生物学的・力学的にみたオッセオインテグレーション

オッセオインテグレーションと力学・生物学

オッセオインテグレーションについていくつかお話ししてきましたけれども、今回は実際に咬合力を加えた状態の力学的なこと、生体内に”異物”を埋入することについての生物学的な考えはどのようになっているのかをみてゆきたいと思います。

数年前に「他院でインプラントを入れてから具合が悪い気がする」と相談を受けた事が何度かありました。当時はチタンにはアレルギーが生じることはほとんどなく、生体親和性の高い安全な材料であるということが歯科業界の大半の常識でしたから、「違う事が原因なのでは?」とお伝えしていました。

私だけでなく当時の多くの歯科医師の間ではインプラントの危険性は外科的手技の際にのみ生じるものという認識でしたし、チタンは信用に値する材料として考えられていました。ですので、「インプラントで体調が・・」などのような訴えがあると患者側に問題があるとし、「不定愁訴」ということで敬遠されてしまいがちでした。

現在はチタンにもアレルギーがあることや、それを除去した後に不快症状が改善したという話は一般的にも知れ渡るようになりました。近年では日焼け止めなどで使用される二酸化チタンへの暴露回数の増加に伴い、女性でのインプラントのチタンアレルギーについての報告をみかけるようになりました。

チタンが扱われるようになって半世紀になりますが、今後はその応用はますます増えると予想されますので、インプラントについての生物学的観点からの再評価は必要になってくることだろうと思います。

さらに、色々な術式が登場し、インプラント埋入の適応症が広がった今、一方ではその選定が甘くなることも懸念されています。その結果、過重負担によるトラブルは増加傾向にあるようですし、インプラント周囲炎の問題も未解決のままです。

また、術式の増加に伴い骨補填材などの種類も増えてきました。未確認ですが、最近ではある骨補填材を使用した患者は献血が出来なくなるかもしれないという話もあります。また、個人的な独自の方法の伝播も行われるようになってきています。
「安全面を考慮して」という名目で一度は世に出たものの、その後に消えかけた”ステント”の使用によるインプラント埋入もメーカー各社の努力によって再び見直されています。

インプラントに関することはそろそろ”一周”したところのようで、出揃ったと判断できる時期に入っているようです。今後はそれらの再検討の時期に入るのかと思われます。

このような背景のある中で、各材料などの検証は後の記事に譲るとして、今回はその基礎となる一般的なインプラントではどのような力学的・生物学的な変化が生じているのかについてみてゆきたいと思います。

オッセオインテグレーションの変化

オッセオインテグレーションは軟組織の層を介することなくインプラント体と骨組織が直接的に結合する状態であるといえます。近年では、インプラント体の表面の100%が骨組織と結合しているわけではない事が明らかになり、オッセオインテグレーションの意味合いも変化しつつあります。

オッセオインテグレーションは1991年に「機能的荷重状況下において、骨組織中のアロプラスト材が臨床的に何ら問題なく、強固な固定が出来、その状態が維持される状態」と定義づけられました。
アロプラスト材とは不活性金属のインプラントのことをいいます。

これは組織学的判定基準の代わりに、安定性を目安として評価しているものですが、そこに問題が生じます。

「安定性が得られている」とされるインプラントにおいて、これらの骨接触率を調査すると荷重開始から1〜18年経過症例における骨接触率は60%以上になっていることが明らかとなりました。また、上顎骨よりも下顎骨における骨接触率が高いということも分かっています。さらに、骨移植症例においては臨床的に安定しているインプラントであっても骨接触量が極めて少ない場合があることも分かっています。

オッセオインテグレーションが骨組織との結合の意味を持つ場合、これらの条件は合わないということになります。

1983年にはオッセオインテグレーションによる結合は、インプラント体の界面に物理的ならびに化学的な作用が働いていると示されてきましたが、そのことがオッセオインテグレーションの結合力の主体であるかどうかは根拠がありません。今日の見解では、オッセオインテグレーション時の結合は生体工学的なものに由来すると考えられています。

インプラント表面加工と骨の反応

表面加工されたインプラントは生体活性が高いといわれています。これはチタン板に水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムによる処理を行う事で生体活性が高まることを示し、大きな荷重をかけても高い抵抗性を示したという研究結果よりいわれています。

ただ、100μm以下の狭い部分では内部に向かっての骨組織の成長が認められないことは古くからわかっています。しかし、骨基質自体は1〜100μmの不規則な表面にも適合すると考えられています。これらのことにより、インプラントの表面性状の変化や不規則性が維持力に大きな影響を及ぼすと考えられています。ただ、これらの研究にも関わらず、骨組織に影響を及ぼす不規則性については何ら科学的根拠は示されていません。

平均的表面粗さについては、1.0~1.5μmの値のものを備えた表面に対しては、顕著な強い骨組織の反応があることを確認されています。表面粗さが2.0μm以上のものでは、これらの比較的粗い表面からのイオン漏出が要因とも考えられる骨組織の反応性の低下がみられるようになります。

オッセオインテグレーションと時間

1987年の研究ではインプラント埋入後、最初の数週間はオッセオインテグレーションの兆候がみられず、埋入3ヶ月後に比較的高確率にインプラントへの骨組織の直接的な接触が認められ、除去に要するトルクが明確に上昇したことを報告しています。

高純度チタン性インプラントは埋入された2、3週間ほどは完全に安定した状態ではないと考えられます。それにもかかわらず、圧入されて初期固定の得られた場合には、インプラントに対する早期の負荷が可能と考えられています。それらの術式による研究で上顎に関するものは少ないのが現状で、インプラントの安定性の判断は部位や骨質や骨量などの判断が重要になります。