床矯正(プレート矯正)

最近、お手軽でお値段もお手頃ということで床矯正というものが流行っています。話を伺うと夜間のみの使用ですとか日中も装着しているですとか、歯列のアーチを広げるですとか抜歯を併用するですとか、小児であればどのような場合でも出来るようなお話もあり、色々と錯綜しています。

床矯正

そこで今回は床矯正(プレート矯正)と呼ばれるものについてお話ししたいと思います。

床矯正とは

床矯正(プレート矯正)はある一派の先生方が始めたシステムで、多くは後にワイヤーを用いた矯正に移行してゆくような流れになっています。

たとえば、ワイヤー矯正だけでもエッジワイズ法・ベッグ法・ツィード法・バイオプログレッシブなど様々な流派があります。マウスピース矯正でもEssix・クリアアライナー・インビザラインなど色々とあります。これらにはそれぞれメーカーも協賛してその流派に特有の装置などを販売しています。そして、それぞれがそれぞれに講師の先生を立て、その普及に励んでいます。

一昔前までは矯正は専門性が高く、矯正歯科医を対象にそれらの講座は催されてきていましたが、近年では自院に来院した矯正希望の患者さんを矯正歯科医に紹介するのも大変だということで、一般歯科を中心に治療されていた先生方も矯正をやるようになりました。その流れもあり、矯正の講座も広く受講可能なものとなり、一般歯科医でも簡単に矯正治療が出来るようにとシステムが組まれるものも出て来ました。

Damonシステムやクリアアライナーなどは特に一般歯科医にも普及するように宣伝されていまいしたので、多くの先生方が参入して来ました。矯正治療の普及は好ましいことですから、これらの流れはどんどん広まってほしいところなのですけれども、「簡単にできる」ということを強調し過ぎて臼歯部の頬側傾斜や傾斜移動や捻転して終わるような失敗例も増えました。

私が過去に勤務していた法人でも床矯正(プレート矯正)を行っており、私の知る限りでは上述したように、早期に床矯正を始めて永久歯に生え揃ったところでワイヤー矯正に繋ぐというシステムのものを導入していました。エッジワイズが基本としてあり、各流派があり、それらがさらに細分化してシステムがある、ような仕組みになっています。私自身はシステムとは関係なく矯正治療を行なっていたのであまり気にしていませんでしたが、システムを手伝うことがあったので念のため勉強だけはしておきました。

床矯正(プレート矯正)は確かに昔からある手法です。昔からあるので、その適応症や治療方法なども多くが明らかになっていますので、そのことをお伝えします。

床矯正(プレート矯正)は可撤式装置の一種で、これを用いた歯の移動は大きく2つに分類されます。(床矯正(プレート矯正)はシステムにおいて名付けられたものかもしれないので、より正式に近いアクティブプレートと呼ぶことにします)
1:歯列弓の拡大
2:歯列弓内における位置異常歯の再配置

叢生の程度がひどくなると歯列弓拡大後に再発しやすくなるため、長期的には抜歯を併用した方がより良い治療結果を得やすいといわれています。ですから、アクティブプレートは2,3mmのスペースが必要な時にのみ最も効果を発揮します。

アクティブプレートの構成

アクティブプレートの主要部分はベースプレートになります。これはレジンや熱可塑性樹脂などで出来ています。このベースプレートにスクリューやスプリングが埋め込まれ、クラスプが取り付けられて装置の基となります。

拡大床の動的要素の多くはスクリューになり、左右の床部を連結する形を取ります。キーを用いてスクリューを開大すると2つの床部は左右に分離する作りになっています。ちなみに、スクリューを使用するメリットとしては拡大量がコントロール可能であることと床部が2つに別れても丈夫というものがあります。デメリットはスクリューの力系が理想的な歯の移動を起こす力系とは大きく異なるということが挙げられます。理想的な力系とは弱い持続的な力のことであり、望ましくないのは急速に減少する強い力がかけられることです。装置を急速に再活性化することで歯が障害される恐れがあります。その一方で、多数の歯にスクリューを用いた力を加えると個々の歯の受ける力は小さいです。

アクティブプレートの問題点は、きわめて適合の良いクラスプを使用したとしても、力の大きさが大きすぎると装置が浮き上がってしまうことです。浮いて適合が悪くなるということは、床部分が歯へ接触する部分が予定とは異なってしまうことにあります。多くの場合、床部分は歯頸部寄りの最大膨隆部に設定されているため、装置が浮いてしまうと床部分が歯を抱えることがなくなります。この時、どこにも力がかからなくなるか、一部の歯にだけ力が加わるなどの事が生じてしまいます。歯単位でみると一点での接触となり、その作用点が回転中心からずれてしまった場合には捻転や傾斜移動を起こします。また、抵抗中心から作用点の距離が増すためにモーメントが大きく働くようになり、提出を伴う傾斜移動を生じさせてしまいます。

ほとんどのスクリューはネジを360°回転させると1mm拡大します。歯の移動量は0.25mmなので1/4回転となります。また、移動の程度は月に1mmを超えてはいけません。ですから、いかなる場合でも、1週間に2回以上は活性化してはいけません。適応症の範囲であれば、装着の際に適合を良くする方法はあります。

拡大

・前方拡大
前歯部反対咬合の際に用いられます。顎骨の成長が終わる頃の多くの場合、ジャンピングアプライアンスを併用することも増えてきます。

・側方拡大
正中で分割されたアクティブプレートは臼歯を頬側に傾斜移動させることにより歯列弓全体を拡大します。これは歯性の臼歯部交叉咬合の時などによく用いられます。しかしながら、これは正中口蓋縫合を開大し、上顎骨そのものを拡大する事ではありません。可撤式装置は骨格性の交叉咬合や片側2mm以上の歯性の拡大の適応症ではありません。

下顎歯列の側方拡大は、スクリューが歯列弓の前方部に位置するため、力が切歯と犬歯に集中してしまい過大な力がかかりやすくなります。矯正治療の原則として、犬歯間幅径の拡大は不安定を招くので通常は積極的には行わないです。

すべてのスプリット型床矯正装置は、歯の傾斜移動しか起こせません。それは、床縁が1点で歯と接触するからです。歯根に対して唇側や頬側に向かうトルクをかけるのに必要な偶力を生み出すことはできません。スプリング付きの可撤式装置を用いる場合には2~3mmの傾斜移動を行う事が出来ると考えます。それ以上移動するときは歯根のコントロールが必要になるので、1点接触の床矯正装置には出来ません。