鉄の存在様式

鉄

鉄について 〜鉄欠乏の症状〜では、鉄が生命活動に様々な影響を及ぼすということを知ってもらいたかったので、まず初めに「鉄欠乏による症状」を中心にお話しさせて頂きました。これだけでも鉄と身体とのあらゆる関係をお分かり頂けたかもしれませんが、そもそもミネラルと身体反応についてそれほど関心がない場合、その関係性には「まさか」とお思いになる方もいらっしゃると思います。

そこでこれからは、「鉄」がどのように吸収され生体内で機能し、代謝されてゆくのかについてお話ししたいと思います。これにより、鉄について ~鉄欠乏の症状~の「鉄欠乏による症状」について理解が深まってくれて、鉄の重要性を感じて頂ければ幸いです。

鉄が生体内でどのような動態を辿るのかについて把握するために、まずは体内においての存在様式をお話ししようと思います。

体内における鉄の存在様式

体内の鉄の総量は3〜4gです。その多くはタンパク質と結合して安定した状態で存在しています。

最も含有量が多いものがヘモグロビンで、体内の鉄の総量の65~70%を占めます。次いで貯蔵鉄の主成分であるフェリチンは25~30%を占めます。その他に知られるものとしては、ミオグロビンが3〜5%、トランスフェリンが0.2%などの構成比になります。

体内に存在するタンパク質と結合した鉄を、その機能によって分類すると

・機能性鉄
・貯蔵鉄
・運搬鉄

というように分類出来ます。

タンパク質と結合しない少量の鉄は「フェントン反応」の触媒として「活性酸素」の発生源となります。活性酸素自体にもタンパク質に結合している鉄を遊離させる作用を持っているので、活性酸素消去系の機能が不十分な場合はその正体はダメージを受けることになります。

機能性鉄

機能性鉄は「ヘム鉄タンパク」と「非ヘム鉄タンパク」と「タンパクに結合しない鉄」に分類されます。
「ヘム」とは4個のピロール環がメチル基で架橋されているもので、その中心に鉄が配置した分子構造のものをいいます。ヘムの合成は主にミトコンドリアで行われます。

機能性鉄(一部)のそれぞれについては以下のようになります。

1:ヘム鉄タンパク

・ヘモグロビン
赤血球に含まれ、肺で取り込まれた酸素を全身の組織へ運搬する役割があります。ヘモグロビン1gあたり1.34mlの酸素と結合出来ます。
個人のヘモグロビン濃度の適正値はかなり大きな変動幅を持つため、正常値を規定すること自体に問題があると思われます。

ヘモグロビン

・ミオグロビン
筋肉内で酸素の運搬と貯蔵に働いています。血液中の酸素を受け取り、筋収縮のエネルギー産生のために貯蔵します。

・チトクロームP450
肝臓に存在し、薬物代謝に関与します。

・カタラーゼ、ペルオキシダーゼ
活性酸素を消去する役割を持ちます

2:非ヘム鉄タンパク

・メタロフラボタンパク
多くの脱水素酵素や酸化酵素などに含まれていて、酸化還元に関与しています。

・フォスフォエノールピルビン酸カルボキシナーゼに関与し糖新生と関係します。

貯蔵鉄

鉄は生体にとって重要であるため様々な手段をもってしてでも貯蓄しておこうとします。この目的のために鉄は特殊なタンパク質と結合し、触媒としての活性を抑制して保管されます。

・フェリチン、ヘモシデリン
体内での鉄はフェリチンやヘモシデリンとして蓄えられています。アポフェリチン内に三価の鉄が水和リン酸第二鉄の結晶として蓄えられてフェリチンとなります。このフェリチンが凝集されたものがへモシデリンであると考えられています。

三価の鉄の状態は活性がないのでフェリチンは分解されず蓄えられます。生体内に鉄が必要とされた時にフェリチンしダクターゼが作用して鉄が三価から二価へ変換されて放出されます。

・血清フェリチン
120ng/ml 以上が正常域です。

血清鉄

運搬鉄

代表的なものとしてトランスフェリンがありますが、これは主に肝臓で合成され血漿中に分泌されます。分泌されたトランスフェリンは各組織間を移動し鉄の運搬に働きます。

・トランスフェリン
トランスフェリンはフェリチンとともに細胞内の遊離された鉄を低い状態に保つ働きがあります。鉄の需要が高まるとトランスフェリン受容体の生合成が増加し鉄を細胞内に取り込もうとします。鉄の需要が低下すると細胞内に遊離された鉄が増加し、トランスフェリン受容体の生合成は低下し、フェリチンの合成量が増加します。

・ヘモペキシン、ハプトグロビン
溶血時にヘモグロビンが放出されると、ヘムはヘモペキシンに、ヘモグロビンはハプトグロビンに結合して肝臓で鉄を放出し再利用が行われます。