フッ素について

フッ素

最近なにかと話題になっている「フッ素」について今回はお話ししてゆこうと思います。話題と言いましたけれども、もちろんご存知ない方もいらっしゃると思われます。簡単に触れておきますと、今日まで歯科医院だけでなく歯磨剤や洗口剤として一般的に広く使われてきたフッ素について、その効果や毒性や危険性などの話題があちらこちらで聞かれるようになりました。そのために、よく勉強している一部の歯科医療関係者の間では混乱が起きています。混乱の発端となった意見を大まかにみてゆきますと、
・フッ素は安全ではない
・フッ素は虫歯予防に有効ではない
・あちらこちらに問題を起こす猛毒だ
のようなものがあります。一番目と三番目については同じような主張かもしれないので、大きく2つの主張になるかと思われます。この手の議論で厄介なのは、これらの主張をする者たちが検証する機会を与えてくれないことです。具体的には、論文が捏造されている・企業と癒着して有利なデータを出しているなどの意見を併用するので、それこそ検証も議論も出来ないという状況です。そもそも「私だけが知っている」という発想自体が低俗なものなので、その発想の持ち主の意見を真に受けることはほとんどありあえないと思いますが、それから派生する2次情報に多くの人たちが混乱してしまうのかもしれません。

捏造は一部では本当にあるかもしれませんし、実際に発覚したこともあります。しかし、それによって多くの論文も偽造されているかのような見せ方は姑息に感じます。論文という体系がいけないのであれば、その多くの論文を体系化した上に成り立った学問で教育を受けた訳ですから、そこから渡された権利も資格も当然返上してから一個人として意見をする方がいいのではないかと思います。実際に世の中には論文と研究の積み重ねがあって、私たちは24時間灯の下で快適に過ごすことが出来、もうすぐ自ら運転することなく目的地まで行かれるようなところまできています。研究・論文には大いにそのような側面もあることを忘れてはいけないように思われます。このように言うと「そんなことわかってる」「わかった上で言っている」という意見が必ず出てくるのですが、だったら強調し過ぎないで頂きたい。そもそも論文や研究というものは色々な面が出てくるものであって、どちらも100%絶対にこうなるという話のものはありません。両立性を欠いた時点で論文の解釈にバイアスがかかっていると判断されてしまうので、そのような態度ではいつまで経っても相手にしてもらえません。相手にしてもらえれば、そこまでいきりたって大声を張り上げなくても済みます。まずはそこからではないでしょうか。確実性のない世界で不確実をなるべく減らそうと真剣に努力している世界の偉人への感謝も忘れてはいけないのではないでしょうか?本当に高尚な場で話を設けたいという態度になっているのでしょうか?

実際に企業からお金をもらった研究者が何人いる、とかそのようなデータ集めに躍起になっている人もいるようですが、その人の金銭感覚と金銭を受け取ったとされる人の金銭感覚が同じかどうかも分かりません。少なくとも、私の知っているお偉いさん方はみんな偉そうです。感覚も凡人の私のような者とはまるで違います。ある程度の金額では「こんなもんで俺を手懐けられると思ってるのかよ」と言わんばかりの人たちです。ですから、この”やりとりがあった”というだけではデータが企業に有利になるかどうかまでは何の証明にもならないと思います。

このように様々な面が論文にはあるわけですが、名前や所属まで出して出来るだけ公平に意見の交換が出来るように、このような場をわざわざ設けています。そして、現状ではこれ以上の仕組みは見当たりません。このことに不満があるのであれば、この論文の体系を超える新たな体系を組み直すしかないと思われます。それが出来ないのであれば、この制度の上で良い方向で用いるしかありません。

歯科と全身の影響についてもほとんどの歯科医師が触り程度のことしかわからないのが現状です。ガンで亡くなられた人の脊髄液中に多量のフッ素が含まれていたという話もありますが、そもそもフッ素は硬組織に保存されますので死後に脊柱から溶出しただけかもしれません。そもそも弱っている時は体の異化が進むので溶出することは想像に難くないですし、その際に代謝も落ちていれば貯まる可能性もあります。そして、そうであれば脊髄液に蓄積されていたフッ素は発症の原因ではなかったかもしれません。

さらに、これらは水道水にフッ素が含まれていない地域のご遺体から検出されたので歯磨剤の影響かもしれないと考えてよい、というような乱暴な記述も目にしたのですが、自然界にもフッ素は存在します。その土地に多く含まれていればその地で育った作物を食べるわけですから、体内に取り込む量は他の地域よりも多くなる可能性はあります。そのあたりの調査については記述が見当たりません。フッ素症はあったのでしょうか?日本以外でもフッ素は使われておりますが、人口は減っているのでしょうか?フッ素の安全性については100年以上前から議論されています。世界中の優秀な天才と呼ばれる研究者たちが100年も話し合っていて未だに結論が出ないものを、個人的な発言の強さだけで方向付けられることが実に残念です。少なくとも、現時点ではフッ素の毒性よりも有効性の方が明らかなことが多く、虫歯で困った人たちが多かったので運用されていただけだと思います。

そもそも、これらの話はフッ素を飲用した場合のものがほとんどですが、予防歯科での応用方法は局所塗布です。これらの薬物動態が同じということで議論がされているのでしょうか?いずれにしても、上記のような話はほとんど断面的なものの観察に過ぎず、どちらが正しいかという判断に用いるには両方に弱い面があります。

二重盲検試験やランダム比較化抽出試験などが完璧ではないことを承知の上で、完璧ではないそれらさえも証明を繰り返して辿り着くのは至難の技であるのに対し、どこかで聞きかじった感じでつべこべ言うのは如何に無責任であるかということが分かるかと思います。フッ素の有効性について科学的根拠がないという意見を持つ者でさえ、なんちゃら食というそれこそ科学的根拠がなさそうなことを一方では主張します。

私の知る限りのちっぽけな範囲のことですが、多くの問題は読み手側の解釈の誤りによって生じます。

フッ素に関して申し上げれば、近年の論文では「単独のフッ化物プログラムは世界中の”全ての”国々の”全ての”人々に推奨できないことは明らかだ」と言っています。歯科業界がフッ素を勧めてくるから逃げましょう、のような意見はそもそも見当違いということです。