矯正歯科治療の必要性 ~口の機能~

顎関節症

咀嚼について

重篤な咬合異常の成人の方のほとんどが咀嚼困難を訴えます。たしかに、咬合異常も重篤となれば口の機能のあらゆる面で障害をもたらす恐れがあります。矯正治療後は、患者様はほとんど咀嚼の問題は改善されたとおっしゃいます。咬合異常であれば咀嚼機能にとっては不利ですけれども、実際のところ咀嚼機能を正確に評価する試験方法はなく、機能的障害の程度を計測する客観的な方法はありません。顎機能を適切に調べる方法がないわけですから、矯正治療を行う理由として咀嚼機能障害が科学的に論じることが出来ないのが現状です。(まだ研究段階ではありますが、咀嚼運動タスクを録画して咀嚼効率をスコア化する定量評価法が提案されています)

順応性の変化

重篤な咬合異常がある場合、嚥下パターンに順応性の変化が生じることがあります。また、一部の構音が障害されたり発することができなくなったりすることがあります。構音障害の場合、言語治療の効果を上げる目的があるのであれば、あらかじめ矯正治療を行なっておく必要があります。咬合異常が重篤でない場合であっても、顎態の異常を補償するための余計な運動が行われる時があります。例えば、食物を嚥下しやすい性状になるまで咀嚼して食物を粉砕しますけれども、咬合異常があり咀嚼効率が低ければ普通よりもエネルギーを使って咀嚼するか、十分に粉砕されていない食物を胃に流し込むことになります。発話に適した唇の動きを行うために下顎を動かす訳ですが、重篤な咬合異常があったとしても普通の発話をすることができるようになり、歪んだ発話は稀にしか検知されません。このように咬合異常があったとしても順応しそれに応じて変化が生じます。この種の口顎諸機能の適応を数量化する方法も今のところないので、咬合が機能に与える影響を正しく評価出来ません。

顎関節症

顎関節症は顎関節内部とその周辺の疼痛として現れることが多いです。疼痛は顎関節部の病的変化によって生じることもあれば、筋肉の疲労や痙縮が原因となることもあります。筋肉痛は下顎が前方や側方などに偏位した状態を継続させていたり、歯を強く噛み締めていたり、擦り合わせていたりするなどの既往歴を関係があります。これらクレンチングやグライディングは日中起こることもありますし、就寝中に生じることもあります。

咬合異常と歯ぎしり

我々歯科医師の中でも、わずかな咬合異常がクレンチングやグライディングを引き起こす原因になると信じている人がいます。しかし、顔面部の筋肉痛の原因がクレンチングやグライディングであるならば、これらを防止するために全ての人の咬合を完全なるものにしなければならなくなります。けれども、咬合異常を有する者の数は全人口の50~75%であるのに対し、顎関節症を有する者の数は全人口の5~30%に過ぎず、咬合様式のみが単独で口顎を構成する筋肉の機能亢進を引き起こすとは考えにくいです。

唯一、閉口時に下顎が偏位して臼歯部交叉咬合になるものは顎関節症と正の相関がみられますが、しかしそれさえ相関係数は0.3~0.4にすぎません。これらのことを踏まえると、咬合異常と顎関節症との間には何の関係もないことを意味しています。このことは米国の顎関節の学会でも公式に発表しています。

ストレス

顎関節症について考える場合、ストレスに対するリアクションは常に考えられることです。強いストレスを受けても筋肉痛などが生じない重篤な咬合異常の者もいますけれども、他の器官に病的徴候が現れることがあります。たとえば、胃潰瘍や潰瘍性の大腸炎などと顎関節症が併発していることは稀です。

このストレスに対して、口腔の筋肉の活動の亢進という反応をするのであれば咬合異常も顎関節症もより一層に重篤かつコントロールしにくいものになります。疼痛や痙縮をともなう咬合異常については疼痛の除去のために付属的な治療として矯正歯科治療を行う予定だったんだ