糖尿病

微小血管の閉鎖から始まり、血流の低下が生じ、低酸素状態を助長します。このことはコラーゲン生成を阻害します。また、高血糖は好中球機能に障害を与えるので感染のリスクが高まります。

肝疾患

肝硬変では出血傾向がみられます。

自己免疫疾患

自己免疫疾患などによる長期ステロイド服用者では創傷治癒が延長する傾向があります。

*諸説あります。
生体の連続性を断裂させるというもう一つの形として、肝硬変で出血傾向がみられると各種因子が創部にとどまれず、生活反応期から次の段階へ進みにくくなることが予想されます。また、ステロイド長期服用では免疫に影響を及ぼします。おそらくは創内浄化期に炎症を生じにくくさせてしまうことにも問題があるかと思います。

ビタミン

とくにビタミンCはヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンを合成する際の補酵素として働くので、コラーゲンの生成に関与します。

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4,局所因子

創傷が固定されているどうかは治癒に大きな影響をもたらせます。そのため、関節や皺などのよく動く部位は創傷治癒が遅れます。また、創傷部位の強すぎる縫合は血行障害を招き治癒の遅延がみられます。そのほか、感染や異物の存在も治癒を大きく遅延させます。炎症性細胞が長期間滞在していると、コラーゲン繊維も増加するので瘢痕性の治癒になりがちです。

まとめ

近年はインプラントの抜歯即時埋入や即時荷重などのコンセンサスが得られたといわれて久しいです。様々な所に独自で開発した治療方法で第一人者を名乗る人が増加しておりますが、彼らの治療方法の工夫としては、どのように初期固定を得るか、という点のみに集約しているように思います。これは「4,局所因子」でお話しした創傷の固定への工夫のみにしかすぎません。生体の連続性が断裂するということは大変なことです。患者様のご要望を大切に考えるのであれば、どうして同じく治癒期間と生体反応は大切に考えないのか不思議です。インプラントの成功についてのまとめでは上部構造装着後に数年でのインテグレーションの喪失が多いという事実もありますから、これからも慎重に進めてゆく必要があることは依然として変わらないと思われます。