早期・即時のインプラント修復について

即時インプラント

「歯の百科事典」ではオッセオインテグレーションについて数回にわたり触れてきました。オッセオインテグレーション自体の結合に関しては、骨組織の治癒機転に伴って形成されるため、ある程度の時間経過が必要であるように思われます。

実際に、インプラントが臨床に取り入れられ始めた頃には抜歯後に骨の治癒を3、4ヶ月ほど待ち、インプラントを埋入した後も2回法であれば3ヶ月前後の待機期間を設けて行われていました。そして、このことは今でもインプラント治療においては原理原則に近いものであると考えられます。

しかし、現在の歯科用インプラント治療では、治療期間を短縮する方向への強い傾向がみられます。

その傾向は、最終的には即時負荷か、少なくとも即時修復へと向かう強いものとなっています。

この分野の発展にはインプラント表面性状の改善が貢献してきました。@@@でも触れていますように、一部の表面性状ではオッセオインテグレーションがうまく行われずにクレーター状の骨欠損を招くものもあります。けれども、そのような表面性状のインプラントを敢えて抜歯即時埋入治療に用いていて、そのことがむしろ初期固定が良好に得られるというように言われているものもあります。

また、個人が手法を開発して宣伝していたりセミナーが組まれたりするなどもしていて(つまり大きな調査は行われていない状態での普及)、未だに解決していない部分の多い混沌とした状況でもあります。

ただ、臨床的には一定の明確な条件の下では確実性があるとみなすことが出来る数多くの研究が報告されています。

即時インプラントの報告例

即時インプラントについての報告が頻繁にされるようになったのは1990年代後半から2000年代前半にかけてのことです。初期の頃は特に無歯顎患者に対して行われた報告が多く、オトガイ孔間にインプラントを埋入しバー装置で連結したものや、フルアーチでの即時修復などが多く見受けられました。

これらをはじめとするいくつかの臨床研究報告により、即時負荷または即時修復のインプラント治療においては、設置時に適切な初期固定を獲得し、重要な初期の治癒期間に動揺を50μmの閾値より下に抑えることがオッセオインテグレーションを獲得するために決定的な因子であるとされました。

ただ、臼歯部の単独歯修復での即時負担については、それを日常臨床で用いるにはランダム化比較対照臨床試験の形式で、その可能性が確認されることを待つのが賢明だといわれています。

抜歯即時インプラント

抜歯と同時にインプラントを設置する方法をimmediate implant placementと呼びます。1990年前後に抜歯窩内にインプラントを設置してバリア膜を用いて骨造成を行なった報告がいくつかされています。

この方法を用いる理由として

・修復に要する時間の短縮
・骨とインプラントの接合の促進
・歯槽骨の高径維持

などが挙げられました。近年、「歯槽骨の高径維持」については、抜歯後の吸収の量は骨組織の生理的な反応に依存するものであり、インプラント埋入による負荷などの影響ではコントロールすることは出来ないといわれていて、一部ではまだ支持されいるものの多くはこの理由は否定されています。

抜歯即時インプラントの適応症は

・歯内療法に失敗している歯
・進行した歯周病罹患歯
・歯根破折歯
・歯肉縁下齲蝕の進行した歯

などがあり、

・排膿のある歯
・大きな根尖病巣のある歯

などは適応外となります。

抜歯窩にインプラントを設置しGTRにより骨造成を併用した場合についての、前向き多施設臨床研究による報告をみると、術後3年で93.9%のインプラントが機能を維持していたとあります。長い期間の評価は5年半ほどのもので生存率は94%、成功率は92%であったことが報告されています。ただ、この研究は最澄が5年半ですが平均は2.5年です。

しばらくは二回法の確実性がいわれてきましたけれども、近年では1回法の設置も多くの利点をもたらすものとして報告がなされています。

1回法の貫通粘膜型の即時インプラントについても、1990年代に様々な報告と臨床研究による評価が行われ良好な結果を得ています。ただし、手術後の抗菌薬の投与や、定期的な消毒薬の局所応用、長期間の徹底した抗菌的な口腔衛生管理が必要となりようです。

まとめ

即時修復・即時負荷のインプラント治療については条件が整えば良好な成績が出ているようです。ただ、5年以上の経過を観察した研究はまだ少なく、新生骨や骨補填材の変化などについて血液検査や毛髪検査レベルでの報告さえ見当たらないので考慮が必要になるかもしれません。

審美的な問題が対応出来るようであれば、数ヶ月とはいえその後に年単位で使用するインプラントですから、あえて急ぐこともないのかもしれません。また、抜歯即時でインプラント埋入を行なっても骨量が保障されるわけでもありません。

これらの場合では、原則的な治療方法の選択の方が確実性が高いようです。

インプラントは治療後のメインテナンスが重要になってきますので、定期的な受診が前提となります。「忙しい」という理由で即時型インプラントをご希望される場合は、そもそも適応ではないかもしれません。

これらの疑問を更に解消するべく、今後はインプラントの表面性状とオッセオインテグレーションの獲得の速さと長期的な維持についての詳細についてもお話ししてゆこうと思います。また、骨造成やインプラント埋入の術式自体についても触れてゆきますので、総合的な判断が行えるようになって頂ければ幸いです。