プラーク中の細菌が・・・。

日本の人口並み

プラーク約1mgあたり、1億の細菌がいるといわれています。細菌の種類は正確には現在でも同定されていません。現在利用できる培養技術をもってしても培養不可能な細菌があり、十分に研究がなされていないからです。また、培養はできるけれども正しく同定出来ない種も存在します。現代の技術を用いても確認出来ないようなことや、わずかな重量の中に億単位の生物を集めること等を、毎日のように、いとも簡単に、口腔内では作られるということは本当に面白いことです。この素晴らしい能力を崩さないようにすることが、いかに重要かということがわかります。

プラーク全体としては分からないことがたくさん残っていますけれども、口腔内の部位別にはプラークの細菌の構成パターンは解明されています。

歯肉縁上プラークの構成

良好な口腔衛生状態の歯肉を調査すると、歯頸部の歯面にわずかではあるが細菌が存在します。きれいに清掃されたのであれば、おおよそ24時間経過しないとプラークは形成されません。その間に歯面に最初に付着した細菌は、24時間経過した際に形成されるプラーク中の細菌の構成に大きな影響を与えるといわれています。そして、適切な歯面清掃から3~8時間の間にみられる最初の細菌はstreptococciであることが明らかになっています。このstreptococciは24時間後には45%まで減少し、代わりにveillonellaが20%まで急速に増加します。このような変化はその後にも生じます。プラーク形成より3日後にはActinomycesが組成の25%を占めるようになり、嫌気性のグラム陰性桿菌は5%を占めるようになります。

このままプラーク形成を続ければ、およそ三週間にわたり変化し続けます。とくにActinomyces israelliをはじめとするグラム陰性桿菌が増加し、グラム陽性球菌は減少します。その後はプラークの厚みが増すにつれグラム陰性桿菌の割合が大きくなり、三週間も経過すると多くのプラーク細菌は成育出来なくなります。

「歯を磨いてはいけない」と主張している人達の言い分として「常在菌だから」というものがありますが、常在菌としての性質を唱えるには、これらの特異性や変化などが考慮され切っているとは考えにくいです。

しかも、これらの変化はかれらの主張する「砂糖」の存在しないところでの変化です。プラーク中の細菌数が激増し、唾液で流れていくということは口腔内に浮遊する菌も存在するということです。
歯肉縁上プラーク

プラークの変化の時系列

ごく初期に歯面に存在しているこの時のプラークの構成は殆どが剥離上皮細胞です。細菌はこの剥離上皮細胞上および細胞間にわずかに存在します。この中の構成は90%がグラム陽性球菌と桿菌で、残りの10%のうちのほとんどはグラム陰性菌となっています。

口腔内の清掃をやめると、はじめの2日間はこれらの細菌が全て増殖します。そして、グラム陰性球菌および桿菌が比率分布の大部分を占めるようになります。清掃をせずにそのまま3~4日経過すると、紡錘菌と糸状菌が急速に増加します。5~9日にはらせん菌やスピロヘータが出現し、成熟したプラークと同様の状態になります。7日経過のあたりでは球菌と桿菌の割合は50%前後に下がります。この後、3週間を経過しても細菌分布の大きな変化はみられなくなります。

初期の段階で付着している細菌も、徐々に歯面への付着強度を強め、いずれ不可逆的な付着となります。つまり、これら初期の細菌は後期の段階で形成されたプラーク組成の決定要素となるということです。したがって、これらの理由だけでも細菌を効率的に定期的に除去をすることに予防効果を期待することができると考えるのは妥当であるかと思われます。

唾液と飲み込まれる細菌

プラークが形成されたばかりの時の細菌数が約2倍になるのに要する時間は3時間程度だといわれています。これは1個の細菌が24時間で256個に増える計算になります。プラーク中には1mg中におよそ1億個の細菌がいるといわれていますから、この部分だけで256億個です。これらの細菌は多くがマテリアアルバのように唾液に流されて、常時飲み込まれます。近年ではこの時の細菌の一部が胃液によって消退することなく腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性が示唆されています。