歯科矯正のヘッドギア

成長ホルモン

上顎骨の成長は後方と上方の縫合部において新生骨が付加されることによって成長します。脳頭蓋底が長くなること、近隣の軟組織の成長に引っ張られることにより前方へ成長します。この時に生じる上顎骨が支持構造から離れて移動する際の縫合部に加わる張力により、新生骨が刺激されるとされています。

下顎骨の場合は周りの軟組織に前下方に引っ張られる際に、関節突起が顎関節機能を正常に保とうとする働きをするために後上方に成長するといわれています。

もしこれらのことが事実であるならば、上下顎骨を前下方に引っ張れば成長を促すことができ、後上方へ押し込む力を与えれば成長が抑えられます。この可能性については、ある時期では肯定され、次に否定され、再び受け入れられるようになってきました。ただ、どの程度までの成長を治療によってコントロール出来るのかについては以前として議論されています。歯に対する力のコントロールが本当に骨の成長に影響を与えるのかっも議論の余地があるところです。ただ、近年では成長の一時変異を生じさせる治療の臨床的効果は証明されるようになってきました。

上顎骨の成長の一時変異

上顎骨の成長を話す前に、歯と上顎骨以外できわめて重要な意味を持つものがあることをお伝えしておかねばなりません。それは、歯槽突起の成長です。

歯が萌出し、それに伴い歯槽突起も伴って成長するということは重要なひとつの側面です。なぜなら、思想突起の成長は前後および垂直方向の上下顎関係に大きな影響を及ぼすからです。治療においては、この歯槽性の効果と骨格性の効果については容易に分けられるものではないということを念頭に置きつつお話ししてゆきたいと思います。

歯槽突起を除く上顎骨の重要な成長部位は上顎骨と頬骨、翼状板と前頭鼻骨領域の縫合と正中口蓋縫合部であり、これは同時に成長を変える可能性も含みます。この縫合部の構造は複雑なものではなく、またコラーゲン性のものでもありません。

単純に、過度な上顎骨の成長を抑えるために、縫合部が離開する力に対抗する力を加えるだけであり、また成長が不十分であるときは本来生じるであろう縫合部の離開をさらに大きく広げるように付加的な力を加えるだけです。この時、縫合部に加える力を計測することは困難で、理論的に必要とされるものを知ることは出来ません。ただ、臨床経験から上顎骨の前方成長を抑制するには上顎の歯に中等度の強さの力を加えることや、反対に縫合部を離開させて成長を促すためにはさらに強い力が必要であることが示唆されています。

歯への影響

ヘッドギアなどを用いて歯に力が加えられると、歯根膜に加わる力に対して、ごくわずかな力が縫合部へと加わります。これは縫合部の方が歯根膜よりもより広い領域だからです。

このことは、たとえ上顎骨の過成長を抑制させるために発揮される中等度の力の強さであっても、歯を移動させる力よりも強いものであることを示唆しています。たとえば、両側500g(片側250g)であっても、上顎骨抑制には最低限の力ですが、歯には、とくに第一大臼歯には過剰な力としてフェイスボウから伝えられることになります。上顎骨を前方に成長させるための力は1000gを超えます。

では、なぜ歯が大きく動いてしまわないのでしょうか?

強い持続力は歯根と歯根膜の両方に障害をもたらします。一方、強間歇的な力は障害を与えにくく歯の移動は引き起こすには不向きです。それは、強い力が加わっていないときに穿下性の骨吸収を引き起こす刺激が弱まるからではないかといわれています。骨性の効果を引き出すのであれば、強い力を1日何時間か加える方が歯への影響も減らせるので便利です。

以前は、ヘッドギアも1日12〜16時間装着するのも24時間装着するのも同じ効果だとする見解が多かったです。しかし、現実には24時間装着した方が歯がより多く移動したという研究結果が出ています。やはり歯の移動には持続時間が大きな要因となるようです。

しかし、一方で間歇的なヘッドギアの装着が骨の縫合部への影響を高められるかというと、それを立証するものはありません。

歯を移動させるために必要な力の作用時間は6時間以上であることが分かっています。これを満たさなければ骨の修復が生じません。

顎骨に力を作用させる時間帯

動物およびヒトにおいて、日内での力を作用させる時間帯別の違いについては、成長率の変動によってその成長が特徴付けられることが明らかになっています。

成長期の子供では、基本的に夜間に成長ホルモンが放出されます。これに伴い、長骨骨端部における新生骨の添加が生じます。最近の動物実験により、時刻によって歯の移動率が変化することが発見されましたので、成長ホルモンの分泌される時間との関係が一致することも十分に考えられることだと思われています。

ただし、ヘッドギアの着用が主に夜間であるのに対し、成長ホルモンの分泌は夕方から始まるので、就寝前よりも夕食後すぐに着用することが望ましいと考えられます。

ヘッドギアの主な使用期間は12〜18ヶ月であり、これは成長速度と患者の協力度によって決まります。