接着歯学とは

接着

歯科保存学とは

「歯科」といいましても、歯科学の中でも様々に細かく診療科が別けられて、それぞれ行われていることが異なります。一般的には「口腔外科」や「矯正歯科」などが知られています。近年になって新設されてきているものでは「インプラント科」などもあります。その他には「補綴科」などというものもあり、クラウンやブリッジなどの被せ物を扱う科や、入れ歯を扱う「有床義歯科」などがあり、更に細分化されて部分床義歯と全部床義歯を扱う科に分かれていることもあります。

そのような枠組みの中で、歯や歯周組織を対象にしている科が「歯科保存科」と呼ばれる科になります。その中には、虫歯を中心に扱う「修復科」、歯周病を扱う「歯周病科」、歯の根の治療について扱う「歯内療法科」などが含まれます。これらの呼び名は大学や施設などによって異なりますが、大まかな枠組みとしては同じ扱いとなります。そして、それらの科は独立している場合もあればインプラントのようにインプラント科・歯周病科・口腔外科・補綴科などが取り扱うものもあり、それぞれがどちらが上か下かなど、政治的な話もあって側から見ていると大変面白いものです。

インプラントや矯正歯科、口腔外科などは専門性が高いということで、それらを除くそれ以外のものを「一般歯科」と呼んでいます。その他には標榜の都合上「小児歯科」というものも別個に記載されることは多いですが、専門医制度を普及させようと本格的に動き出したのは近年になってからのようです。インプラントや矯正歯科は参入障壁を上げることによって独立性を保ってきていましたが、歯科医師であればそれらを治療をしてはいけないということではないので、歯科医院経営の競争が激化している中で参入する者も増えています。特にインプラントバブルが崩壊したといわれる現在、矯正歯科への流入が激増し、最近では「マウスピース矯正」の専門サイトなどもよくみかけるようになりました。矯正歯科専門で行なってきた者たちは一般診療なども手がけるようになり、コルチコトミーなどで矯正治療を短期的に終わらせるような分野へ形を変えてきています。まとめて「歯科」ですので境界が無くなった方が包括的に診療が行えます。それもまた患者様にとってはメリットになることも多いと思われます。

ダウンサイジング

近年、「ミニマルインターベーション」という概念が広く強調して謳われています。これは、最小限の侵襲で治療すること、つまり極力虫歯のみを削除し健全な歯は残そうということです。根拠としては、残存する歯質が多い方が将来的に抜歯に至る可能性が下げられるということからきています。実際に、治療した部位が新たに虫歯になり、再治療をするなどを繰り返すことが考えられます。その際に、初期段階から歯が多く残って余力があった方が有利であることは考えやすいところだと思います。また、抜歯に至る歯の多くは失活歯といって歯髄を喪失した歯になります。歯髄を取らないで済むように小さく削ることはもちろんのこと、修復物を入れるために行われる便宜的な削合も減らし、再度生じる虫歯が神経から遠くなるような配慮が必要です。また、文献によっては抜歯した歯のうちの7割近くが破折によるもので、そのほとんどが失活歯であったというものもあります。失活歯が機械的に強度が下がるという誤解が多いのですけれども、実はのところ強度は生活歯とほとんど変わりません。けれども破折が多い理由には、歯質の残りの量が少なくなっているからだといわれています。このように、抜歯が最終地点だとした場合に、できる限り手前の段階で治療内容を留めておくことが将来的に歯を残すことにつながってくると治療の概念が変わってきています。

接着の登場とダウンサイジング

虫歯の治療をすると金属をつけることは多くの方々に知られているところだと思います。それらは多くは「合着」と呼ばれ、機械的に食い込ませる力や弱い化学反応治療による「密着」に近いものでした。近年では、それらを超える「接着」が広く行われるようになり、臨床が大きく変わっています。わかりやすいところでは、歯科矯正の歯の表面につけるブラケットと呼ばれる装置は、以前は金属製のバンドを歯に巻く必要があったのに対して、直接歯に接着させることが出来るようになりました。虫歯の治療の分野でも大きな変化があり歯科保存科の修復学などでは接着歯学として扱われるようになりました。

虫歯の治療の対象となる歯の部位にはエナメル質と象牙質があります。これらに対して歯科材料を接着させることはそれそれ別の機構が働くため、その技術は1990年代に入るまでは確立されていませんでした。確かにレジンという材料自体は以前よりありましたし、接着が全く行われなかった訳ではありません。しかし、臨床応用に至るには長い時間がかかりました。このような観点からすると、インプラントなどよりも「最新」なのですけれども、誰も騒がないがまた面白いところです。レジンをエナメル質に接着させることには早くから成功していたようなのですが、象牙質に接着させることが困難を極めたようです。象牙質の方がエナメル質より有機質が多いのも原因の一つだったようです。しかし、これらへの接着が確立されたことによって虫歯の治療は劇的に変化しました。より多くの歯質は残せるようになり、予知性の高い治療が行われることが期待されています。

残念ながらこのような治療の移行期には、従来の治療から離れられない人間の性質も絡んできます。矯正歯科治療などではストレート・ワイヤー・アプライアンスであってもワイヤーのベンディングが行われていますし、レジンによる修復を考えながら虫歯を溶かすような薬を使ってしまうのも見受けられます。レジン修復自体も、初期では細胞毒性を疑われ失活歯を招く悪者扱いをされていましたが、近年では完全に否定されむしろ神経を残しやすい作用も発見されています。

理論は確立されたとはいえ、まだまだ臨床においてはいろいろと行われている接着歯学ですけれども、治療がダウンサイジングされる可能性をもっていること、そして、材料無しでは治療の行えない歯科という分野では何をするにしても接着は役立つものでして避けては通れないものになりました。派手な治療に比べると人気がない分野ですが、この概念が普及し浸透されてくれることによって治療の予後が大きく変わるのではないかと思います。