エッチング・ボンディング(矯正歯科)

歯科保存学のところでも解説させて頂きましたが(エナメル質へのレジン接着)、現代歯学においては、もはや「接着」というものは欠かせないものとなっています。虫歯の治療や義歯の治療などの一般歯科診療以外でも当然その応用はされていて、矯正歯科においてもこの接着という分野の発展のおかげで大きな改善と改良が行われました。

矯正用アタッチメント

これまでの歯科矯正

最近まで、固定式のアタッチメントもしくはブラケットを取り付けるには、それをバンドに取り付けた後にセメントを用いて歯に合着する方法しか行われていませんでした。個々の歯の大きさや形態に調整して行われるか既成のものを利用してそれらは行われてきました。バンドの装着は大変な労力が必要であったことと、見た目に問題があったこともあり、現在の接着技術の進展によりその他の方法が提案されると使用される頻度は大きく減りました。

ただ、間欠的に大きな力が加わる場合や歯冠長の短い歯にアタッチメントを装着する際などには、今でもバンドは使用されることがあります。

接着のもたらす治療方法の変化

アタッチメントの装着がバンドの方式から接着性セメントによるものに変化したことで、治療期間中の見た目の問題が大きく改善されました。そして、それだけではなく、治療自体にも変化がありました。たとえば、バンドの装着の前に行われるセパレーション(歯間分離)を行わなくて済むようになりました。ブラウスワイヤーやスプリングセパレーターは緩んだり外れやすく、弾性高分子セパレーターは挿入に困難な上、X線不透過性がないため歯根膜空隙内に入り込むと深刻な事態を生じる、という問題から解放されました。

また、バンドがなければ歯の移動もできないことから、治療の終わりにバンドの厚みの分だけ歯間に隙間が残ることが多いです。

その他には、バンドの内面にセメントが行き渡らないか溶出してしまうなどの理由で、スペースが生じて虫歯になるという「バンドカリエス」のリスクも大幅になくなりました。

矯正歯科における接着の留意点

アタッチメントをボンディングし、バンドを装着しないで済むことは、1980年代に日常臨床でそれが当たり前となるまでは長年の夢だっとようです。矯正用アタッチメントの歯面へのダイレクトボンディングは、片方ではエナメル質の粗面に器械的に固着させ、もう一方ではアタッチメントの基底面にその維持形態を利用して接着剤をロックさせることで行われます。

つまり、ボンディングを成功させるには「歯面とエッチング処理」「アタッチメントのベースデザイン」「接着剤の性質」の3要素に留意する必要があります。

エッチング

矯正用アタッチメントのボンディングの前に、エナメル小皮を除去し、エナメル質表面に凹凸を作る操作を行います。エナメル質表面を清掃し、化学薬剤で必要な表面のざらつきが出来るように処理します。この時、エナメル小柱間の細孔を開き、、接着剤がエナメル表面に侵入できるように少量の軟らかいエナメル小柱間質を除去しています。

薬剤は通常、35~50%の非緩衝リン酸溶液のエッチング剤が用いられ、20~30秒間処理します。エッチング時間が長すぎても逆効果になってしまうようです。

歯面はこの後、ボンディングが完了されるまで唾液に触れてはいけません。唾液に触れることによって、再鉱質化を促進してしまうからです。もし唾液に触れてしまった場合には再エッチングが必要になります。

アタッチメントの表面

アタッチメントのベースには器械的な結合がされるように形態が付与されています。化学的接着と器械的接着のどちらでも接着できるようになってきていますが、化学的接着は強力すぎてディボンディング時の新たな問題となっているので、器