歯科における活性酸素の解釈

活性酸素種
活性酸素という言葉は、近年至る所で聞かれるようになりました。詳しいメカニズムは広まっていない一方で、細胞の老化やDNAを損傷させて身体の様々な病態に繋がるという話は多くの人に知られるところとなっています。

このような知識の偏りは不安を招くのかもしれませんが、この活性酸素に対する未だ得体の知れない作用についての不安や関心が高まっているのは確かなようです。そして、その効果を消去する目的として水素水が流行したり様々な抗酸化物質が出回るなどの現象が起きています。

活性酸素は大気中の酸素よりも活性が高い酸素のことや、それに関連する分子のことを指します。その種類にはこちらの記事でお話しししたように、過酸化水素・ヒドロキシラジカル・スーパーオキサイドアニオン・一重項酸素などがあり、どれにどのような作用があり、どのような予防が有効であるかは未だ分からないことも多いです。

したがって、「これが効果がある」と宣伝されてすぐに飛びついてしまうのではなく、慎重な態度を失わないことが重要になるだろうと思われます。

活性酸素には、

大気中の酸素が励起されたり、段階的な還元作用を受けたりすることによって発生する三重項酸素分子としての活性酸素があります。

また、細胞レベルでの殺菌や異物除去などの生体防御反応や循環障害、虚血再灌流などにより生じる、反応性が高く活性に富む酸素種としての活性酸素があります。

歯科領域においてもまた、慎重さが必要なのではないかと思われます。海外ではドラッグストアなどでもホワイトニング材が手に入れられる身近なものであると言われている一方で、近年日本で行われている専門店などで使用する薬剤は医療用のものでないなどの問題もあります。

歯科ではこの活性酸素について、その関連は研究が不足しているように思われます。一部、安全を確認している報告がある一方でそのエビデンスは低い臨床研究であることも多く、全身を診る専門家ではないもののの報告なども混同されています。

そこで今回は、ホワイトニングなどを中心に、歯科において活性酸素がどのような扱われ方がされているかをお話ししてゆきます。ホワイトニングなどにおいてはフリーラジカルは、着色有機物質の二重結合を切断する役割を担うものですが、一方で問題視されている健康被害についてはどのように考えられているのか?などを見てゆきたいと思います。

歯科領域での活性酸素

歯科領域における活性酸素種の関与については、レジンなどの充填物の重合反応や交互洗浄などの根管消毒、清掃などの治癒機転に関係があるといわれています。

ただ、この時に生じる活性酸素種はスーパーオキサイドアニオンや一重項酸素だといわれていて、これらは寿命が瞬間的であるために生体への為害性はほとんどないということになっています。

かつて(現在も一部の歯科医院で使用されていますが)、ホルムアルデヒド系の薬剤を使用した根管治療では、その成分が象牙細管内に10年以上も残存し、後に内部吸収を起こすという報告がありました。その結果、歯根が破折して抜歯に至ってしまうこともあるようです。。

このことは、薬剤の使用開始からしばらく経ってから判明したことでありますが、ヒドロキシラジカルの歯根外部吸収作用なども今後は判明してくるのかもしれません。

この際に疑われるであろうものは、H2O2を使用した交互洗浄の既往が予想されます。レジンによる活性酸素は上記の物質であることや、症例数に対して破折歯数に相関がみられないこと、多くは生活歯に使用されていることなどが挙げられます。

また、失活歯に対するレジンによる築造操作もありますが、その破折に有意差がみられないなども理由として挙げられます。

これらの活性酸素種がどのような動態を辿るか、生体の内側に向かうのか?外側に発散されるのか?どちらに向かい反応するのか等については表層に作用したものは外部へ行くようですが、内側に入り込んだものについては納得の出来る詳細はまだ報告がありません。さらなる研究結果が待たれるところです。

現時点では、これら活性酸素種が充填物に残留しとどまるようなことがあれば、その充填物や周辺の歯質は漂白されると考えます。そもそも活性酸素存在下では重合反応が起こりにくいため、その性質を考慮してホワイトニング後1ヶ月はレジン充填処置は行わないなどの配慮が必要になります。

