歯肉の炎症

歯肉炎

成人における歯肉炎は、科学的には証明されていないものの、後に歯周炎に移行する可能性の高いものとして注意していかなくてはいけません。また、近年では若年者でも見られることが多く、未就学児であっても歯肉炎のみられる場合があります。若年者では歯周炎への移行頻度は低いものの「急速破壊性歯周炎」や「「壊死性歯周疾患」などに移行することもあり、若年期からの歯周支持組織の喪失は青年期からの歯牙の喪失を招く危険性があることからも、見過ごす訳にはいかないと考えられます。

「急速破壊性歯周炎」とは元は「早期発症性歯周炎」のことであり、旧来の「限局性若年性歯周炎」や「広範型破壊進行性歯周炎」などに置きかわり、前者は「限局性急速破壊性歯周炎」後者を「広範型破壊進行性歯周炎」という用語が使われるようになっています。なお、「前思春期性歯周炎」などの用語も廃止になっています。

また、「壊死性歯周疾患」とは旧来の「壊死性潰瘍性歯肉炎(NUG)」と「壊死性潰瘍性歯周炎(NUP)」を総称して呼ぶことになっています。NUGとNUPは同じ感染の異なる段階のものと考え区別をしない方針となったためです。ちなみに、この疾患はは全身的な抵抗力の減弱と関係がみられています。

歯肉炎とは

歯肉炎とは、辺縁軟組織の色や表面性状が変化し、プロービング時に出血しやすくなることです。歯肉病変の正確な診断は組織標本のみでしか分からないことであるので、歯肉炎の病態が「開始期病変」「早期病変」「確立期病変」のどの段階であるかを正確に鑑別することは意味の無いことです。しかし、歯肉溝・ポケット底部からのプロービング時の出血は、炎症性細胞浸潤組織の存在があることを間接的に示すものとして、歯周疾患の存在を示す重要なインデックスと考えられます。

ポケットの測定では、歯肉病変の根尖方向への拡大を確認することが出来ます。ポケットが浅い場合の歯肉の炎症性病変は歯肉辺縁組織表面をプロービングすることによって確認されます。また、ポケットが深い場合にはポケット底部をプロービングすることにより確認されます。

歯肉炎のSPT

複数の研究において、ブラッシング技術の向上などの口腔衛生の強化とともに、SPTを定期的に行うことで歯肉炎をコントロール出来ることが示されています。この研究は古くから行われていて、1961年には5年間の観察期間中に歯肉縁下のスケーリングと口腔衛生指導を年に2〜4回行なったところ、歯肉の状態がコントロール群よりも60%の改善、50%の喪失歯の減少という報告があります。この実験から送れることおよそ45年、日本でもようやく予防歯科が言われるようになり、現在に至っています。

この実験以外にも、多くの研究で同様の効果が示されており、成人において効果的な口腔清掃と周期的なSPTによって、そのようなプログラムに組み込まれていない患者と比べてはるかに良好な歯肉状態が示されたことが報告されています。

別の研究では、SPTと口腔衛生指導を定期的に行なった患者と、何もしなかったコントロール群を比べたものもあります。それらの結果、実験群におけるアタッチメントロスは0.08mmであったのに対し、対照群では0.3mmとおよそ4倍の速さで歯周組織の破壊がみられたことを報告しています。

また、成人の歯肉炎患者においては、歯周治療後に口腔衛生状態の改善がみられなかった場合は、定期検診を受けた人と比較して歯肉の改善がみられなかったと報告されています。