接着のメカニズム

接着メカニズム

セルフエッチングシステムの接着メカニズム

接着メカニズムについてはそのシステムによって異なることもあります。たとえばセルフエッチングシステムにおける樹脂含浸層の幅は0.5~1.0μmであり、トータルエッチングシステムのそれと比べて非常に薄いです。また、セルフエッチングシステムを採用している商品の中にはハイブリッド層内にアパタイト結晶が散在していて、コラーゲン周囲のアパタイトが完全には脱灰されずに残存しているにもかかわらず接着耐久性が高いものもあります。このことも、トータルエッチングシステムの樹脂含浸層が、酸による脱灰で完全に露出したコラーゲンの層にレジン成分が浸潤するというメカニズムと大きく異なります。

象牙質内部はコラーゲン繊維の周囲にアパタイトがあり、コラーゲン繊維が剥き出しにならないような構造を取りながら強度を保っています。酸エッチング処理はこの構造を壊して、そのスペースにレジン成分を浸潤させることで樹脂含浸層を作ります。セルフエッチングシステムの樹脂含浸層は薄いながらも形成されることから、このシステムに含有される機能性モノマーは象牙質のアパタイトを部分的に脱灰しながら浸潤しているようです。このメカニズムから、それぞれの機能性モノマーがアパタイトとどのような反応をするか?どのようなものが生成されるのか?などが長期安定性に影響を与えると推察できます。

機能性モノマーとアパタイト

機能性モノマーとアパタイトとの間に起こる反応が長期安定性に影響を与える可能性が示唆されています。アパタイトと反応し、脱灰や接着をする機能性モノマーなどの分子は、最初のステップでまずアパタイト表面のカルシウムに化学結合します。この時、アパタイト表面に吸着する分子は、そのままアパタイト表面に留まります。脱灰する分子は2番目のステップとして、カルシウムと結合した分子が解離して、溶液内に拡散してゆきます。この2番目のステップが起こりやすいものほど脱灰能力に優れ、起こりにくいものほど吸着能に優れます。これは吸着分子とカルシウムとの反応物が溶液の中でどのくらい溶けやすいかに依存するようです。4-MET・Phenyl-P・MDPのカルシウム塩の蒸留水中へのCa溶出量はそれぞれ、1136ppm,1908ppm,6.485ppmで化学結合能を裏付ける結果となっています。

機能性モノマー

機能性モノマーにはカルボン酸系の4-META・4-AET・MAC-10、リン酸エステル系のMDP、チオリン酸系のM10PS、トリアジンジチオン系のVBATDT、そして前出のPhenyl-Pなど多くのものがあります。これらにはそれぞれに特徴があり、機械的性質が異なるものも存在するため、接着する相手によって選択し、手技・技法も変えるなどの配慮が必要になります。ある種の機能性モノマーには抗菌作用が添付されているものもあり、それによって接着性の向上がみられるものがります。またある種の機能性モノマーは術前の有機質溶解が禁忌とされているものもあり、一方でそれを行うと接着性が向上するものも存在します。これらの組み合わせは多種多様に渡り、商品の流通と各種術式の簡略化とは反して複雑な部分があります。よく見かける誤った使用方法では、有機質溶解が禁忌の機能性モノマーに対して術前の有機質溶解を行ってしまうものがあります。レジン成分をコラーゲン繊維に浸透させるということがレジン系材料の接着メカニズムでの基本となることは広く知られたことではありますが、臨床レベルに落とし込むと実践しきれないことがまだあるようです。これらの誤った使い方がされていても、たまたま無機質への接着の強い製品を使用しているなどによって補填されていることも多くみかけます。もしくはレジン系材料はよくないということでメタルインレー修復に逆戻りする場合や、グラスアイオノマーセメントを見直そうという流れもあります。また、歯質の切削時において注水をしないという場合も見かけるのですが、これもコラーゲン繊維の変性につながる可能性があるためよろしくありません。いずれにしても、誤った使用方法では本来の機能を発揮できてないので、正当な評価がなされている訳ではありません。これらの場合に限らず、実験でのデータとは違う結果が出た場合には、より基礎に戻って再検討する必要があると思われます。