歯質接着は安全か?

コンポジットレジン(以下、CR)が普及する以前、象牙質への接着が臨調応用され始めた頃、CRによる修復処置はいきなりの土壇場を迎えました。従来の保険診療で使われる金銀パラジウム合金を使った治療方法と比較して、CRによる修復処置の方が知覚過敏発生率、急性の歯髄炎を招く割合が大きいと報じられました。このことを解明するために、多くの研究が急ピッチで行われ、すぐに回答がみつかりました。原因は「コロナルリーケージ(微小漏洩)」でした。当時はウェットボンデイング・3ステップ・セルフエッチングプライマーとボンディングシステムが乱立していました。また、CR修復は治療の簡単さや白さを全面的にアピールrされていたこともあり、臨床操作は混沌としていました。そのため、手技的操作の問題で歯質とCRが離れて硬化してしまい、微小な隙間が出来てしまうことが多っかたようです。

歯質接着剤に刺激性はあるのか?

CR修復後の神経症状の発現が材料そのものの性質によるものだと疑われた一方で、歯質に対しての刺激性・毒性についての研究も行われていました。近年のレジン系の材料は生体親和性に優れているといわれています。しかし、遺伝子型も異なれば生体に同化する物質でもありません。ですので、常識的に考えて歯髄組織に全く刺激がないということはあり得ません。ただ、レジンによる直接覆髄の治療をみてみると90日後の病理組織像ではレジン直下の歯髄組織にはほとんど炎症は認められず、被蓋硬組織を形成して治癒しています。これを見るかぎりでは、ボンディングレジンは歯髄を壊死させるような毒性を有する材料ではないことのようです。レジン系材料の科学的毒性について懸念が論じられて久しいのですが、種々の研究により象牙質の性状やレジン系材料の接着性の方が、レジン自体による科学的刺激よりも歯髄刺激性に大きく関与していることが明らかになっています。

象牙質歯髄複合体

レジン系材料を歯質に接着させる場合、エナメル質はほとんど無機質で構成されている上に、発生学的にも上皮性のものです。そのため、レジンの接着は安定しており、歯髄刺激性にほとんど関与が見られません。一方、象牙質と歯髄は発生学的には同じ結合組織性であり、無数の象牙細管が走行している上に、1本1本が歯髄と交通しています。したがって、象牙質への刺激や感染は歯髄への刺激や感染と同義で扱われるものとなります。しかし、臨床では石灰化された象牙質はエナメル質と同様の無機質として扱われることが多いため、十分な注意が払われないことが多く見受けられます。

象牙細管

象牙細管での露髄

象牙質に対して切削を行うと、象牙細管内の歯髄組織も切断されて刺激が伝達されます。しかし、切断された象牙細管の入り口はスミアー層で覆われるため、外来刺激の影響を受けにくくします。ただ、レジン修復を行う際には酸によりスミアー層が溶解・除去されるので象牙細管は開口します。開口した象牙細管は外交出来るようになるので細菌感染、ギャップなどの象牙質と接着剤との界面における刺激を受けます。このことは同時に歯髄への刺激であることも意味します。