基本的な価値基準と倫理的配慮

価値基準と倫理

専門家とは

専門家というものは何か?ある書物にはこのようなことが書かれています。

・広い知識の専門的な教育を受けている
・研究や調査によって得られ知識の学問的体系を有している
(中略)
・自立しており、判断力のある業務行動をとる
・その専門職独自の倫理規定を有している

これらを見てみると、専門家であることの条件に「倫理」や「価値基準」を形成する学習は必須であようです。

なぜ価値基準と倫理感が必要なのか?

歯科衛生士は日常業務の中で、道徳的・倫理的・法的に様々な状況に遭遇します。その中において、全ての専門行為は倫理の原則に則って行われなければなりません。そのために、業務中の倫理状況に敏感であることやそのことに気付く頻度が上がることが目標とされます。基本的な価値基準と倫理的配慮は歯科衛生業務のあらゆる場面で必要になります。

これらのことは私がオカルト的にお話ししているのではなく、米国歯科衛生士会やカナダ歯科衛生士会の規定などに実際になっているものです。そして、双方の歯科衛生士会会員はその規定を勉強し、それに即して実際に行動しています。日本の場合では、この分野について学習する時間が足りないと思われ、個人の倫理観に依存する部分が非常に大きように思われます。それを「個性」と呼ぶこともあるのかもしれません。けれども、個性に傾倒して任せっきりにしてしまうと、特に初期においては習熟度の浅さから誤った方向へ行きがちなために「執着」につながってしまうこともあり、更なる解釈へと深める勉強への価値観を下げかねなくなってしまいます。「個性の尊重」の尊重の部分にも都度に合わせた扱い方があると思われます。

あえて倫理規定を設けているのには、専門職としての「品行」について基準を定め、専門業務だけでなく生きてゆくうえでの強い倫理観を持たせるために必要だからです。業務の倫理的立場に対する意識形成を図り、感受性を高める狙いがあります。おそらく、これを学ぶ前から多くの人が価値基準と倫理感を持っているはずであり、それらはテレビや雑誌などのメディアや周りの人間関係から学んできたものだと思われます。そして、歯科衛生士としての倫理はこれから身につけるものであり、過去に獲得してきたように同じく新たに学んでゆくものであることは明白です。しかし、この時にそれまでの価値観を保持しようとし、抵抗を示す者も少なからずいます。まさにそれこそが「執着」による影響であり、その場合はやはり個性に任せ切ることが出来ないと思わざるを得ません。

これらの原則については、重要性の優先性を決めたものではなく、決定に際しては自然科学的な論理についても考慮すべきであると論じられています。つまり、倫理観を規定することによって個性を奪うというものではなく、倫理的配慮を行う上で個性を操作するように促すものとなります。価値観の違うものが同じものを学習しても、学ぶ内容が変わってしまいます。医療が科学から遠のくことを拒むためには、個人レベルでの倫理感や価値基準の醸成は必ず必要になってくるものです。「最終的には自分が大事」などという言葉をよく耳にするようになりました。けれども、そんなものは当たり前であって、その性質が当たり前のようにある我々が人を思いやって行わなくてはならない仕事だからこそ、意志の力を使って倫理と価値基準を高める学習が必要となる訳です。

価値基準(core values)

価値基準(core values)は倫理的な行動の原則であり、専門職の規約の真髄とみなされます。

1)歯科衛生の価値基準
・個人の自立
・敬う気持ち
・秘密の保持
・社会的信頼
・危害の回避
・善行
・正義と公平
・真実

2)人としての価値観
・歯科衛生士は患者に提供するケアにふさわしい人格的特質と美徳を身につける
・価値観、態度、義務履行能力について定期的に自己評価する

3)患者第一
・専門家であるので患者第一に考える責任がある
・差別なく口腔ケアを行う倫理的、道徳的な責任がある

4)生涯学習:倫理的義務
・最善のケアを保証する
・能力を維持する
・新たな研究から科学の進歩を学ぶ
・根拠に基づいたものを提供する
・患者の権利を守る

倫理の適用

倫理学では問題の状況により「倫理的な問題」あるいは「倫理的なジレンマ」のいずれかであるとみなされます。

1)倫理的な問題
・置かれた立場は比較的明確
・業務の標準的な規範を基にした判断によって解決されることも多い

2)倫理的なジレンマ
・道徳的に正しい二つの選択肢、あるいは行動方針が伴う問題
・答えが一つとは限らない
・選択次第で結果は異なる

これらは一時期の感情や突発的な想いによるものではなく、多くの要素に対処した上でなければ行動を決定する事は出来ません。さらに、一度意思決定が下された場合においても、再評価が必要となり、状況次第では再検討をやり直すことも行う。