テトラサイクリン系薬剤の変色

テトラサイクリン変色

この記事ではテトラサイクリン系薬剤による歯の変色が原因で、審美的な意識について大きく影響を及ぼしていることをお伝えしました。

また、変色の原因のうち、多くのものがテトラサイクリン系薬剤によるものであるという驚くべき結果があったことについても言及しました。

これらの調査の結果が悩みの大部分を反映しているかどうかは今後の課題になるかと思われますが、テトラサイクリン系薬剤の普及や使用量を鑑みると、受診していない患者を含めた潜在的な数字を考えるとおおよそ外れていないのかもしれません。

以前、ホワイトニングの禁忌症もしくは慎重対応の対象に「テトラサイクリン服用者」という項目がありました。そして、改善はあまり期待できないという見解がほとんどでした。

これは、テトラサイクリン系薬剤による歯の変色が緑や黒に近いものと考えられていたため、従来の方法ではそれらの色は消え切らないという考えだったためでした。

このことは、ホワイトニング剤の影響を及ぼす範囲がエナメル-象牙境付近であることより、さらに深層の変色であることやエナメル-象牙境付近にある象牙芽細胞の関与に関する考えを再考する可能性を含むかもしれません。

また、近年には通常よりもホワイトニングの期間を延長して行うことで、従来考えられていたよりもある程度満足のゆく改善がみられるという報告が増えています。

さらに、こちらでお話ししましたように、テトラサイクリン系薬剤の変色は褐色や黄色の変色も含みます。そして、これらの変色は従来のホワイトニングでも改善が多くみられてきました。

中には加齢による褐色変化や歯髄の状態などのテトラサイクリン系薬剤以外の原因によるものと判断されていた可能性が、ある程度の割合であったであろうことが予測されます。

このことはテトラサイクリンによる変色自体がホワイトニングが不可能であることを指してはおらず、その変色の程度により治療効果も分類がなされていますが、さらなる改善の余地があることが考えられます。

そこで今回は、「なぜテトラサイクリン系薬剤によって歯に変色が起きるのか?」についてお話ししてゆこうと思います。

抗生物質については近年、風邪との関連が低いため、むやみに処方しないようにという勧告が厚生労働省よりありました。単に風邪に効かないだけなら処方の注意までには至らなかった訳ですが、その背景にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌や多剤耐性菌アシネトバクター、NDM-1/NDM-1産生菌などの抗菌薬(抗生物質)に耐性をもつ因子を獲得した細菌の出現とその拡散が問題になっていることがあります。その他、腸内細菌への影響や、その変化による免疫系の乱れなど懸念する材料がたくさんあるからかもしれません。そして、その根本には抗菌薬(抗生物質)の多用があります。

歯科においては、1948年にクロロサイクリンが使用開始されてから8年後の1956年にテトラサイクリン変色歯の報告が行われています。その後、1960年代に入って変色歯の報告が続いたことにより、世界中で問題が明らかとなりました。

日本では1965年頃からテトラサイクリンの使用量が増加し、変色が多くみられるようになりました。1969年には使用説明書の注意書きに記載されています。

1998年には注意喚起が大きく記載されるようになり、医療情報提供書への記載も行われるようになりました。その中には一過性の骨発育不全、着色、エナメル質形成不全についても言及されています。

テトラサイクリン系薬剤の特徴

薬理作用や効果、副作用などの詳細は添付文書にてご確認頂くとして、この薬剤の特徴を簡単にご説明すると

・黄色系薬剤
・分子量600前後
・歯、骨、肝臓、脾臓、胆汁、唾液、乳汁、骨液、胸水、歯肉溝内液に高濃度に存在
・腫瘍細胞にも高濃度にみられる
・紫外線照射で輝黄色から緑黄色の蛍光を発する
・ミネラル(鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、アルミニウム、カルシウム、マグネシウムなど)とキレート結合する
・胎盤を通過可能
・骨や歯に沈着する

などが挙げられます。

硬組織への影響

歯や骨などの層状の硬組織に関しては、

・石灰化が進行段階にある部位
・ハイドロキシアパタイト

に沈着しやすいという特徴があるようです。

その特徴により、象牙質のように管周象牙質と管間象牙質が交互に層状をなす組織においては、テトラサイクリンは線状に沈着して観察されます。

また、石灰化の過程が複雑なエナメル質においては、瀰漫性にテトラサイクリンが分散します。

テトラサイクリンの沈着は、対象の硬組織が喪失するまで留まるようです。そのため、骨は代謝されるのでテトラサイクリンはいずれ消失します。しかし、歯にはそのような代謝がないため消えることなく留まり続けます。

また、ヒト象牙質の観察によれば、テトラサイクリンは有機基質にも結合する可能性が示唆されています。

さらに、テトラサイクリンは弱酸性中、光線、高温、多湿の条件下で「異性化」します。このことは、テトラサイクリン変色歯の色調が、若年時には淡黄色や黄色を呈していたとしても、年齢の増加とともにその黄色が濃くなったり褐色に変化することを示唆します。実際に、いくつかの研究によりこの特徴について報告がなされています。

テトラサイクリンの異性化

例えばテトラサイクリンは光線を浴びると光酸化(Photo-oxidation product)されAODTC(4a,12a-anhydro-4-oxo-4dedimethylaminotetracycline)になります。この過程では黄色を呈していたテトラサイクリンが赤紫色になります。

変色歯はクロールテトラサイクリンは灰褐色であり、その他は黄色であると言われていますが、経時的に茶褐色を呈するようになります。

これらの反応は萌出後の歯でも髄腔内から第二象牙質に取り込まれて変色をもたらす可能性が指摘されています。また有機基質にも取り込まれていることから、加齢変化との関連も指摘されています。