歯周炎と動脈硬化症の関連 つづき

歯周病と動脈硬化

ur decades.

歯周炎と動脈硬化症 では歯周炎と動脈硬化の関連メカニズムのうち、歯周病原細菌の血管への影響にいてお話ししました。今回は、その続きとしてその他の要因についてお話しいてゆこうと思います。

歯周炎が全身の炎症マーカーに及ぼす影響

遺伝子発現解析や歯肉溝滲出液解析より、歯周炎に罹患した歯周組織では炎症性サイトカインの産生が上昇していることが明らかとなっています。これにより、血清中の高感度Cタンパクも上昇しているといわれています。CRPは肝臓でIL-6によって産生が促される物質で、歯周炎を生じる歯周病原細菌の存在によってIL-6の産生が亢進するとCRPも上昇すると考えられています。このCRPは全身の炎症性マーカーとしての役割のほか、冠動脈疾患のリスクマーカーとしても有用であるとの報告が出ています。また、CRPそのものが血管内皮機能を障害するという報告が近年にされています。

動脈硬化性疾患のリスクマーカーとして

・血清中炎症マーカーの上昇(CRP,IL-6など)
・血清脂質(LDLの上昇、HDLの低下)
・血管内皮細胞機能や動脈の弾性低下

などがいわれています。

私自身も血液検査結果を見て確認しておりますが、歯周病患者の全てでCRPが上昇を認められる訳ではないようです。日本人のCRPのカットオフラインは1.0mg/Lとなっていて、欧米と比べても極めて低い値でもリスクとなることがわかっています。日本国内の例での報告によると、冠動脈疾患のリスクを上昇させるのはCRP1mg/Lを超える者であり、その集団は25%とされています。これらの患者では歯周治療によってCRPが有意に低下することが報告されています。また、同集団においてはIL-6の値も歯周治療によって変動を示すことがわかっています。さらには、歯周治療によって血清脂質量んに関してHDL値が改善されることが示されています。そして、歯周治療を行うことで動脈壁の状態が改善されるという報告もあります。これらのことより、歯周炎によって全身的な炎症状態が高まりやすい者には何かしらの背景があるのではないかと考えられています。しかし、米国心臓学会では歯周病の存在と虚血性心疾患との関連にはエビデンスがないという報告をしています。

歯周病の成立や症状の出方などは個別のものがありますが、大まかな傾向による分類が可能と思われるものも少なくありません。今言えることは、CRPやIL-6の変動が歯周治療によって生じる集団が存在し、歯周治療によって改善が出来る可能性があるということは、偽陰性を見逃さないようにしながら治療に取り組んでゆくことです。今後、歯周病の改善としての歯周治療と冠動脈疾患のリスクマーカー改善のためのものとで同一の処置でいいのかを検討してゆくことも必要になるのかもしれません。

歯周炎とヒートショックプロテイン60

ある細菌成分について生じた免疫応答が、血管内皮細胞に発現する菌体と類似の宿主成分に対しても生じることを分子相同性といい、この場合、結果として内皮の機能を障害します。ヒートショックプロテイン60は進化の過程において非常によく保存された分子シャペロンであり、熱・感染・サイトカインなどで上昇します。そして、一方では高い免疫原性も兼ね備えています。

実験的に重篤な歯周炎を伴う患者の末梢血T細胞をヒートショックプロテイン60とP.gingivalisで刺激すると、特異的増殖反応が生じます。増殖したT細胞はヒートショックプロテイン60もしくはP.gingivalisで刺激されたとしても、それらの違いに関わらず同じT細胞レセプターが使用されることがわかっています。また、P.gingivalis GroELに特異的なT細胞が動脈瘤組織に浸潤していることも報告されています。さらに、歯周病患者では抗ヒートショックプロテイン60抗体、抗P.gingivalis GroEL抗体が高値を示し、両者には交差反応性を持つことが明らかになっています。これらのことより、ヒートショックプロテイン60とP.gingivalisの分子相同性が動脈硬化症と関連していることを示唆しています。現在はエビデンスがみられないとされてはおりますが、これらの解明が進んで行けば関連ありとされる時がくるかもしれません。