象牙質へのレジン接着

象牙質への接着

象牙質に接着を利用する場面は、例えば齲蝕処置後のコンポジットレジン修復や金属・セラミック・ハイブリッドセラミックスなどの合着などがあります。象牙質はエナメル質とは異なり、およそ20%の有機質と11%の水分が含まれます。組織的にはコラーゲン繊維の周囲にハイドロキシアパタイトが付着した複合体の構造をとります。機械的性質はコラーゲン繊維が粘り強さを担い、硬さをハイドロキシアパタイトが担っています。象牙質内の象牙細管は直径1〜3μmの大きさで、歯髄側から放射状に走行しています。象牙細管内は組織液で満たされており、一定の圧力で歯髄側からエナメル質方向に汲み出ています。象牙細管はエナメル質側付近では20000本/㎟、歯髄側では45000本/㎟あり、歯髄側に向かうにしたがって水分の影響を強く受けるようになります。

象牙質

ボンディングレジンの性質が疎水性という水分を苦手とするものであることから、歯質、特に象牙質に浸透してその濃度を高率で維持しながら硬化するのは技術的にとても困難なものでありました。1990年代に中林理論が確立されコラーゲンに接着させることに成功し、それから間も無く歯質レジン界面の接着力が歯質の耐久性を上回ったことにより、今日ではあらゆる場面においてレジン接着が行われるようになりました。

接着機構

酸によって脱灰された象牙質表層へレジン成分が浸透し、そこで硬化することによってレジン象牙質複合体を形成します。この部分を樹脂含浸層もしくはハイブリッド層と呼びます。また、成分中の機能性モノマーが象牙質に浸透性を持つ上にハイドロキシアパタイトとの化学的な接着も行われます。象牙質接着の場合の歯面処理には

1,スミアー層の除去
2,interaction zoneの形成
3,ヌレの向上
4,レジン成分の濃度維持と重合硬化

などの意味合いがあります。

歯面処理

エナメル質への接着にはリン酸によるエッチング処理が有効であることがわかっていましたけれども、象牙質に関してはエナメル質の時と同様の手順を踏むにしても歯面処理剤は多くのものが検討されてこなければ今日の成果は得られませんでした。このおかげで、現在ではリン酸とセルフエッチングプライマーが用いられています。尚、象牙質に対しても接着時間の延長は必ずしも接着強さの向上には繋がらないということがいわれています。

リン酸エッチング

象牙質歯面処理のひとつにリン酸エッチングがあります。象牙質へのリン酸の塗布では、スミアー層の完全な清掃とハイドロキシアパタイトの除去がなされ、コラーゲン繊維が露出します。この露出したコラーゲン繊維束は、エッチング後の水洗で得た水分を繊維間に保持することで形態が維持されています。エッチング後の象牙質面は有機質コラーゲンと水分だけとなり、疎水性であるレジンのヌレの獲得が困難になります。そこでヌレの獲得のためにデンティンプライマーを使用し、コラーゲン層の下部にある固有象牙質の固有象牙質の一部脱灰層にまで浸透させてボンディングレジンとのヌレを改善させます。

セルフエッチングプライマー

セルフエッチングプライマーの主成分は機能性モノマーです。このモノマーは水溶液中で酸として作用するので象牙質をエッチング処理するとともに、ボンディングレジンとのヌレの向上させる機能も有しています。セルフエッチングプライマーを塗布したところでは、表層のスミアー層が除去されます。その際に一部のコラーゲン繊維が露出します。このコラーゲン繊維網は薄いもので、ボンディングレジンを拡散・浸透させます。それによって強固な接着が獲得出来ると考えられています。

次亜塩素酸ナトリウム

象牙質の脱灰によって露出したコラーゲン繊維網がボンディング材の浸透を阻害する場合があるのですが、そこでボンディングに先立ち次亜塩素酸ナトリウムで処理を行うという臨床技法が一部で提唱されていました。調べてみるとこの臨床手法は一部のレジンには非常に有効であることがわかりましたが、その他のシステムでは脱灰露出コラーゲンとともに固有象牙質の有機成分も除去してしまい、象牙質の構造変化をもたらせた結果、接着力が低下してしまうことがあります。また次亜塩素酸ナトリウムの残留もレジンの重合阻害となりうるので、慎重に併用する必要があります。この誤解は非常によくみかけます。化学反応に基づいた接着機構を十分に考慮して臨床応用していただくことが今後のレジンの発展に繋がると思われます。