カテコールアミン

カテコールアミン

歯にとっても歯周組織にとっても有害な糖質ですが、その他に免疫の働きに影響を及ぼしたり精神へ影響をもたらしたりすることが知られています。

特に糖質による精神面への影響は非常に大きなものであり、虫歯や歯周病など「糖質との関わり」が深い歯科医療にとっては、口腔内初見や各種検査の他に【問診時・対話時の反応】を見ることは、患者が糖質とどのような関係にあるのか?「摂取量や頻度」「身体反応」を知る上で重要な手がかりとなります。

歯科治療では特に、糖質との関わりに問題があるがために受診されている方が多いわけです。ですので、糖質にまつわる様々な事情の把握なくして治療を行うことは中途半端なように感じます。

糖質との関わりに問題がある人であっても、周りの人を注意深く観察して自らの糖質の摂取に問題があると考える人が少ないため、自己申告の上では誰しもが「一般的な量」「通常の摂取」と思っています。それにより糖質の摂取および低血糖症などが覆い隠されてしまう場合があるため、関わりの中での様々な反応を診ることで「糖質による影響」を推察してゆく必要があります。

例えば、

糖質摂取により招かれる低血糖に陥りやすい人は、「健康の認識基準が低い」といわれていて、健康の回復よりも仕事や遊びを優先してしまいがちな傾向がみられることがあります。これにはアドレナリンの分泌が関わっているのではないかといわれています。

また、同じく低血糖に陥りやすいひとは「自責の念が強い」といわれていて、失敗に対する絶望感も強いといわれています。そのため、歯磨きの上達が自分の予想を下回った時に味わう絶望感を恐れて、検査による現状を目の当たりにしたがらない、病態を聞いても治療を望まないなどの傾向がみられることがあります。

その他には「目的思考が過剰になる」という傾向も有しているといわれていて、成し遂げようとする意欲が強まり過ぎて歯肉に傷がつくまで歯磨きをしてしまったりします。これは糖質により歯肉の状態がよくない時に行われるので治療に一苦労します。この傾向も低血糖時のアドレナリン分泌によるものではないかといわれています。

糖質の精神への影響はこれら以外にもありますので、それらについては後述します。

今回はその前に、これらの症状を招く低血糖症において、これによる障害を是正しようとするホルモンであるカテコールアミンについてのお話をしてゆこうと思います。

カテコールアミンとは

カテコールアミンとは、アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミンの3つのホルモンをあわせて表現したものです。このカテコールアミンは脳下垂体からの副腎皮質刺激ホルモンや、それに誘発されて分泌されるコルチゾールなどの影響を受けて分泌が促されます。

カテコールアミン自体は副腎髄質で作られます。脳で交感神経が興奮すると副腎髄質に伝わり、この神経終末より分泌されたアセチルコリンはカルシウムの分泌を促すので、クロム親和性顆粒の膜が脱分極した際にアドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミンが分泌されます。

カテコールアミンは低血糖症による障害を是正するために分泌される6〜7種類のホルモンのうち、最初に分泌されるといわれているホルモンです。

中枢においては交感神経の神経伝達物質として働き、興奮を生じさせます。これは大脳辺縁系や視床下部に多く存在します。

一方、抹消で働くと交感神経の受容体に作用し、こちらもまた交感神経の作用を増強させます。

カテコールアミンは早朝4〜5時頃に分泌が起こり、10時くらいに最高値になるといわれています。その後、午後3時あたりに分泌が終わります。コルチゾールという副腎皮質ホルモンも同じような日内変動をしますけれども、午前中はこのコルチゾールやアドレナリンのおかげで低血糖症の症状が出にくいといわれています。しかし、午後3時以降はそれらの分泌が低下するため症状が出やすくなります。

日中には元気に来院される方が、仕事帰りの夜に来院された時に疲れ以上に雰囲気が違うことがよくあります。その中でも特に治療後に夕食を摂ろうとお考えになっている方は、その変化が大きくみられます。

カテコールアミンが分泌されるのは血糖値が降下する最中であるといわれていて、降下し終わった後に食事療法を行ってもアドレナリン分泌抑制を防ぐことは出来ません。また、血糖の下降の程度によりその分泌量が変わるといわれていて、急激な糖分摂取によるインスリンの過剰分泌は過剰なカテコールアミンの分泌も促します。

