抜歯後の治癒過程

抜歯後の治癒
親知らずをはじめ、残念ながら齲蝕や歯周病によって保存が不可能になった場合などにしばしば「抜歯」が行われます。

抜歯が行われて歯が無くなった後には、「抜歯窩」と呼ばれる穴が残ります。これは元々「歯槽骨」に「歯」が埋まっていた跡であり、歯が残存している場合には解剖学的な名称で「歯槽窩」と呼ばれていたものでした。

今回は、この抜歯窩の治癒行程についてお話ししてゆきます。また、その解説を行うにあたり、前提となる骨組織についても少し触れておこうと思います。

創傷の治癒の4段階

抜歯にしろ骨折にしろ、骨組織が損傷を受けた場合、その損傷のタイプにより再生と修復の両方によって治癒します。

「再生」とは、形態も機能も完全に元と同じように復元するような治癒状態の場合に使われる用語です。若木骨折や幅の狭い骨折で安定状態にあるものに主に行われます。

一方の「修復」とは損傷した組織が、その組織本来の形態や機能とは異なる組織形成に至る治癒形式のことをいいます。大きめの骨折などの際に行われる形式です。

この創傷部の治癒過程は次の4段階からなります。

1:血餅の形成
2:創傷部の浄化
3:組織の形成
4:組織のモデリングとリモデリング

これらは順番通りに起こることがほとんどですけれども、ある部位では重複して起こることもあります。

この治癒過程を阻害するものとして、

・創傷部組織中への血管増殖不全
・欠損内でmの血餅や肉芽組織の安定性の不全
・増殖能力の強い”非骨組織”の侵入増殖
・細菌感染

などが挙げられます。

ちなみに、「モデリング」とは本来の骨の構造を変化させる過程のことをいいます。この「モデリング」は骨組織に加わる外的な要因によって開始されるのではないかと考えられています。

一方「リモデリング」とは石灰化した骨の内部でのみ起きる限定された変化であり、骨組織の構造の変化は伴わないものになります。リモデリングの過程は骨が形成される時や古い骨が新生骨に置き換わる時、すなわち形成早期の骨がより強い耐性を有する層板骨へと置き換わる際に重要な役割を果たします。

抜歯窩の治癒

・抜歯直後
抜歯直後から24時間の間では、主に血餅の形成と溶血または出血の開始がみられます。血管は血栓により閉鎖され、フィブリン網が形成されます。このフィブリン網には赤血球や血小板が絡まった状態となっています。

・抜歯48〜72時間
抜歯後48時間以内には中性顆粒球、単球、線維芽細胞がフィブリン網に沿って遊走し始めます。
2〜3日(48〜72時間)のうちには血餅は収縮を開始し、血管とコラーゲン線維を伴う「肉芽組織の形成」が始まります。

・抜歯96時間後
3日後には血餅中の線維芽細胞の密度の上昇が認められ、徐々に肉芽組織に置きかわってゆきます。上皮の創縁部からの延伸増殖が明瞭になります。

・抜歯7日後

特に歯槽窩の根尖側3分の1の範囲において著しく肉芽組織の形成が行われます。この肉芽組織は血管網や幼若な結合組織から構成されています。特に根尖部分では類骨の形成を伴いながら、上方の創面が上皮に被覆されるような形で行われます。また、4日目くらいからは血餅の収縮が開始され、口腔上皮の延伸増殖が始まります。歯槽窩縁部に破骨細胞が認められるようになり、骨芽細胞と涙骨が歯槽窩底部に出現します。

・抜歯21日間後
類骨の骨梁形成により肉芽組織が再構築されます。創縁端部から発する上皮が幼若な結合組織の上面を覆いながら増殖します。類骨骨梁の形成は歯冠側よりの歯槽窩壁の周辺においても明瞭で、その骨梁のうちのいくつかは3週間後に石灰化が開始されます。

抜歯後1ヶ月では、抜歯窩の形を留めている部分は肉芽組織で満たされていて、その上を密な結合組織が覆います。骨梁パターンも浮かび始め、上皮の創傷面の被覆は完了している時期になります。

・抜歯6週間後
6週後ではX線写真上では骨形成がみとめられるようになります。軟組織は上皮化して創傷部は閉鎖しています。しかし、歯槽窩の内部に骨が添加されるまでには4ヶ月ほどを要し、その高径は臨在歯の骨レベルにまでは到達しておらず、骨量のパターンはリモデリングを持続しています。