銅について

銅

銅は私たち人間の身体に含まれる微量ミネラルのうちのひとつです。その総量はほんのわずかで、全体重の0.01%以下であるといわれています。しかし、この微量ミネラルは多量ミネラルと同様に生命維持と健康とって欠くことの出来ない必須のものになります。

それらのうちの一つとして「銅」があります。生体内では1.2ppmというわずかな量であるにも関わらず、身体反応の多くの分野で利用されます。

逆の見方をすれば、ごくわずかな量で反応を生じさせるのですから、目に見えるほどの摂取は過剰を招くことが予想されます。

近年、「銅イオン」によって虫歯菌を殺菌する商品が歯科業界に発売されて、「虫歯を削らなくて済む」という宣伝文句で広まっているものもあります。彼らの言い分としては、「元々身体に存在するミネラルを使用するのだから身体に優しい」ということのようです。そして、「健康被害は認められない」としています。

ミネラルによる健康被害

それぞれのミネラルについての詳細は、後日のテーマの際にご説明しますが、例えば近年、大気汚染による「鉛」への被曝によって生じる健康被害が報告されています。

日本で報告され世界的に有名になった「水俣病」ですが、その原因は「水銀」によるものになります。

更には数年前、入れ歯安定剤に含有される「亜鉛」によって健康被害が生じたため商品回収されたということもありました。

更には歯科治療で多く使用されている「パラジウム」は世界人口の30%にはアレルギーがあるのではないかという報告がされ、海外の一部の国では使用禁止になっています。

開口時には乾燥と温度低下が生じ、閉口時には湿潤で温度上昇するということを頻繁に繰り返し、酸性と中性(時にアルカリ性にまで)を行き来する口腔という過酷な領域は、金属の安定性を保証できる環境ではないと考えて治療がなされなければなりません。

冒頭にありました「銅イオン」という用語はそもそも安定している(共有結合している)金属の状態を表す用語ではありません。

溶出による殺菌を前提としているようであれば、その目的以外に溶出した銅イオンの動態を考えなくてはいけません。溶出しているということは吸収もしている可能性が高く、口腔粘膜や小腸上皮による吸収が考えられます。銅イオンを発するものを口腔内に置いておくことによって、その銅のみを吸収させ続ける状態を24時間四六時中絶え間なく行っていることになります。

この時に起きる動態を把握していれば「元々身体に存在する必須ミネラルだから大丈夫」という言葉は出ないと思われます。もし知っていてあえてこのような表現を使っているのであればそれはそれで問題があるかと思います。

たとえば、先ほど「亜鉛」の健康被害について触れましたが、このミネラルも”身体に必須なミネラル”として私たちの身体に存在しています。そして、その「問題」は「過剰」となった時に生じました。亜鉛中毒の症状は主に吐き気や下痢、嗜眠の誘発などが報告されています。

亜鉛と銅は密接な関係があるため、この点だけを見ても銅の過剰を起こしかねない状況は避けるべきだと思われます。

ちなみに、この薬剤に関しては虫歯菌の殺菌を目的としているようなのですが、単なる感染症とは違い虫歯の場合では齲蝕原生菌による歯質の不可逆的な変性も生じています。ですので、菌だけ除去すれば解決ということではなく、生体内に腐食して遺物と化したものを残存させること自体にも問題があると思われます。

例えば接着性が落ちたとして、その材料と歯質との界面に生じたギャップでは絶えず細菌と唾液の流入が起きているかもしれません。その際に、軟化象牙質が象牙細管を塞いでいるから大丈夫とするならば、神経への刺激はたしかに防がれるかもしれません。しかし、軟化象牙質にはいかなる材料も安定的に接着することは出来ないと思われます。

銅の問題

銅は多くの精神的メカニズムに関わっていて、脳刺激物として作用することが明らかになっています。そのため、銅が体内に過剰になると不眠・興奮性・心神喪失・怒り・鬱それにパラノイアさえ誘発するかもしれないという報告があります。

古くは1911年にある遺伝性疾患の報告があり、それは肝臓と脳の銅の量が通常の6倍以上にも増えていることが観察されています。この疾患は精神疾患・神経系障害・肝硬変を起こすのが特徴的でし、当時はその疾患を患った者はほとんど死亡しているとあります。しかし、1948年に過剰の銅を除去することに成功してからはその状況が一変したようです。

また、1941年にドイツ人医師により、分裂病患者の86%が血中銅の値が高かったことを報告しています。

このような重篤なケースの報告をするまでもなく、たとえばエストロゲン含有避妊薬の一種では、エストロゲンの作用により血清銅を増加させ亜鉛を低下させることがわかっています。

このことにより興奮しやすくなったりうつ状態になったりすることが言われています。血清銅が高いと月経前緊張も生じるようです。

小腸でのミネラルの吸収は多くのミネラルが同一の受容体を介して吸収されるため、銅過剰の状態では他のミネラルの吸収阻害も生じます。

「過ぎたるは及ばざるが如し」ではありませんが、人間は繊細なバランスとダイナミックな代替で生命が保たれています。銅過剰の検討のなされていない「大丈夫」が、どれだけ検討されているものなのかを考えて治療を受けてほしいと思います。