多かれ少なかれ、カテコールアミンによって体調の変化を来す体質の人がいます。セロトニン分泌の少ない人や甲状腺機能亢進症、潜在性の鉄欠乏の人などがこれに該当します。人間は自律神経などにより恒常性を維持するよう調節していますけれども、一度カテコールアミンの分泌が生じてしまうと、身体や精神への影響が強く出てしまいます。

カテコールアミンによる症状

身体全体の血糖の消費量でみると、脳はその大きさの比率に似合わず20〜30%も消費します。そのため、血糖による影響を大きく受けるため、低血糖状態では無駄なエネルギー消費を抑えるために活動を弱めます。これにより眠気が襲ったり、大脳皮質の栄養欠乏により理性の働きが弱まります。

雪山で遭難して指先が凍傷になるような場合であっても脳が先にダメージを負うことがないように、低血糖をはじめとする過酷な状況においては、生命維持に関わる間脳に対してグルコースが優先して届けられます。この機能により、過酷な状況では、大脳皮質への血液供給なども減るため、さらに理性的判断が困難になるといわれています。

カテコールアミンは、低血糖・ストレス・アレルギー・ショック・睡眠不足・風邪などの異常事態から身体と心を守るために追加して分泌されます。カテコールアミンの過剰分泌による症状には以下のようなものがあります。

攻撃的行動

アドレナリンは闘争心を起こします。それにより怒り・敵意・暴力といった攻撃的な感情を刺激するため攻撃ホルモンなどとも呼ばれています。この際、一つの目標に向かって突進するような感情が掻き立てられるため、一点を凝視する表情となったり、目が据わった表情になります。

うつ的衝動

ノルアドレナリンは否定的な感情を刺激するといわれ、強迫観念・不安感・自殺観念・恐怖感などの感情が起こります。通常であれば大脳の前頭野で理性的な判断を行える者であっても、低血糖時などでノルアドレナリンが過剰分泌されると前頭葉第46野が麻痺して理性的な判断は困難になります。これは大脳からの抑制が効かない”キレる”状態であり、パニックなどもこれにあたります。パニック障害が大脳の青斑からのノルアドレナリンの分泌過剰が見られる病気ですから、このノルアドレナリンによる影響は似たような症状をもたらすのかもしれません。

低血糖症での緊急的な対処で糖質を摂るなどの指導が一部ではまだされているようなのですが、機能性低血糖症の場合には状態が悪化してしまうこともあるので注意が必要です。

性格の異常

アドレナリンやノルアドレナリンの作用により刺激された感情を、自分の性格の特徴であると判断してしまうことがよくあります。特に精神疾患を患ったことのある人や低血糖症などの人は、感情に左右されて行動する習慣がついてしまっているので、日常的に適切なアドバイスをもらえる環境構築が必要です。近親者にそのような人がいなければ、カウンセリングを受けることが必要になります。この時のアドバイスは本人にとっては否定的で過激なものになることが多いので、感情的に反発してしまうことが多いです。そのため、一般の者では感情的なやりとりになってしまい上手くいかないこともあるため、コーチングやカウンセリング技術を身につけた人に行ってもらうことが必要です。

感情の抑制ができない

家庭内暴力やストーキング行為などでは一般的に、自分の感情が抑えられなくなるということがいわれています。このような急激な反応は、おそらく脳内において神経伝達物質の伝道が異常に速く行われたためではないかといわれていますノルアドレナリンが分泌されて感情刺激を受けた段階で行動に及んでしまうことが原因です。このタイプは無反応性低血糖症に多いといわれています。一方で、緩慢な反応であっても分泌量依存の症状なものもあり、分泌量の少ない例としてうつ病などがいわれています。量によるものか、速度によるものかで対処を変えないといけないかもしれません。

完璧主義・興奮の持続

アドレナリンの作用によります。攻撃的行動の際にも触れましたが、アドレナリンには周囲の状況を把握する機能を下げる作用があるようです。また、アドレナリンは一度分泌されるとしばらく止まらない傾向があります。これらの性質により、一つの物事をどこまでも完全に成し遂げようとしたり、怒り出すと止まらないなどの症状が出ます。