情動の発達 6 ~親密さの発達~

親密さの発達

Eriksonの提唱した人生の8期における成人期、特に若い成人においては、一般的に他者との親密な関係をつくることから始まるといわれています。その中で、親密さがうまく発達するかどうかは、良い人間関係を維持するために積極的に妥協や自己犠牲を払うことが出来るかどうかに依存していると言っています。前段階において、自己を確立するために仲間からもある程度距離を置くことが必要と呈しているのに対し、一見この意見は矛盾しているようにも見えます。しかし、これは矛盾している訳ではなく、自己の確立をしている者が、もしくはそれに向けての行動をきちんと行っている者が、部分的に他者との親密さを構築しようとする場合においての提言であるわけです。親密さの発達のために積極的に妥協と自己犠牲を払うわけですから、ファミレスやファーストフード店でパートナーの些細な不満な点を仲間に面白おかしく話す関係のこととは明確に異なります。そもそも、この発達段階は順を追って発達してくるものなので、一足飛びに獲得出来るものではありません。この場合には、パートナーに対する自己の確立がなされていればそのような行動を取ることにはならないのですが、似て非なるものは誰でも行えますので見間違ってしまうことになります。本当の意味で親密さの醸成がうまくいくと、パートナーや仕事上の成功を目指して働く仲間との協力関係やパートナーシップの構築につながります。この点からすると、親密さの程度の低いお友達についての発達のお話ではないことに注意する必要がありそうです。

親密さの発達

孤立

Eriksonの言うところでは、この親密さの発達に失敗すると他者からの孤立をもたらし、他人と親しく接触するよりもむしろ遠ざけるような一連の態度を誘発することが多くなるようです。ただし、事を成すために他人との接触が減る結果、孤独になる場合もあるのですけれども、そのことによって情動の発達がなされていないかを判断することは難しいと思われます。とりわけ孤立についてはこの年齢層においてのみ生じることではなく、幼少期に他者と関わりを持ち始める段階から生じる可能性があるもので、必ずしも親密さと孤立は反対関係に位置するものではないと思われます。

歯科治療において

矯正歯科治療を希望する若者は、自分たちが欠点と認める歯並びについての治療を望むことが多いです。彼らは歯並びがよくなれば親しい異性の友人をみつけられることが出来ると感じていることも少なくありません。しかし一方で、矯正治療を受けた後の新しい容貌は、それまでに確立されていた関係を壊してしまう要因として働くこともあります。

異性との親しい関係が生み出されることに影響を与える要因は、容貌・性格・情動の質・知能などの全人的な要因が含まれます。これらの要因の一つでも大きく変化するならば、パートナー同士はそれまでの関係が変わることに気づきます。このような潜在的な問題があるために、若い成人の矯正歯科治療を行う場合には、治療を始める前に将来与えるかもしれない心理学的な影響について十分な説明をする必要があります。