歯周炎と動脈硬化症

歯周病と動脈硬化症

「積極的な歯周治療によって動脈硬化性疾患のリスクマーカーは改善する」これはコホート研究におけるシステマティックレビューでありエビデンスレベルは2aに位置したものです。たしかに、炎症性マーカーである反応性cタンパク(CRP)は動脈硬化性疾患のリスクマーカーとして有効であるようで、歯周病への罹患によって上昇を示します。歯周病原細菌の一つであるP.gingivalisは血管内皮細胞に侵入することが明らかになています。また、動脈硬化性疾患と歯周病は同じ炎症生疾患であることから炎症生サイトカインやC反応タンパクの上昇などの共通の病態を有するなどのことから、両者の関連性がいわれています。ただ、その他のリスクマーカーについては十分なエビデンスはみとめられていません。このことを全く別物と解釈するか、一部が共通するということを影響を及ぼせ合うものと解釈するか、今後の研究の進展が気になるところです。

推定されるメカニズム

歯周炎がある動脈硬化疾患患者では、以下のことが認められます。

・血管病変部から歯周病原菌のDNAが検出される
・CRP、IL-6の上昇が認められる
・細菌GroEL分子と相同生の高いヒートショックプロテイン60に対する反応が亢進する

このことより、歯周病菌が血管内皮細胞や平滑筋細胞などの血管構成細胞を障害することが考えられています。また、局所的な感染によって全身的に炎症生サイトカインが上昇し、それにより血管が炎症生変化をするということや、病原細菌に対する免疫応答が分子相同性によって血管障害を誘発するというようなことが、動脈硬化性疾患と関連する主なメカニズムであるだろうと考えられています。

歯周病原細菌と血管

動脈病変部での歯周病原細菌の検出

P.gingivalisは血管内皮細胞に侵入する能力を備えていることが既に報告されています。この他にも、種々の歯周病原細菌の遺伝子が検出されていて、もはや全くの無関係というようなことは言えないものとなっています。また、これらの細菌が増えて接着分子の発現が上昇するとケモカインIL-8やMCP-1の産生が上昇することがわかっています。

歯周病原細菌の運搬方法と経路

歯周ポケット内の細菌が血管病変部に運搬される経路については、細菌が血中に侵入した際に単球に取り込まれて運ばれるというものが考えられています。もしくは、細菌は歯周組織の骨髄樹状細胞に取り込まれて血流を介して運ばれるのではないかといわれています。また、血管病変部に検出された細菌は腸内細菌群に属するものや歯周病原細菌以外の口腔細菌も高頻度にみられたことから、歯周ポケット以外の経路も考えられています。

歯周病の程度と血管疾患

動脈疾患患者は一般的に歯周病の重篤度が高いといわれています。P.gingivalisやT.denticolaなどの歯周病原細菌に対する血清IgG抗体も高値を示すといわれています。また、IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインも高値であったという報告があります。これらのことより、歯周病原細菌に関わる免疫反応が血管疾患と関係があるのではないかといわれています。