これらのことから、重合反応における細胞毒性については、たしかに為害性はないと考えられます。寿命が瞬間的であるとする報告が支持されていることもまた、このような為害性のなさから推察されるのかもしれません。

活性酸素を生じさせない技術が今後開発されることは充分に考えられることではあります。症例によることは前提として、それでも現時点んにおける多くの場合には、活性酸素の発生を危惧するよりも歯科治療による口腔機能の改善の方が、得られる利益が大きいと思われます。かといってオーバートリートメントを認める訳ではなく、常に治療は過不足なく行われるべきだと考えます。

近年は癌を患う方が増加している傾向にあるので、これまでのように活性酸素の点をあまり考えずに治療を行うことは危険なのかもしれません。いかに活性酸素による細胞損傷を防ぐかについての方法の確立が急がれます。

現時点では、活性酸素による被害を防ぐためにビタミンC・ビタミンE・βカロチン・ビタミンAなどの抗酸化物質の摂取が推奨されています。

ホワイトニングの活性酸素

歯科のホワイトニングでは過酸化水素に光を照射することで分解を促進させます。その過程においては、為害性の高いとされるヒドロキシラジカルが発生するといわれています。

このヒドロキシラジカルは、ウォーキングブリーチ既往の歯根の外部吸収に関与しているといわれています。象牙細管を通じて髄腔内から歯根膜に達した余剰のヒドロキシラジカルによって、外部吸収が生じていることが示唆されています。

また、ホワイトニングを行うことで一過性の知覚過敏が起こることから歯髄への影響も懸念されています。ただ、この一過性の疼痛が歯髄壊死や炎症を惹起させたという報告はないため、歯髄への影響は少ないのではないかと考えられています。

しかし、対象が歯髄であっても歯根膜であっても、両者は有機質で構成されているという共通点があります。つまり、ヒドロキシラジカルによってその構造から二重結合の切断が行われた可能性はあります。

そのまま骨内のコラーゲンにまで損傷がみられないのは、代謝によるものかもしれません。

ホワイトニングによる知覚過敏が活性酸素由来のものであるのならば、

こちらの記事において解説したように、ホワイトニング剤の浸透はエナメル象牙境付近までが確認されています。直接的に歯髄にまでは達していないことから、知覚過敏が活性酸素由来であるということになるには、ヒドロキシラジカルの移動が象牙細管を介するものであることが選択肢の一つであると考えられます。

これはホワイトニング後の管周象牙質の漂白の評価が出来れば、判断出来るかもしれません。もしくは、歯髄に直接貼薬するなどが行われる必要があります。

この状況下においては、象牙細管を介して移動するヒドロキシラジカルの何らかの成分は、その量を制限されることになり、その為に歯髄の恒常性が保たれていることも考えられます。

また、活性酸素はごく微量であっても細胞に障害を与えることから、象牙細管内を通る活性酸素の量はそれよりも多いと考えられるため、そもそもこれらの反応は活性酸素によるものではないとも考えられます。

これらのことは、今後の報告を期待して待ちたいところです。

ホワイトニングの活性酸素量の考察

0.3~30%の過酸化水素と0.5%NaOClに、キセノンランプ・ハロゲンランプ・He-Neレーザーなどの光照射を行なった場合のラジカルを電子スピン測定されています。

それらの結果、過酸化水素からは濃度と照射時間に比例してヒドロキシラジカルが発生することが確認されています。またNaOClからは照射時間に比例してDMPO-Xの発生が確認されています。

光源別には、ハロゲンランプ>キセノンランプ>レーザーの順にヒドロキシラジカルの発生が多かったと報告されています。

一方、ヒドロキシラジカルを消去する薬剤にはDMSO(ジメチルスホキシド)、ポリフェノールを含むフェノール類およびエタノールがいわれています。

臨床時にホワイトニング材が漏洩し、粘膜に触れてしまった場合などにはエタノールが有効であるといわれています。

ホワイトニングによる活性酸素と発癌については考えにくいとされています。