光触媒として使用される二酸化チタンについて

酸化チタン

IARC(国際癌研究機関)の発表しているIARC発癌性リスク一覧によれば、二酸化チタンは以前、グループ3(ヒトに対する発癌性が分類できない)に属していました。ところが、2006年にグループ2Bに変更されていいます。このグループは上から1・2A・2B・3・4の5段階から構成されていて、数字が小さいほど発癌性が高いものという分類がなされています。

このうちグループ2BはPossibly Carcinogenicつまりヒトに対する発癌性が疑われる化学物質、混合物、環境と定義されています。また、妊娠中のマウスに二酸化チタンのナノ粒子を皮下注射した研究では、胎児の血液脳関門や精巣関門と通過して脳や精巣に到達し、機能低下を招いたという報告がされています。

とはいえ、二酸化チタンはその特徴的な性質のため様々なものに応用もされて、私たちの生活を豊かにしてくれているものでもあります。

歯科におけるホワイトニング治療においても、一部の薬剤にはこの二酸化チタンが含有され治療効果を高めてくれています。また、近年の歯科用インプラントの表面性状として臨床で多く使われています。

そこで今回は、この二酸化チタンについてお話ししてゆこうと思います。

二酸化チタンとは

二酸化チタンは単に酸化チタンやチタニアとも呼ばれる物質で、組成式をTiO2と表記する式量79.9の無機化合物です。二酸化チタンの結晶形態にはアナターゼ・ブルッカイト・ルチルの3種類があります。

ルチル型が最も安定していて、アナターゼ型が920度、ブルッカイト型が650度でルチル型に転移します。ルチル型は活性が低く熱安定性に優れているため、白色顔料や紫外線吸収材として塗料や絵具、化粧品などにも応用されています。日光などに長時間晒されると光触媒の作用により、脱色したりひび割れを起こすことがあります。これを防ぐために絵具や化粧品などに用いられる場合には無機材料によるコーティングが施されています。

化粧品メーカーによっては、経皮吸収や活性酸素の発生を防止するためにコーティングがされていると回答があることもあるようです。

アナターゼ型のバンドギャップは3.2eVでとても大きく、387nm未満の短波長の光を吸収するなど、光触媒としての活性が非常に高いです。短波長の光を受けると水と反応して活性酸素種を生成する性質があります。

用途としては、

・化学物質の分解
・微生物の分解
・オフセット印刷
・日焼け止め
・色素増感太陽電池

可視光吸収がないということで日焼け止めに使われている一方、増感色素を担持させて可視光線から赤外線を取り込む電極材料として用いる研究がされているなど、様々な分野で応用されています。

また、ホワイトチョコレートやチーズなどに食品添加物として使用されていることもあります。

二酸化チタンの光触媒作用

二酸化チタンの光触媒作用は、二酸化チタン粉末を水中に入れて光を当てると水素と酸素に分解されるという発見が報告されたことにより、その応用研究が始まりました。この光触媒反応は次のような順序を辿ります。

1:光吸収によって価電子帯の電子が電導帯に励起されて自由電子と正孔が生成される。同時に電荷の分離も生じる
2:電子と正孔による表面活性種の生成
3:水や過酸化水素の分解とラジカルの発生、酸化作用のは発現

この過程で生じる正孔は、+3.0Vという高い酸化電位を持ち、色々な化合物を酸化できます。また、中間生成物としてのヒドロキシラジカルにより有機物が酸化されます。この酸化力は化学薬品や細菌に対して分解作用を示します。この分解作用には次のような特徴がみられます。

・光強度を調節することにより、分解活性も調節することができる
・一定の光強度の下では、反応速度も一定となる
・光照射を止めると反応も直ちに止まる

二酸化チタンの光触媒反応により発生した活性酸素種は、寿命が短く直ちに消失して反応系内には残留しないとされています。

また、

二酸化チタンが活性化する主な波長域は350〜410nmですが、不純物を混ぜ入れることでこれをシフトさせることが出来ます。ホワイトニング材の中には二酸化チタンに窒素をドープさせ、長波長側で反応が生じるようにしてあるものもあります。

光触媒の特徴にあるように、その作用は光照射しているときのみ発現されるので、ホワイトニング治療の場合は連続照射が可能なマルチアーチタイプ照射器が主流となってきています。

以上のような二酸化チタンの特徴を応用することで、過酸化水素をより低濃度で使用できることにより安全性の向上やホワイトニング効果の向上を期待できるとして注目されているようです。

この他、近年ではチタンが電磁波を集めるということで携帯電話のアンテナなどに応用されていました。iPhoneなどのいわゆるスマホにはアンテナがないため、電波受信の改善のためにチタンを応用したケースなども出ています。電磁波といえば脳血流量の減少、平衡感覚障害、筋力低下、関節可動域の減少などもいわれています。

ホワイトニングの場合では、チタンの応用は一時的なものですが、歯科用インプラントとなるとそのようにはいきません。今後のこれらの研究が進んでくれることを期待したいと思います。