歯肉縁下プラークの問題とは

歯周病の原因

1800年後半までは現在のような虫歯はみられなかったというお話をしました。

予防歯科の主役 ~カリオロジー~

しかし、歯周病についてはもっと以前から確認されていて、多くの人の悩みの一つとなっていました。そして、現代においても依然として人々を悩ませる疾患の一つとして挙げられるものが歯周病です。「歯を磨いてはいけない」論者の人たちが主張するように砂糖を摂らなければ虫歯にはならないかもしれませんが、砂糖によって腸内細菌が荒らされて免疫が落ち歯周病が悪化するというお話では、精製された砂糖が生まれる以前の古来から歯周病が生じていたという説明が出来ません。現在の歯周病学においては歯周病を生じさせる細菌の特定までは出来ておりませんけれども、このプラークが原因になっていることは明らかになっています。特に、このプラークの中でも歯肉辺縁の下方(歯肉溝や歯周ポケット)に形成される歯肉縁下プラークは非常に重要な因子と考えられています。今回は、この歯肉縁下プラークについてお話ししてゆこうと思います。

歯肉縁下プラークの性質

歯肉溝に存在する細菌が集落化し、バイオフィルム感染を起こし、その後に歯周ポケットを生じさせる際には必ずといってもいいほど歯肉縁上プラークから始まります。そして、このプラークには唾液から細菌が付着する可能性は限られているかほとんど不可能であるといわれています。つまり、プラークは自家増殖しているようなもので、常在菌の影響が作用しにくいということです。このことは「元々は常在菌なのだから歯周病になったのは免役破綻した身体の方がおかしいからです」のような主張に疑問を投げかける事実です。

歯肉縁下プラークが形成されてゆく初期では、その組成は歯肉縁上プラークの影響を受けます。ただ、歯肉縁下プラークの場合は歯肉縁上プラークのみならず歯肉縁下の環境が大きくその生育に影響を及ぼします。口腔より歯周ポケット内の嫌気性菌(酸素のないとことで繁殖する菌)に影響を及ばせるのには限界があります。また、歯肉溝滲出液により栄養供給され、炎症を伴うとさらに歯肉溝浸出液は増加するというサイクルにもなっています。また、歯肉溝浸出液では細菌を洗い流す能力が弱いです。これらの要因により、プラークの組成が縁上と縁下では異なるという結果をもたらしているようです。

スケーリング

歯肉縁下プラークの菌の構成

2~3ヶ月放置した軽度から中等度の歯肉炎を有する歯肉溝の内部は、streptococciが25%を占めています。その他、25%がActinomycesであり、嫌気性のクラム陰性桿菌が25%を占めます。この程度の時にスピロヘータは2%ほどといわれています。これらが病的な深い歯周ポケットを形成してくると嫌気性菌のうち90%がグラム陰性菌になり、そのうちの75%がグラム陰性桿菌になります。また、スピロヘータは40~50%を占めるようになります。このように、歯周ポケットが発達するにつれてグラム陽性球菌や桿菌の割合は減少し、グラム陰性桿菌や嫌気性菌が増加するようになってゆきます。

まとめ

歯肉炎の改善には徹底的な歯肉縁上プラークの除去が有効であることは明らかでしたけれども、歯周病を誘発する歯肉縁下プラークも歯肉縁上プラークが影響を及ぼすことが示唆されていることから、日頃からプラーク除去を目的とした歯肉縁上のブラッシングは有効であると思われます。また、取り逃がしたプラークによって形成された歯肉縁下プラークも歯科医院などて機械的な洗浄をすることが必要だと思われます。そして、再びプラークが歯肉縁上に形成されてしまうと、また歯肉縁下に影響を及ぼすはずです。しかも、プラーク形成には24時間もかからない可能性がありますので、日頃のセルフケアによりプラークを付着させておかないことが重要になってきます。