情動の発達 1 ~基本的信頼の発達~

基本的信頼感覚

基本的信頼の発達

この基本的信頼の発達段階は年齢にすると生後〜18ヶ月齢に起こるとされています。この情動発達の初期の段階では与えられた環境の基本的な信頼あるいはその欠如が育成されます。信頼の発達が上手く出来るかどうかは、乳児の生理的・情動的な要求を満たす世話係としての母、もしくは代理人の存在に依存します。

Mothering

母として世話をするということです。これについては正確に応えられているものを探すことは困難ですけれども、支持されている理論はあります。その最たるものが親と子供の間に強い結びつきが生まれるということです。子供がその世界で基本的な信頼を発達させるためには、この結びつきが持続して育成される必要があります。子供の情動的な要求に対し、母親としての適切な世話がなければ身体の成長にさえも遅延などの影響を及ぼすことがあります。例としてmaternal deprivationというものがあります。母性愛の略奪ともいわれ、稀ではありますが、母親の愛情が不十分に得られずに育つ場合にみられる症候群です。特徴としては低体重・情動、身体の成長遅延などがみられます。これは特に稀で極端な例ではありますが、母としての世話の不安定さがあれば見かけ上の身体的な異常がはなくとも、基本的な信頼感の欠如が生じます。

分離不安

情動発達の初期の段階での親子の絆は、子供が親から離された時にseparation anxiety(分離不安)という感覚で強く子供の中に投影されます。これらのことからも、人は言語での伝達を行わなくても、感じることで影響を与えあっているということがわかります。

歯科治療では

この段階の子供の治療をする場合、親が隣りに座ってあげたり両親のうち一人が抱いてあげるといいようです。それから少し年齢がいくと、基本的信頼感覚の発達していない子供は、他者を信頼し信用することが必要な場面になっても、自らをそこに置くことに困難を覚えます。このような子供は極端に臆病で非協力的な患者となってしまいます。そうなれば、歯科医院スタッフ全員が信頼感を作るのに特別な努力が必要になります。私の場合はこの様子を観て、大まかな予想をし、それに当てはまるかどうか日常行動も観察していますし、食事内容も予想できるところまで予想します。そして、母体である母親の健康状態の関与も考えられるので、親御さんについても口腔内の金属や食事、体調などをお伺いします。

「性格」「個性」とよく聞きますけれども、生まれた直後の状態で性格や個性がある訳ではありません。お腹の中にいるときから臆病で「まだ出たくないので延期してください」と言う子はいませんし、「めんどくさいので勝手にやってください」と産まれてきた子もいません。生後からの影響によって周りの者が性格を形作ってあげているのだとういうことを忘れずに接して欲しいと思います。