歯質接着の安全性について

安全性

日本における歯科医療は修復・補綴処置を主体に行われてきました。多くは材料の技術発達に伴い、その都度その段階でのベストの治療として採用されてきました。最新のものが必ずしも最善ではありません。けれども、ある程度のデータが出揃った上で、出来得る限り中立的な見解を持って良いと考え得るものであれば、もはやそれは更新されてゆかなくてはいけません。以前の治療は、接着剤の機械的性質や接着量そのものの低さを補うものとして選択されたきた技法でした。近年では接着強度が歯そのものの強度を超えて、剥がそうとすれば歯が割れてしまうほどになりました。このことにより、修復処置・補綴処置における維持・把持・支持を発揮させるための便宜的な歯質の切削を行わなくてすむようになりました。これらのような条件が整ったこと、そもそも歯質の削除量が多いことが将来的な抜歯に繋がるという見解が得られたことによって、低侵襲な治療を行い将来に自分の体の一部を残すことの重要性についての認識が高まってきています。さらに、修復・補綴処置は日常で頻繁に行われる治療です。これらの治療の質がボトムアップされることによって良好な口腔内環境の維持に繋がることは明らかなことです。

生活歯におけるMI

生活歯におけるMI歯学のコンセプトに基づいた治療を行う場合、虫歯の除去、修復処置において歯髄を極力保存する努力が必要になります。象牙質歯髄複合体の生体防御機能を活かしながら常に神経の保護を考えなければいけません。防御機構を持たない健康な象牙質においては、まず削除しないことが前提となるため、歯髄刺激の発生しない接着修復を実現するためには最小限の切削、つまりMIが必要になってきます。

齲蝕反応象牙質

スミヤー層を除去した場合に象牙細管が開口し、歯髄へと外交出来るようになるのは健全な象牙質の場合です。齲蝕や咬耗・摩耗などの影響に晒された場合はその限りではありません。特に齲蝕に晒された場合では、齲蝕下の細管内にはリン酸カルシウム系の結晶が沈着して細管を閉じています。それにより歯髄と外界との交通は遮断されています。このような部位を齲蝕反応象牙質と呼び、刺激が伝達されにくくなっています。これは一種の生体防御反応です。

接着界面でのギャップ

歯質の中でも特に象牙質に対するレジン系材料の接着に関して、歯髄刺激及び歯髄反応を食い止めるにはレジンと歯質との界面に生じるギャップがない密着性が重要となります。接着修復は必ず歯面処理を行うため象牙細管は開口します。この開口部より歯髄反応を生じてしまいます。レジン系材料がギャップなく象牙質に密着すればこれらの開口部を閉鎖することとなり、刺激の伝達路が遮断されるので歯髄刺激が生じずに済むようになります。しかし、材料と歯質が密着しなかった場合には、温度変化や咬合圧などによって歪みが発生してしまいます。この時のギャップによって容積変化が起こり、ポンピング作用などによる組織管内の組織液の移動が起こり刺激が発生します・

このように、レジン系接着剤の成分や性質によるものではないところで歯髄刺激が生じてしまっているようです。