鉄の代謝

鉄の代謝

成人における鉄の吸収は、1日あたり10〜15mgが経口摂取されるうちの約10%にあたるimg程度になります。

一方、鉄は消化管において潜血で0.4mg、粘膜の剥離や脱落によるもので0.1mg、胆汁中に0.2mgが喪失します。その他、汗や脱落する表皮細胞に0.2mg含まれて喪失し、尿中の排泄により0.1mgの喪失があります。これらを合計すると約1mgとなり、吸収量とほぼ同値を示しバランスのとれた状態となります。

ただ、女性の場合は月経血による鉄の喪失も起きますので注意が必要です。日本人女性の平均的な月経量は約60mlとされ、これによる鉄の喪失は約30mg程度であるだろうといわれています。

これは1日平均に換算すると2mgの喪失に相当し、成人男性の約2倍の鉄の摂取が必要であるといわれています。

また、妊娠と出産に伴っても鉄の喪失がみられます。この時期の喪失は1日あたり3mgにも及ぶとされ、食事以外での補給が必要であるといわれています。

今回は、これらのような鉄の吸収や喪失の反応がどのように行われているのかについてお話ししてゆこうと思います。

鉄の吸収

鉄の吸収は、主に十二指腸・回腸で行われます。

難容性の三価の鉄は、胃の酸性条件下にて水分子が配位したアコ錯体となって可溶化することで、初めて十二指腸・回腸で吸収されます。しかし、中性のpHの条件下では三価鉄の錯体は重合してしまい沈殿してしまいます。ただ、配位子の種類によっては重合することなく中性pHでも可溶化します。

一方、不溶性の二価の鉄は中性のpHでも可溶化します。二価鉄が三価鉄に酸化されないためにビタミンCなどの還元剤と摂取されると、そのまま中性pHでも可溶化されます。

鉄はそれぞれ、可溶化されることによって吸収されます。

二価の鉄はメタルイオントランスポーター1(DMT-1)という担体を介して取り込まれます。DMT-1は十二指腸上皮に多く存在する、鉄以外の金属イオンなども運搬する特異性の低い輸送体です。

また、三価の鉄は粘膜細胞から分泌されたトエランスフェリンと結合し、トランスフェリン受容体を介して取り込まれます。

これらの担体を介して粘膜細胞内に能動輸送された鉄は、フェリチンとして貯蔵されます。

貯蔵された鉄は、必要に応じて血中に分泌され、トランスフェリンと結合して各組織に運搬されます。運搬されたヘム鉄はそのままの形で吸収され、細胞内でヘムオキシゲナーゼによって鉄が遊離されます。

鉄の吸収率は様々な状況に応じて1%以下〜50%以上と大きく変化します。この変化を生じさせるものとして

・鉄の必要度
・年齢
・健康状態
・胃腸の状態
・鉄の摂取方法

等があります。

鉄欠乏の原因

鉄について ~鉄欠乏の症状~では、WHOが鉄欠乏について報告していると書きましたけれども、その原因について現在考えられているものは以下のものになります。

1;食物中の鉄含有量の低下
・加工精製食品、牛乳および乳製品、果物、砂糖、油脂などは鉄をほとんど含みません。これらの食品を摂取する頻度が増加したことも一因のようです。
・調理器具に鉄製のものが使われなくなった
・野菜などの栽培に有機肥料を使用しなくなった
・低タンパク、低亜鉛食になった

2:吸収障害
・ピロリ菌感染による萎縮胃
・制酸剤による胃酸分泌の低下
・吸収不良症候群
・消化管手術

3:需要の増大
・乳幼児期において新生児は生後4ヶ月ほどで体が2倍になるなど劇的な成長が行われます。これは出産時に多血症として産まれ、その成長に見合うだけの鉄を貯蔵しているから出来るものです。

この時期の後半である生後3ヶ月から4歳くらいまでは鉄欠乏に陥りやすいといわれています。また、乳児では牛乳に対して免疫反応を起こし、腸管からの出血、貧血が起きやすくなります。また、牛乳はカルシウムとリンの含有量が多いため、それらと鉄が複合体を作り腸からの吸収が阻害されるなどのことがあります。

・思春期〜青年期にかけて身体の成長とともに血液量も増えます。女子の場合、月経の始まりより貧血に陥りやすく、また不適切なダイエットにより鉄欠乏を招くことがあります。

4:失血・溶血
・月経血、妊娠出産にともなう鉄の喪失
・失血(鼻出血、外傷性出血、献血、関節炎など)
・消化管からの出血(アスピリンなどの内服、アルコール、消化性潰瘍、痔核など)
・溶血(アルコール常飲者、アスリートなどは活性酸素障害による赤血球膜障害)

歯茎からの出血はポケット内部にある潰瘍の疑いもあるため、失血の一因となり得ます。また、歯周病菌による活性酸素の発生も生じます。

鉄欠乏は歯茎の健康や舌の状態にも影響があるため、注意が必要になります。