適切な歯科治療とは何か?

臨床的判断

過去数十年もの間、施される歯科治療の適切さについて広く議論されてきています。

その結果、同じ患者や似たような症状に対して行われる診断や、推奨される治療に関し、歯科医師の間で様々な違いがあるということが実証されています。

もちろんこの結果は、患者によって健康上の問題や費用との密接な関係からも導かれるものです。疾患の発生率や進行具合、施される治療や原因となる変化、病原菌、リスクファクターなど口腔内の健康に関する十分な情報が不足していることも確かで、これら全ての要因を個人の解釈や判断に委ねて治療が行われているという現状があります。

診断や治療方針にばらつきがあるということは、歯科の臨床家達の間でコンセンサスが欠如しているということを表しているのではないかと指摘されています。

もし科学的根拠というものが存在するのであれば、

感覚的に有益と感じられたこと、独りよがりに観察される改良点、小さいサンプル、短期間の効能、古臭い科学、状況から導き出された科学、信頼できる科学の一部、逸話、他人の意見、広告や宣伝、ただの直感、知ったかぶりなどに基づいた治療は到底受け入れられないものだと思います。

G.V.Black

1908年にG.V.Blackが「修復学」という著書において発表したものが、今日の保存修復学のベースとなっていました。これを元に発展してきた齲蝕治療における修復処置は、歯科医師にとっての信頼のみならず、伝統的な保存修復治療への大いなる信仰にもなっています。

しかしながら、G.V.Blackはその著書の中で「歯科の臨床と齲蝕の病理学の研究とを完全に分離することは、過去においてそうされたことはあったのだが、これは科学においては続くべきでない異常なことである。そしてこのことは、歯科医を技術にのみ専心させる明白な傾向がある」と記しています。

つまり、歯科医師をエビデンスに基づいた治療を実践する臨床家というよりも、むしろ技術者や口腔外科医としてしまうことを危惧していたということです。

しかし、そのおよそ100年後には、多くの歯科医師が歯科の技術屋として存在することになってしまいました。

その結果、医科における感染症の治療とは全く異なる方針を打ち立てるようになりました。齲蝕と歯周病が「感染症」であることをもはや知らない者はいないという状況になってさえ、金属を使って治療することが当たり前となりました。

技術的なものの収集狂

さらに、ある研究では歯科の臨床家は”技術的なものの収集狂”であると報告がなされています。

また別の研究では、歯科の臨床家達が新しい科学的な概念を取り入れるのは非常にゆっくりであるのに対し、一方でとても早く新しい技術を受け入れると指摘されています。

これらの不均衡が、歯科の業界ではよく観察されるものとなっています。2002年には、多くの分野において、治療の軸が新しい技術と製品の導入から変化を起こり、それらの効能や安全性に対する適切な科学的証拠書類の裏付けが全くないこともしばしば見受けられると指摘されています。

また、大御所といわれる者の逸話的な情報に対する情熱はこの上なく退屈なものであるが、当の本人たちは美しい修復物の写真を眺め、例えそれらの臨床的な予後がたったの30分であったとしても、それらに心地よさを感じている。とまで言われています。

もう何十年もの間、齲蝕と歯周病は慢性の疾患であり、過剰な切削を伴う修復処置よりも、生物学的な過程を効果的にコントロールしたり阻害したりすることによって克服出来ることを知っているはずなのですが、様々な事情により行われていない場合が多いのが実際のところのようです。

歯科医師の事情

歯科医師にとって手厳しい意見や見解は意外と多いものとなっています。

財政的な問題も重要な役割を果たしているとされています。その論評によると歯科医の報酬について、多くが品目別払いつまり出来高制度に基づいていて、報酬額は技術的な処置の方が予防的処置・疾患コントロール処置よりも高いことが指摘されています。また、このことは生物学的問題にたいする偏見を強めるものだと批判されています。

Ranshaw(2005)は「情熱を持ってこの予防学的哲学に従おうと努力し現在の財政制度の下で働くのであれば、数ヶ月の後に破産してしまうだろう。決して居心地の良い魅力的なところではない」と発言しています。

歯科の市場においては、内容に対する競争が働かないためこれらのことが日常的に行われてしまっています。

そして、患者側の視界によって提供される処置の程度と質とを評価するのに必要な知識や洞察力に欠けていることもまた、研究によって指摘されているところです。

2つ筋書き

まだほんの少しの研究報告しかご紹介出来ておりませんが、歯科医療の質の向上を望む人たちによる叱咤激励がさかんに行われてきています。

そして、将来の歯科臨床について2つの筋書きが予見されています。

一つは「グルメ歯科医院」と呼ばれるもので、ハリウッドスマイルや高価なお口の装飾品を売り物にする、美を扱うビジネスマンに支配されているという筋書き

もう一つは患者の口腔内の健康の行く末に対して、科学的根拠に基づいたアプローチを維持しようと努力する健康を扱うプロの仕事人たちによって成り立つという筋書き

歯科の規制は依然として大部分に規制がありませんので、海外から個人輸入したものを自由診療で行うなどのことが行えています。このビオジネスマン的アプローチさらに多くの領域を獲得するための多大きなきかいとなっているようです。