レジン系材料の接着

レジン系材料のステップは1,コンディショニング 2,プライミング 3,ボンディング の3ステップが基本となります。以前にもお話ししましたように、この手順が多いために口腔内では余計に操作時間がかかるということが問題視されました。そして、そのことが予後にも影響を及ぼすという心配を受けてステップの短縮を試みるようになりました。しかし、ステップ数の減少が接着特性に影響することも考えられます。

レジン系材料の接着

今回は、ステップ数を減らした接着システムにおいてそれぞれの特徴をお話しします。今回のお話で、自分がどのような治療をされているのか、省略されていないかなどもわかると思います。

2ステップ・トータルエッチングシステム

このトータルエッチングシステムは1,コンディショニングを行い、2,プライミングと3,ボンディングを1回の操作で行うシステムです。接着歯学を勉強している先生の中には、今で3ステップのトータルエッチングシステムを頑なに行っている先生もいらっしゃいます。根拠としては、エナメル質に対するリン酸エッチング処理は確実なエナメルタグを生じさせること。そして、そのレジンタグへ行うレジンの浸透と重合は古くから証明されてきているからだということもあるようです。確かに、象牙質への接着と比べてエナメル質への接着は強固で確実なものであり、辺縁封鎖の観点などからも有効であるように思われます。これを周到して開発された2ステップトータルエッチングシステムですが、短期的な接着強さは証明されたものの、象牙質との接着界面が露出した状態では4年ほどで有意に接着の低下がみられています。この結果は、透過電子顕微鏡像においても確認されていて、3ステップは樹脂含浸層の底部までコラーゲン繊維間に約20奈のnmのスペースが認められてレジンが浸透していることが確認されているのに対し、2ステップは樹脂含浸層底部はコラーゲン繊維間のスペースが不明瞭で、コラーゲン繊維の走行も確認できず、レジンの浸透が不良であることが確認されています。このことより、2ステップシステムの樹脂含浸層へのレジンの浸透が不十分であることが長期耐久性に劣る原因になっていると示唆されています。

セルフエッチングシステム

セルフエッチングシステムは1,コンディショニングと2,プライミングを同時に行って、3,ボンディングを行うシステムです。このシステムの場合では1,コンディショニングと2,プライミングを行なった際には水洗が不要です。これは2ステップトータルエッチングシステムの際に水洗によって樹脂含浸層の形成が不十分になったという欠点を補うために考えられているようです。セルフエッチングシステムでは水洗を不要にするために機能性モノマーを主要化合物として用いています。機能性モノマーはレジン成分であり、これ自体がエッチングを行い、そのまま接着界面構造の一部になります。これにより、レジン成分の浸透が不十分な脱灰象牙質底部の脆弱層が発生しないようにしてあります。反面、この機能性モノマーの性能自体により耐久性などの予後に影響が出る可能性も示唆されています。

この機能性モノマーにはいくつか種類があり、4-MET・phenyl-P・MDPなどがあります。これら機能性モノマーのうち、アパタイトに吸着する量に違いがあることが分かっており、その量の違いによってサーマルサイクル試験(TC)の結果が異なることが明らかになっています。TCとは5℃と55℃に60秒間ずつ交互に浸漬することを1サイクルとしたもので、口腔内の温度変化を仮に再現することによって材料の安定性を検査するものです。これによると、ある機能性モノマーはTC100000回でも接着強さの低下がみられず、またある種の機能性モノマーはTC30000回程で有意に低下しました。この際に樹脂含浸層内のコラーゲンまで劣化が認められています。このような違いからも、どの材料で、どのような接着システムを採用するかによって予後が大きく異なってしまうことが伺えるかと思います。

1ステップ接着システム

近年開発されたワンボトル・ワンステップ接着システムはセルフエッチングシステムの一種に分類されます。接着に必要な成分の全てを一つの容器に入れ、脱灰とレジンモノマーの浸透が同時に行われるようになっています。多くのシステムでは溶液のpHは2に設定されていて、マイルドな脱灰を示します。この接着システムは全体的に、2ステップのセルフエッチングプライマーやリン酸エッチングを併用するシステムに比べて接着強さは低い傾向にあるようです。また、健全象牙質に比べて齲蝕反応象牙質への接着強さが減少する傾向も認められます。先述しました通り、樹脂含浸層の形成が不十分な場合にはレジン浸透性が下がりますので接着強さが下がることが予想されます。実際に透過型電子顕微鏡像では脱灰がマイルドなために樹脂含浸層は不明瞭になっています。このことは先述しましたように長期の耐久性にも影響を及ぼすと思われます。また、ある商品では健全象牙質との界面に多数の気泡が認められ、その一部は象牙細管の開口部に位置します。レジンの重合を阻害するものとして酸素が挙げられますが、このような点からもその影響を検討しなくてはいけないと思われます。また、溶液中に親水性成分と疎水性成分が混在し溶液は相分離しやすい。また、溶媒としてアセトンや水やエタノールを含んでいるため、接着界面は象牙細管など生体側からの水分も加わりover wetな状態になりやすく、気泡状の欠陥構造を生じることがあります。ただ、今のところこれらが接着強さが不十分であることの証明にはなっていないようです。