食べ物とプラーク

食べ物とプラークの意外な関係

1930年あたりの頃から、実験によりプラークの形成と食べ物との関係はないということがわかっています。おそらくこの場合の「関係がない」ということの意味は、口腔内にある食渣自体が細菌に何らかの作用をもたらすですとか、プラーク形成の基質になるですとか、そのようなことはないという意味でのことだと思われます。そのことはプラークの組成の中に食渣が含まれていることが稀であることが裏付けてくれています。ただ、もう少し広義で考えた場合、食べ物によって得られた栄養素が歯肉のコラーゲン生成に関わり、粘膜代謝などにも関与する可能性を考えれば厳密には関係がないとはいえないと思われます。

食物とプラーク
今回の場合は前者、つまり口腔内にある食渣が直接的にプラークの組成を含めた形成には関与しないということのお話の方を進めて行きたいと思います。

しかし関わる食物とプラーク

食物の摂取と関わりなくプラークはヒトの歯に形成されるということが明らかになっているお話をしました。しかし一方で、形成されるプラークの量や組成は食物が変化させることも研究によりわかっています。つまり、プラーク形成時には食物に関係なく出来てくるけれども、その発達の過程においては食物の影響を受けるということです。

ヒト以外の動物においては繊維性の食物の咀嚼によってプラーク形成が減少することがわかっていますけれども、ヒトにおいては同様な効果がみられないことが実験により明らかになっていますし、体験的にも分かると思います。この違いは歯の形状と歯間の大きさの違いによるものではないかといわれています。また、ヒトの場合のプラークの好発部位は隣接面と歯肉辺縁であり、食物による除去作用を受けにくい場所であることも要因にあげられます。

食物(特に糖質)とプラークの関係

食物とプラークの関係を調べる研究において、その多くでは糖質がよく用いられています。食物が唾液と混合し、プラーク中の細菌に栄養供給しているからです。ただ、プラーク形成後4時間程度のものに関しては、糖質の供給による影響がみられなかったことが報告されています。しかし、3〜4日間に渡る研究においては糖質の影響が確認されています。また、糖質の中でもその種類によって影響の大きさに違いがみられることがわかっています。糖質を摂取しなっかった場合に比べて、グルコースとフルクトースではプラーク形成に違いがみられなかったのに対し、スクロース(蔗糖)では多量に膨隆したプラークがみられました。反対にキシリトールはプラーク形成量が最も少なかったようです。これらの違いは、細菌の菌体構造要素として細胞内多糖類と細胞外多糖類として存在するプラーク中の糖質による影響の違いによるものだといわれています。菌体内に糖質を貯蔵することでプラークの発育や維持を行なっており、糖質の供給によりS.mutansなどは増殖することがわかっていますが、この反応を強くするものがスクロースだということです。