接着の種類について

現在の歯科臨床において、「接着」は避けては通れない重要なものとなっています。おそらくは、歯質接着性材料は人体に最も用いられている生体材料であり、現在の歯科臨床を支える主要な材料であるといえます。齲蝕に対するコンポジットレジン修復・支台築造・歯冠補綴・歯科矯正・歯周病治療における動揺歯の固定や外傷による破折歯の接着など、日常に行われる歯科治療の大半に応用されている技術です。しかし、術式の簡便さや理想値の接着強度が強く宣伝されたおかげで、この接着歯学に本腰を入れて取り組もうという歯科医師が少ないということもあるようです。接着歯学のセミナーは定員ギリギリの応募ですし、専門書の売り上げランキングの上位は経営に関するものばかりで、大きな学術大会でのランチョンセミナーでは他の分野よりも人集りが少ないです。

歯質接着性材料

実際に、私のお世話になって職場においても「プライマーをフワッと塗らないとダメだぞ」と言いながらエアーブローもフワリと終わらせてしまう場面や、接着が強いからと支台歯形成をしていない歯に接着を試みて痛みが出て神経を取るなんてことは日常茶飯事に見かけたことでした。そこで今回は、各種接着システムについて出来るだけ簡単に説明し、患者様自身が正しい手順で治療されているかを知ることが出来る様に、また、同業者の方にももう一度接着の大切さと手順を振り返ってもらえるように各種接着剤のメカニズムについてお話ししようと思います。

グラスアイオノマーセメント

現在、主に使われている歯質接着性材料は主にレジン系とグラスアイオノマー系に大別されます。グラスアイオノマーセメントはポリカルボン酸とアルミノシリケートガラスを主成分としています。これは未処理の歯質とも結合することから、化学的に接着すると考えられています。近年では物性を向上させるためにレジン成分を添加させたレジン添加型グラスアイオノマーが多く用いられています。グラスアイオノマーセメントと歯質の接着において、その化学的結合を証明すべく赤外九州スペクトル法などの多くの解析が行われてきました。しかし、科学的相互作用の実測を行うことは不可能であり、証明はされてきませんでした。近年になって、X線光電子分光装置にて接着界面を化学的に分析することに成功し、その結果、ポリカルボン酸がアパタイト表面に化学吸着し、分子中のカルボキシル基の数%がアパタイト表面のカルシウムに結合していることを定量評価することが出来ました。けれども、これでもグラスアイオノマーセメントの化学結合を証明したものではなく、レジン添加型グラスアイオノマーセメントの中には樹脂含浸層を確認出来ないものまでありました。このように、まだ解明されていないものも既に臨床応用されている場合も少なくありません。

レジン系材料

レジン系材料は、それ自体には歯質接着性がなかったために、機械的嵌合、いわゆる樹脂含浸層を形成することによって歯質への接着性を求めました。酸によって象牙質表面の無機質は脱灰され、露出したコラーゲン繊維周囲にレジンが浸透・重合することによって樹脂含浸層が形成されるという中林理論の発見以後、いかにして樹脂含浸層を作り出すのかというテーマで研究開発が行われてきました。けれども、近年になって樹脂含浸層も劣化することが報告され、より優れた樹脂含浸層を作り出すことに関心が移りつつあります。

レジン系材料は

1,コンディショニング(酸処理および水洗)
2,プライミング
3,ボンディング

のステップが基本となる歯質接着システムとして臨床応用されています。これらは臨床手順が多いです。口腔内での操作を考えると、より簡便な方法がミスを減らすことに繋がると考えられています。そのため、従来のステップから2ステップ、そして1ステップへと移行してゆくこととなります。