ホワイトニングとEBM

エビデンス

EBM」とは「Evidence-Based Medicine」の略で、日本語では「科学的根拠に基づいた医療」などと呼ばれているもので、近年の医療における治療指針のような役割を持っています。

この考えは2001年に文部科学省にモデルコアカリキュラムとして提示され、翌年から教育機関において臨床実習前の共用試験としても行われるようになりました。

この辺りの年代を境に、歯科においてはそれ以前の「経験を基にした治療」と導入後の「EBMに基づいた治療」が大きく乖離してきている嫌いがあります。当然にそれらを融合している先生方も多くいらっしゃいますが、大半はそうではなく、その結果「経験則重視」と「科学的根拠重視」に偏重がみられることもしばしば起きるようになりました。

この様相と、参入してきた経営コンサルタント達の戦略が合間って「インプラント〇〇本の実績」などの経験を訴求した宣伝が広く普及する一方で、その方法がEBMと乖離していることもあります。

また、特に歯周病の分野に多い「科学的根拠に基づいた治療」なるものの拡散は、結果論に対する解釈の傾向が強まり、今までの経験や実績を排斥するかのような気配すら感じられます。

昨今の口腔事情を考えると、そのどちらも誤りを含むように感じられます。

現時点ではバランスよく、その時点で利用可能な最も信頼できる情報を踏まえて、患者に最善の治療を提供するということが望ましいのかもしれません。そこには、当然に経験を踏まえながら、かつバイアスのない態度を保持する心構えが必要になります。

ここでは、近年注目され重要視されてきているEBMについて、とくにホワイトニングのEBMについて触れてゆこうと思います。

EBMの手順

EBMを実践するにはステップを踏むことが重要になってきます。そのステップとは、以下のようなものになります。

1:疑問の定式化
2:情報収拾
3:情報の批判的吟味
4:情報の患者への提供
5:1〜4のフィードバック

この第1ステップにて疑問を定式化するために、PE(I)COというものを使用し、患者の個別の解決すべき問題を明確にし、整理してゆきます。
PE(I)COは以下のような手順を踏みます。

・P:Patient どんな患者が(主訴、年齢、性別など)

・E:Exposure ある治療/検査をするのは
 (I:Intervemntion)

・C:Comparison 別の治療/検査と比して

・Outcome どうなるか

というように、問題を手順に則って定式化してゆきます。

そして、これらの問題はカテゴライズされて、そのカテゴリー別に信頼性の高い最適な研究デザインを選択してゆくことになります。カテゴリーと研究デザインの大まかな関係は次のようになります。

・病因  コホート研究
・頻度  横断研究、コホート研究
・診断  横断研究
・予後  コホート研究
・治療  ランダム化比較試験
・為害性 ランダム化比較試験、症例対照研究

コホート研究には時系列で見た上で、前向き(未来)のものと後ろ向き(過去)のものがあります。ある方法を適用した実験群と、適用していないコントロール群の差を検証する試験になります。

横断試験は継時的にいくつかの時点で測定を多なって変化を検証しますが、コホート研究とは違い、ある対象者を継時的に測定してゆき、特定時期で調査する方法になります。

ランダム化比較試験はRCT(Randomized Controlled Trial)とも呼ばれます。治験や臨床試験などで採用されている方法です。テーマとする新しい治療方法は、従来の方法と比べると効果があるのかどうか・プラシボではないか?などを検証する方法になります。

現在のEBMはヒトを対象にした臨床試験論文を参照することが重要であるとされています。

しかし、臨床試験は実験デザインにより結果が異なる場合がある為、研究内容の妥当性の評価が必要になります。実際には、セミナーや講習会などではそのことに触れることは少なく、論文の結果のみを提示して講師の支持したい意見や商品に都合の良い報告がされてしまうこともあります。

これらのことにより、基礎研究との間に矛盾が生じてしまうこともしばしば見受けられます。その矛盾や失敗については肯定的な取り組みがなされ、IN COMEと OUT COMEは違うなどの解釈が入り、むしろその違いを発見したことを称賛、肯定する傾向にさえあります。このことについては一貫性の崩れていることは気にならないようで、古くから基礎研究の学者の方達から指摘されてきたことでした。

ホワイトニングのEBMは?

現実に行われているホワイトニング処置ですが、EBMが取り入れられているかというと、残念ながらEBMに則って系統的に行われてはいないように思われます。

具体的には、導入開始から経験的な方法を漫然と使用しているようです。面白いことに、ある会社の認定したプログラムを体験しただけで資格が発行されるようなものも出回っています。

より効果のある方法、薬剤や機材を常に探しているので、結果は単発的なものになり、正確な記録の蓄積が起こりません。このことから、他の治療者にとってもあまり有効な情報は得られないのが現状です。