歯周病と最新の治療法

口腔内で外科処置を行った際に顎骨壊死を起こす可能性があるということで慎重な判断を強いられているものにビスフォスフォネート剤があります。このビスフォスフォネート剤は、かつて歯周治療に有効かもしれないということで実際に臨床研究が行われていたことがあります。それに飛びついて乱用されていたら今頃は大変なことになっていたかもしれません。

またまた出てきた色んな最新

一時期、うがいをするだけで歯周病菌が殺菌されるという謳い文句の”水”がテレビで放送され、日本歯周病学会がホームページに見解を説明する文書を出すようなことがありました。そもそも、歯周病菌は歯周ポケットの中に存在します。そして、何十年も前から、うがいではその歯周ポケットに影響を及ぼすことが出来ない(入らない)ということが分かっていました。また、以前からその系統の水は手を替え品を替え市場に出回っていて、今回もネタを盗まれた業者さんがいろいろなスタディグループにその説明をしに行脚していました。歯周病の予防にはならないだろうなと勉強熱心な歯科医師はの先生方は冷ややかな目で見ていましたが、予想より噂が大きくなって異様な事態となりました。

次亜塩素酸には確かに殺菌効果はあります。しかし、そもそも人間のあらゆる外皮(皮膚や粘膜)には細菌がいることが当たり前で、『共生』というものを行っています。その自然の摂理を犯してまでして殺菌してしまっていいのかという問題、その後にいわゆる善玉菌を生着させる方法などが未解決のまま執り行われました。常在菌のバランスを欠くことが後にどれだけの問題を引き起こすのか想像もつきません。近年では難病に対して寄生虫を用いることが考えられていたり、皮膚のかぶれや乾燥は洗いすぎによるものであるなど、「共生」の重要さが再認識されてきています。常在菌のバランスを欠いたので虫歯や歯周病になったのではないか?と思われるかと思いますが、全くその通りです。そして、適切なブラッシングや治療をすることで元に戻ることも分かっています。口腔内細菌の全てが同定されていない中、新たな菌の生着に関しての見通しも立たない状況での殺菌は、今後の前進への免疫系に関してどれほどのインパクトをもたらすのか研究結果が楽しみです。諸外国では考えられない行為なので、おそらく世界初の結果が見られるのだと思われます。ましてや、近年では「腸管免疫」ということのメカニズムが分かってきて、口腔内の役割が重要であることが再確認されてきています。口腔から始まる消化管の菌の連動についても、少しずつその関係が解明されてきていますので、そちらについても注視してゆく必要がありそうです。当時、私の勤務していたクリニックでも導入された治療法でした。せめて自分だけは行わないようにと必死にとぼけていたことを思い出します。その態度が気に入らなかったのか、散々怒鳴られたのもいい思い出ですが、風向きが変わった現在、彼らは大量にばら撒いたそれらをどのようにするのでしょうか。おそらくは、未だしばらくは有効性があるという立場を変えずに進むでしょう。これは、他の分野でも見られる現象です。

レーザー治療やPerisolv

何度も繰り返しますが、歯周治療はだいぶ以前にその方法も効果も確立したものがあります。その中にはレーザー治療はありません。やったら治るのかもしれませんけれど、やらなくても治ります。その場合、人体に関わることなので副作用や判明していないことなどのリスクを含めた費用対効果を考えなくてはいけません。海外ではPerisolvという薬剤が発売されているようなので、そのうち日本でも話題になるかもしれません。費用対効果で効果が同じなら高価なものの方が高級に感じられるかもしれませんけれども、この場合の高級は機材の費用についてで、内容が本当に高級であるかはわかりません。内容の高級感をいうのであれば、むしろ伝統的なものの方が世界中で研究費がかけられています。そうこうしているうちに、レーザー治療がハッキリしないまま時代は光線力学療法へと進んできています。

光線力学療法とは

光線力学療法とは光とメチレンブルーなどの光増感色素の抗菌作用を応用した治療法です。光増感色素がターゲットの細胞と結合した結果、低出力のレーザー光線が酸素の存在下で活性化し、フリーラジカルを発生させて細胞を殺すという機序のようです。このメカニズムにより非侵襲性の治療ということで近年の話題となっています。活性酸素を発生させて非侵襲性ではないと思うのですが。

この治療方法は生物実験でも歯周病関連細菌に効果があったということで臨床に導入されるようになりました。臨床ではポケット内にジェル化した色素を注入して光を当てるということをします。この治療の非外科的治療効果についてランダム化比較試験の結果がすでに発表されています。さらに、それらを総括したメタアナリシスも行われています。それらによると、従来の機械的洗浄よりも臨床効果は低いものであったと結論づけられていいます。併用すると少しだけ良い結果になったことも書かれていましたが、それでは非侵襲性という売りが台無しになってしまいます。また、併用した治療効果は従来の機械的洗浄の効果と差がごくわずかであり、臨床的意義は不明となっています。

プロバイオティクス

その他には、腸内フローラにちなんで口腔内フローラも大事にしようということでプロバイオティクスなどが広まりつつあります。その考え方はとても大事なことだと思います。ただ、摂取のみで達成できるのかはもっと時間と症例数を見てみないとわかりません。世界中でもまだこの研究は少なく、有効性を唱えるのにはまだ足りないという印象があります。また、免疫との兼ね合いがあるため細菌だけを増やしてもおそらく意味はないと思われます。生着するのかどうか?プラークの組成に変化がでるのか?その他多くの変化についてデータが出揃ってくれることを期待したいと思います。少なくとも、プラークの性質からすると、生成初期の細菌叢よりも形成過程における口腔内環境の影響を強く受けるので、そもそもそこに影響を与えられるのか?食事の回数や成分に対してどれくらいの頻度でどれだけの量を摂取すればよいのかということの整理も必要になるかと思われます。

結局のところ、最新治療というものが出てきても、プラークコントロールを主体とする歯周治療の基本的なコンセプトは全く変わらないです。従来の歯周治療を完全に取って代わるほどに有効な治療法は現在は存在しません。むしろ、長期的な結果や研究数の多さ、取り組まれた臨床数が圧倒的に多いので、これほどに信頼出来るものは今のところ存在しません。毎回、最新の治療が出てきては従来の治療の有効性に気付かされますので、そのこと自体で考えるのであれば、むしろそちらの方が最新の治療と言えるのかもしれません。

レーザー治療