最新の治療=最善??

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最新の治療で一本釣り

「最新の治療」「最新の設備」ということを謳い文句に宣伝しているクリニックをしばしば見かけます。マスコミなどに取り上げられると、あたかもそれが最も良い治療であるかのように、万能薬や救世主かのように噂だけが一人歩きしてしまいます。そして、その動きを見ていち早く取り入れて患者さまの獲得を目指す医療人も数多くいるのが現状です。不安があったり困っていたりする上に、分からない分野のはなしですから、一般の方がそれを頼ってしまう気持ちは充分に理解出来ます。しかし、我々のような医療に携わる者がそのことにすぐ飛びついてしまうことに疑問を感じます。

最新の何が問題か

近年の様々な分野での技術革新は目まぐるしいものがあります。ほんの数年前まではガラケーが主流でしたし、まだ画面がカラーでさえありませんでした。それがほんのわずか数年でカラー画面は当たり前になり、今ではボタンさえ消えてスマートホンが主流になっています。そのことで多くの人達の生活は代わり、より便利で快適な生活が送れるようになりました。このように、最新には大きな力があることは間違いのないことです。当然、最新の治療方法によっても救われた人がいます。では、歯科医学上では最新の治療がどのような役割を果たすのでしょうか?

ある歯科書籍に最新の治療が展開される典型的なパターンがまとめられています。そこには、

1、新しい薬や治療方法の効果は当初に”奇跡”とみなされる。
2、その後、副作用や誤まった使用方法により良好な結果は得られなくなる
3、概して反発が起こり、”危険””役に立たない”と評価される
4、最後に、正しい手順や適応症により一定の効果が得られる
5、正確に使用されれば有用と評価される

とあります。つまり、乱用の後に一旦「危険」「役に立たない」という段階が訪れ、当初に「奇跡」と解釈されていたものが最終的には「使用方法による」に変化します。当初の目論見通りにはいかないかもしれないものを、軽率に選択してしまうところにセンスを感じられないのは私だけでしょうか。このような判断をしてしまう人が、他の診療項目は確実に行えると思えますでしょうか。

医学的な効果の証明手順

前項で典型的なパターンについて触れましたけれども、我々医療人は当然のレベルで新しい治療法や材料について証明されるプロセスを知っています。

1、in vitro
2、in vivo
3、case report
4、case series
5、短期ランダム化比較研究
6、長期ランダム化比較研究
7、ランダム化比較研究のシステマティックレビュー

本来、最後のシステマティックレビューの段階で運用されることが望ましいですけれども、実際の臨床においては5・6のランダム化比較抽出試験の段階で運用されることも少なくありませんし、現実的に比較出来ないこともあります。その際には大規模な3、4の研究のシステマティックレビューを判断材料にします。しかし、この段階までくるとある程度の臨床効果を感じられるくらいになります。

本来、人体に扱う方法や材料であるので、このような手順を踏むべきだと思うのですが、4、5の段階で最新の治療であると始まってしまうことがしばしば見受けられます。

どのようなものがあったか?

このような典型例で、前後の評価がガラリと変わった治療方法の中には骨を造成するジェルなどがあげられます。これは当初は歯周病の救世主はたまた万能薬のような扱いでありました。けれども、ランダム化研究のシステマティックレビューの段階になると、大きな効果が得られるわけではなく、適応症も限られるものだけであることがわかりました。骨造成に関する外科的手法などにも同じことがありました。

また、元々薬液を併用したスケーリングの効果は期待できないと結論が出ているのにも関わらず、ある商品はその効果を大々的に宣伝し、ある学会が異例の声明を出す事態があったこともありました。他にも薬を使って虫歯を治す方法についても同様のことがありました。最近ではある金属イオンで殺菌するようなものもありますけれど、体内の微量元素の比率が狂うことが問題となって商品回収したある材料と同じことが起こるのではないかと考えられています。

まとめ

最新が良いわけでも悪いわけでもありません。運用する側の「意図」の問題です。ただ、最新を繰り返し更新していても、そこには「習熟」は起こりません。その一点だけを考えても、自分の身体を任せていいのかよく分かると思います。